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大阪・関西特集
万博から見える関西企業の強み
2025年大阪・関西万博に出展する民間パビリオンなどの内容が徐々に明らかになってきた。その取り組みからは、関西企業の強みを垣間見ることができる。
環境・医療・宇宙など考える契機
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パナソニックグループパビリオン「ノモの国」 -
バンダイナムコHDのパビリオン横に完成した等身大ガンダム像((C)創通・サンライズ)
パナソニックホールディングス(HD)の「ノモの国」は、空間演出や行動解析などの技術を活用し、子ども向けに体験型のコンテンツを提供。小川理子関西渉外・万博推進担当参与は「心や感性が解き放たれる瞬間を体験してほしい」と期待を込める。住友グループの「住友館」は、グループ保有の「住友の森」の木々を屋根や壁面に使用し、環境問題を訴える。森の大切さを伝えるため、植林体験の場も提供する。
三菱グループの「三菱未来館」は深海から宇宙までの旅を映像で演出し、生命の起源や可能性を伝える。パソナグループの「パソナ・ネイチャーバース」は澤芳樹大阪大学名誉教授の監修で、人工多能性幹細胞(iPS細胞)技術による「iPS心臓」を展示する。
バンダイナムコホールディングス(HD)の「ガンダム・ネクスト・フューチャー・パビリオン」は、宇宙へ向かい手を掲げるポーズの「実物大ガンダム像」が目玉。ガンダムシリーズが描いた宇宙での暮らしや架空の科学技術を、未来の可能性として表現する。
e―メタン・水素で会場運営支える
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大阪ガスが舞洲(大阪市此花区)に整備したメタネーション実証設備。現在、同設備を夢洲(同)の万博会場に移設している
会場の運営を支えるエネルギー分野の取り組みも注目される。大阪ガスは、会場内で排出される生ごみや二酸化炭素(CO2)を利用して合成メタン(eーメタン)を製造するメタネーションの実証を予定する。製造したeーメタンは、会場内の迎賓館厨房(ちゅうぼう)などで利用し、来場者に向け技術をアピールする。製造に使うCO2を会場内で回収するために、地球環境産業技術研究機構(RITE)による直接空気回収(DAC)設備や、エア・ウォーターによる排ガスからの回収設備などを活用する。
eーメタン実証以外に、会場内へ供給する通常の都市ガスも「カーボンニュートラルガス」としてアピールする。大ガスは都市ガス供給にあたり、クリーンガス証書を購入。燃焼しても大気中のCO2が増えないとみなせる環境価値を移転する。大ガスと三菱重工業が開発したプラットフォーム「CO2NNEX(コネックス)」を活用して実現する。
会場内で使う電力は関西電力が、液化天然ガス(LNG)火力の姫路第二発電所(兵庫県姫路市)での水素混焼実証の電力などを組み合わせ、「ゼロカーボン電力」として供給する。森望社長は「非常にシンボリックな取り組みだ。先取りした未来を感じてほしい」と語る。岩谷産業は水素燃料電池船「まほろば」を運航し、水素利活用をアピールする。水素燃料の一部として、関電の原子力由来水素も利用する計画だ。
万博学研究会がシンポ開催
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12月7日(土)・8日(日)にグランフロント大阪で開催された万博学研究会のシンポジウム
万博は歴史的にどのような役割を果たしてきたのかー。多様な分野の研究者や専門家で構成する万博学研究会(佐野真由子代表=京都大学教授)は、大阪市内でシンポジウム「万博学/Expoーlogy」を開催した。「大阪万博前後の世界と日本」と「万博が映した脱植民地化と冷戦の時代」の2テーマで、学術的な研究報告とパネル討論を行った。
愛知県立芸術大学の井上さつき名誉教授は、1970年の大阪万博で日本鉄鋼連盟が「鉄鋼館」で音楽堂をメーンとした背景を、「67年のモントリオール万博の日本館に、商業主義を前面に出していると内外から批判が集中していた」と説明。それ故に鉄鋼との直接的な結びつきを避けたという。一橋大学の有賀暢迪准教授は冷戦期の万博について、「核と宇宙の分野での米ソ対立だけが全てではない」とし、各国の科学技術とナショナリズムの関係性を指摘した。
佐野真由子代表は「万博を巡る動きの研究を通じて、人間の歩みを浮かび上がらせることができる」と研究会の意義を説明した。