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大阪・関西特集
大阪・関西万博/世界に向け自社の将来像発信
2025年、関西の最大のイベントとなるのが4-10月に大阪市此花区の夢洲(ゆめしま)で開かれる大阪・関西万博だ。2025年日本国際博覧会協会は半年間の開催期間中に約2800万人の来場を予想している。テーマに「いのち輝く未来社会のデザイン」、方針に「未来社会の実験場」を掲げる万博は、参加企業にとって世界に向けて自社の描く将来像を発信する絶好の機会となる。
多様な展示・体験を提供
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自身のパビリオンについて語る万博テーマ事業プロデューサーの石黒浩阪大教授(左)。右は石黒教授のアンドロイド
大手企業などは独自に出展する民間パビリオンを展開。8人のテーマプロデューサーによる「シグネチャーパビリオン」や大阪府・市などによる「大阪ヘルスケアパビリオン」、関西広域連合による「関西パビリオン」など多様な国内パビリオンにも注目が集まる。さらに諸外国による国際パビリオンもあり、多様な展示や体験に期待がかかる。
シグネチャーパビリオンは万博会場の中心に位置する。各界の著名人8人がテーマプロデューサーとなり、それぞれに万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を実現する「シグネチャープロジェクト」の起点となる。
8人のテーマは生物学者の福岡伸一青山学院大学教授の「いのちを知る」とアニメーション監督の河森正治氏の「いのちを育む」、映画監督の河瀬直美氏の「いのちを守る」、放送作家・脚本家の小山薫堂氏の「いのちをつむぐ」、ロボット工学者の石黒浩大阪大学教授の「いのちを拡げる」、音楽家の中島さち子氏の「いのちを高める」 、 メディアアーティストの落合陽一氏の「いのちを磨く」、医学者でデータサイエンティストの宮田裕章慶応義塾大学教授の「いのちを響き合わせる」。現実と仮想空間を包括した多様な体験を提供する。
フジキン(大阪市北区)のように同パビリオンへの協賛による万博参加もあり、企業にとっても万博へのさまざまな関わりが可能になる場となる。
宿泊需要への対応 カギ
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地元の盛り上げ役としての期待がかかる「大阪ヘルスケアパビリオン」の内部
地元を盛り上げるパビリオンにも期待がかかる。大阪ヘルスケアパビリオンは「オール大阪の知恵とアイデアの結集」として、命と健康を軸に近未来の生活のイメージを通して大阪の魅力や活力をアピールする。
関西パビリオンは大阪府を除く近畿1府4県と鳥取、徳島、福井、三重の4県の計9府県が参加。「いのち輝く関西悠久の歴史と現在」をテーマに各地の歴史や文化、観光などに魅力を発信する。絵や住民から公募した映像などで各地の風景、名所を紹介し、各府県のブースでは趣向を凝らした展示を行うことで「関西のことが全て分かる」場とする。共に建物は完成しており、展示の準備が進む。
建設の遅れが危惧されていた海外パビリオンも12月9日のマルタの着工で、全てのタイプA(敷地渡し方式)パビリオンが工事に入った。外観含めて独自のパビリオンとなるタイプAでの参加は47カ国で確定した。そのほか、建物渡し方式で個別利用するタイプBでの参加は15カ国、共同利用するタイプCでの参加は94カ国で、簡易パビリオンの建物渡し方式となるタイプXは5カ国を見込む。
これらの多様な展示に集まる来場客がもたらす消費を関西経済成長の追い風にしたい。りそな総合研究所は万博来場客による消費額は1兆円に達すると見込んでいる。このうち経済全体の成長に結びつくのは会場外消費だ。同社はこれを軸に関西経済の成長に資する需要は5670億円、付加価値ベースの経済効果は2960円と試算。国内総生産(GDP)成長率の押し上げは0・34ポイントと全国平均と比べてプラス材料となる。
荒木秀之りそな総研主席研究員は「手堅く考えて、関西に直結しない効果を間引いてもこれだけ大きな効果が出る」と全国平均と比べた優位性を見込む。ただ、宿泊施設の需要への対応次第で左右されるとも指摘。インバウンド(訪日外国人)来場者は大阪市内や京都、奈良など万博会場以外への周遊が期待できるだけに、民泊を含めた宿泊施設の供給で確実に取り込みたいところだ。