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愛知県 西三河地区産業界特集
西三河地区は、愛知県の中央に位置する製造業の一大集積地。安城市、岡崎市、刈谷市、高浜市、知立市、豊田市、西尾市、碧南市、みよし市、幸田町の9市1町からなる。自動車産業を中心に幅広い分野の企業が集まり、優れた技術で世界のモノづくりをけん引し続けている。EV(電気自動車)シフトにより産業構造に大きな変化が訪れる中、各企業は蓄積した技術を生かし新たな挑戦を続ける。
ノウハウ生かし新製品・新事業を展開
西三河地区は、愛知県内の製造品出荷額等のうち約5割を担うモノづくりの一大集積地。完成車メーカーや大手自動車部品サプライヤーが立地し、こうした企業を支える中小企業も裾野が広い。経済産業省が発表した最新の経済センサス活動調査(2021年確報)によると、西三河地区全体の製造品出荷額等総数のうち75%を占める18兆5986億円が輸送機械。県内で輸送機器の製造品出荷額等が最も多い豊田市をはじめ、岡崎市や安城市なども独自技術をもつ企業が多く立地する。
一方、自動車産業ではEVシフトが本格化しており、内燃部品などを手がける企業は生き残りをかけて変革を余儀なくされている。これまで培ってきた技術力とアイデアを掛け合わせ、新たな製品や事業として生み出している企業も多い。高精度加工による新分野進出に加え、人手不足や環境対応といった新たな課題にも西三河地区の企業は積極的に挑戦している。
剛性高めた新型難削材加工機を追加
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キラ・コーポレーションの難削材加工機「GCV―40」
キラ・コーポレーション(西尾市)は、脆弱(ぜいじゃく)な材料の微細穴加工に特化した難削材加工機「グラインディングセンター」に、40番テーパーの主軸を採用した新型機「GCV-40」を追加し、2024年11月5日に発売した。既存の30番テーパーの主軸採用機をベースに、剛性を高めて汎用性を向上させた。
ダイヤモンド電着砥石(といし)を用いた工具で加工し、半導体、光学、医療機器関連などで用いる脆性材料部品の生産での利用を想定する。
同社独自の熱変形補正システムや、粉状の切り粉の侵入を防ぐベローズ式プロテクターを標準装備。さらにオプションで、超音波で穴開け加工ができる「超音波ミーリングチャック」や、電荷結合素子(CCD)カメラによる芯出しが可能になる機能を追加できる。
また独自のIoT(モノのインターネット)ユニット「KONEKT」も標準装備し、稼働状況などのデータを顧客と共有して遠隔診断、予防保全に役立つIoT活用サービスとして提供する。KONEKTはマシニングセンター(MC)に内蔵するエッジコンピューターで取得した各種データを、クラウドシステム上に保管したり、MC1台ごとに遠隔で操作、診断したりできる。顧客はサーバー設置が不要で安価にIoT活用サービスを使える。
腐敗しにくいクーラントタンク
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省スペースで小型工作機械への取り付けに適する
メイティックス(西尾市)は自動車のエンジン部品が主力。EVシフトにより内燃部品が減少する中、21年に迎えた創業100周年を機に、事業の新たな柱として社内向けに開発した設備機器の販売を開始した。
第一弾となる製品はチップコンベヤー付きクーラントタンク「NotRot100」。奥行き770ミリメートルと省スペースなのが特徴で、大型のフィルターを採用することで機械と直接連結できるようにした。また独自構造によりクーラントの酸素含有率を維持しつつ、液中に混ざったオイル成分とスラッジを回収。バクテリアの発生を抑制する。同社での実験では、約2年クーラントを使い続けても腐敗しなかったという。クーラントは腐敗すると濃度が低下し、切削油の継ぎ足しが必要になるが、同製品の使用で継ぎ足しが減らせ、切削油の消費も約3割節減する。腐敗による臭いも抑えられ、職場環境の改善にも貢献する。
同社は窯業向けの機械メーカーとして創業。部品製造に主軸を移してからも、社内で使う専用機の開発を続けてきた。担当者は「創業者のモノづくりへの思いに立ち返り、新たな事業として育てていく」と熱意をみせた。
センサー点灯式の工場向け暖房器具
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展示会で稼働させた「速暖くん」の試作機
メトロ電気工業(安城市)は近年、電化と省エネルギーを実現する次世代の赤外線カーボンランプヒーターの活用に注力している。新たに提案するのは、工場向け暖房器具「速暖くん」。センサーが人を認識してから1秒以内に点灯するため、暖かくなるまで時間がかからず、人がいる場所だけ効率的に温められる。工場の作業スペースや、工場外にあるトイレなどスポット的な暖房器具として売り出す。
全長は約50センチメートルで、天井につるして設置する。駅のホームやバス停など半屋外での活用も見込む。
同社の「オレンジヒート」は、2000度C程度まで昇温可能な加熱用カーボンランプ。独自技術でフィラメントに加工した放射率85%以上の高純度炭素繊維の薄板と不活性ガスを石英ガラス管に封入した構造で、応答性が良く電源投入時に突入電流が流れない。金型の加温といった工業用途から、調理器具、畜産向けの暖房機など、幅広い産業で熱源として使われている。
中小企業向けに展示会集客を支援
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オフィス・キートスがプロデュースしたイセ工業(安城市)の出展ブース
オフィス・キートス(安城市)が、主に中小製造業向けに行う展示会プロデュース事業「展示会ブースター」が好評だ。企画段階からターゲット顧客の検討に関わり、キャッチコピーも制作することで企業の魅力を最大限に伝える役割を果たす。目標にしていた年間10件の成約は既に達成。今後は春先の展示会に向けてPRし、成約数を増やして事業の拡大を図る。
同社は製造業の会社案内・製品カタログ制作などを手がける中、展示会運営の経験を生かして顧客企業の出展を手伝っていたが、大きな成果を出す事例が増えたため本格的に事業化した。来場者の目線に合わせたブース設計と再利用できる装飾に加え、ブース接客やアフターフォローのノウハウも提供することで目標達成につなげた。新開潤子代表は「展示会に無策のまま出展する企業が非常に多い。正しく企画設計すれば、展示会は未来の顧客に会える最良の営業ツールになる」と話す。