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新潟県長岡市特集 2024
新潟県長岡市は中越地域に位置する県内2位の人口を有する都市。毎年8月2~3日に開催される日本三大花火大会「長岡花火」には多くの地元製造業が協賛し、打ち上げ前に社名を読み上げられているなど、地域に対する企業の想いは熱い。市内には4つの大学と1つの高専が立地し、産学連携の動きも活発だ。2024年に市内でおきた、モノづくり産業にまつわる動向をまとめた。
伴奏支援で新たなステージへ
ミライエ長岡を中心に、多様な主体が連携/新潟県長岡市長 磯田 達伸 氏
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新潟県長岡市長 磯田 達伸 氏
昨今の産業界は、人材確保・育成やDX・新技術導入による生産性の向上が喫緊の課題となっています。この難局を乗り越えるため、長岡市は、ものづくり企業の技術力と市内4大学1高専の知識と人材を結集して、さまざまな取り組みを進めています。
昨年オープンした「米百俵プレイス ミライエ長岡」では、今年7月に「産学協創センター」が開設され、4大学1高専が市内企業から幅広く相談を受け付けるワンストップ窓口が誕生しました。8月には「ながおかDXセンター」がオープンし、市内企業・団体のDX導入のサポートや課題解決などを伴走型で支援しています。
さらに、新潟県起業支援センターCLIP長岡では、ミライエ長岡オープンを契機に起業相談が対前年比で30%増加し、NPO法人長岡産業活性化協会NAZEでは、デジタル技術を活用し、課題解決を図る現場改善リーダーを養成する「NAZE学園」を開催するなど、ミライエ長岡は産業協創の拠点としての機能が充実してきています。
また、女性や高齢者、障がい者、留学生をはじめとする外国人など、多様な人材の雇用拡大を進めるとともに、「ながおか働き方プラス応援プロジェクト」により、働きやすい職場環境と生産性向上のサポートを行っています。そして、リモートワークで首都圏企業などに勤める「NAGAOKA WORKER」や短期・単発の仕事のマッチング「ながおかマッチボックス」を通じて、ライフスタイルに合わせた働き方を提案しています。
長岡市は多様な主体の連携により、産業界の課題解決にとどまらず、起業・創業や技術研究・開発に対する積極的な支援や、時代の流れをとらえた新産業の創出にも果敢に挑戦してまいります。
デジタル活用でモノづくりの人手不足克服/NPO法人長岡産業活性化協会NAZE会長 大井 尚敏 氏(=オオイ社長)
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NPO法人長岡産業活性化協会NAZE会長・大井尚敏氏(=オオイ社長)
日本海側随一の工業都市といわれる新潟県の「長岡」。歴史のある鉄工・鋳物関連業の基盤的技術産業に加え、近年では電子・精密機械や液晶・半導体など高度な技術を有する多様な企業がバランスよく集まった「モノづくり」技術の集積地となっています。
NAZE(ナゼ)は、こうした特徴を生かす形で2005年4月に発足しました。今では製造業をはじめ、市内4大学1高等専門学校(高専)、地元金融機関など108会員が有機的に結びつき、産学連携事業や企業同士の結びつきによる新価値の創造にチャレンジしています。
一方、長岡市では人口減少が加速しており、深刻な労働力不足が大きな問題となっています。これを受けNAZE(ナゼ)では、市と共同で人材不足対策に取り組んでいます。デジタル化支援事業では、企業の〝お困りごと〟を解決しながらデジタルツールをアジャイル開発(小規模開発を繰り返す方法)するとともに、「NAZE学園」でデジタル技術を活用して改善活動を行える人材育成も行っています。
また、「長岡ロボットイノベーションハブ」の取り組みでは、ロボット導入支援やロボットを活用する人材の育成を行い、モノづくり現場の省人力化を支援しています。
外国人材活用事業としては、モンゴル国内の3高専の支援校でもある長岡高専と連携し、モンゴル高専生から実際に市内企業で働いてもらうインターンシップ(就業体験)を実施します。
来年創立20周年を迎えるNAZEは、深刻な人手不足の克服に向け、今後も伴走型によるデジタル化支援やデジタルツールを活用した改善活動を行える人材の育成、外国人材を活用する事業を市の施策と一緒になって進めます。
長岡のものづくり経済動向/大手による買収続く 地域経済変化に注視
世界情勢の変化や技術進化は年々速度を上げている。企業が持続的に発展するためには、環境の変化以上の速度で変化し続けていかなければならない。地域の中小企業は大企業に比べ大規模な方針転換を行う際の体力が少ない企業も多い。地元の雇用や経済を支えている中小企業が持続的な成長を遂げていくためには、地域が一体となって課題解決に取り組んでいく重要性が増している。
2024年の長岡市内で注目された企業動向の1つには、工作機械大手のDMG森精機による市内工作機械メーカー2社の完全子会社化が挙げられる。
1 月にコンピューター数値制御(CNC)搭載の横中ぐりフライス盤で高い国内シェアをもつ倉敷機械を約40億円で買収。4月にはDMG MORI Precision Boring(プレシジョン・ボーリング)と社名を変え新たなスタートを切った。
11月には研削盤を主力とする太陽工機の買収を発表。12月16日までTOB(株式公開買い付け)を実施した。強制買い取り(スクイーズアウト)により全株式を取得する。買い付け総額は約54億円を予定している。
生産機能の統合も進む。27年の稼働に向け、太陽工機が建設中の本社工場内にDMG MORIプレシジョン・ボーリングの本社工場の移管を計画。生産と開発の機能を融合することで、一層の効率化・生産能力の増強を図る。
現在のDMG MORIプレシジョン・ボーリングと太陽工機の合計売上高は160億円程度。DMG森精機の森雅彦社長は両社の連携やグループ全体の強みを生かし、30年までに売上高を300億円に引き上げる考えを示している。
両社は県内でも知名度が高く、地域経済に与える影響力も大きい。一連の動きに伴い、両社との関係構築を不安視する声がある一方、新たな起爆剤として地域経済の変化に期待する声も高まりつつある。