-
業種・地域から探す
奈良県産業界
古都・奈良は寺社や自然などの観光資源が多く魅力にあふれている。一方、都市への人口流出や県内観光地への交通の不便さなど解決すべき課題も多い。課題解決に向け、2025年開催の大阪・関西万博は世界中に奈良の魅力を発信する絶好の機会だ。奈良県初の民間出身の知事として5月に就任した山下真知事に奈良県の進むべき方向性を聞いた。
古都・奈良から技術進化
インタビュー/奈良県知事 山下 真氏「ニーズに沿う産業施策を展開」
―知事に就任し約半年がたちました。奈良県の現状をどう捉えていますか。
「奈良県には法隆寺や平城宮跡、吉野山などを含む三つの世界遺産がある。さらに大阪や京都にアクセスしやすく、観光や企業の立地、住環境の点で恵まれた場所だ。一方、同規模の府県に比べ製造品出荷額の低さや、観光客数が全国19位と多い割に宿泊客数が全国46位と、奈良のポテンシャルを生かし切れていない」
―産業振興にどう取り組みますか。
「企業ニーズに沿った産業施策を展開する。産業用地の不足に対し、長期的には土地利用の規制緩和、短期的には産業用地の造成も県が主導的に行う必要がある。県内企業の事業規模拡大や企業誘致を進め働く場を拡大できれば、県内に住む人も増えるだろう。また宿泊や飲食などの観光産業も重要。このため宿泊施設の誘致にも積極的に取り組む。県内での宿泊者数を増やせば観光消費も増加する。産業振興や観光消費拡大、人口増加に一体的に取り組む必要がある」
「また奈良の良さを維持しつつ、社会や経済の需要に応えることが重要だ。奈良県は道路整備率が低く道路整備にこれまで以上に取り組む。さらに道路の計画的な維持管理を通じ快適な道路空間を提供するプロジェクトを始める。連綿と受け継いできた奈良の良いモノは残し、変えるべきモノは変えて、地域経済を発展させたい」
―県庁での改革に取り組んでいますね。
「現在の行政の仕組みでは農業や都市開発など縦割りで、部署ごとに窓口がある。県庁にとって企業は顧客。企業に対し専属の担当者を設置して企業との窓口を一元化し、顧客の利便性を向上させる。県民や企業に〝上から目線〟ではなく、民間的視点で行政サービスを提供したい」
―万博への期待はいかがでしょう。
「万博には約2820万人が来場し、経済効果約2兆円が見込まれている。またとないこの機会を奈良県の成長に取り込む必要がある。奈良県は万博会場の夢洲から1時間程度でアクセスできるという利点がある。会場でのイベントで来場者に奈良県をアピールし県内に誘客する。また万博を盛り上げるため、県民の機運醸成の取り組みを進めたい」
メッセージ
奈良経済産業協会会長 平越 國和氏―会員各社の課題解決サポート
現在、原材料・エネルギー費等の高騰によるコスト上昇で十分価格に転嫁できていない状況が続いています。また、人手不足による稼働の低下や受注を受けられない機会損失も見られるなど、企業経営における大きな課題となっております。
当会ではこれらの課題について、設立以降一貫して「モノづくり・人材育成」と「経営・労務問題」の2本柱を核に、業務改善や生産性向上によるコスト低減・省力化へつなげる取り組みと共に、新規学卒者や高年齢者、外国人労働者等の多様な人材の確保や働きやすい職場づくり・モチベーション向上による定着を促進する取り組みを多角的に展開し、会員各社の課題解決を支援しております。
当会は常々〝企業は人なり〟を標榜しており、〝人材の育成・活躍なくして企業発展はない〟と考えています。そのため、企業発展を担う〝人材〟を中心に据え、人材の確保・育成・定着に注力して、参加者の相互交流を図りながら、より実践的な内容で事業を展開しています。
今後も、奈良県をはじめ、行政機関・教育機関のご支援を頂きながら連携し、会員各社のお役に立ち、喜んで頂けるように経営課題解決の支援に取り組んでまいります。
奈良県商工会議所連合会会長 小山 新造氏―新分野展開や事業転換を支援
コロナ禍からの回復が見られる一方、企業経営はエネルギー価格高騰、円安や物価高への対応に苦慮しています。加えて人手不足で十分な人材確保ができず機会損失している中小・小規模事業者が多く見受けられます。
奈良県商工会議所連合会では県内4商工会議所(奈良・大和高田・生駒・橿原)が、そのような事業者からの相談業務に注力します。特に新分野展開や事業転換に取り組む事業者には各種補助金の積極的な活用を支援します。賃上げに向けては商品への円滑な価格転嫁など取引価格の適正化のため、行政と連携し「パートナーシップ構築宣言」の普及にも取り組んでいます。事業承継に課題のある事業所には、引き続き奈良県事業承継・引継ぎ支援センターと連携し支援しています。
また10月から開始された適格請求書等保存方式(インボイス制度)は税負担だけではなく、その手続きや事務処理も事業者にとって大きな負担となっており、セミナーや個別相談会の開催など積極的な支援を継続します。
最後に2025年大阪・関西万博については、さらなる機運醸成に取り組むとともに、県内での宿泊促進や周遊観光の提案など観光対策にも取り組んでいく所存です。
南都銀行頭取 橋本 隆史氏―課題解決型コンサル営業強化
国内での経済活動の正常化が進みつつあります。奈良県を中心とした当行の営業エリアにおきましても、インバウンド(訪日外国人)を中心とした観光需要や足元の個人消費・企業活動で持ち直しの兆しが見られています。
一方で、気候変動問題や不安定な国際情勢に加え、資源・原材料価格の高騰、人材不足、後継者不在などの環境変化が地域経済にも大きな影響を及ぼしています。経営の持続可能性の維持・向上のためには、これまで以上に「従業員」や「地域社会・サプライチェーン(部品供給網)」などにも配慮したサステナブル経営の実践の重要性が高まっています。
こうしたなかで、当行グループはこれらの変化に対応し、お客さまの企業価値・持続可能性の向上に資するべきだと考えております。そのため、サステナブル経営支援を軸とした課題解決型のコンサルティング営業に積極的に取り組んでいます。
当行グループは、お客さまとともにさまざまな社会課題や経営課題を解決することで、地域の発展に貢献し続けてまいります。それとともに、当行グループ自身の持続的な成長を目指していく所存です。
日本政策金融公庫奈良支店支店長 三浦 博氏―専門機関と連携し経営を支援
新型コロナウイルス感染症が5類感染症となり、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進みつつあります。一方、物価高騰など経済を取り巻く環境は厳しさが増したように感じられます。
日本政策金融公庫は、政策金融機関として「政策」と事業者・地域を「繋ぎ」、「支える」という使命感をもって、お客さまのニーズに対応しています。
従来の資金繰り支援に加え、当公庫のツールを活用した情報提供や外部専門機関との連携を通じ、経営面で支援しています。例えば経営者の高齢化や後継者不足等による事業承継問題では奈良県事業承継・引継ぎ支援センターと連携し、個別相談会やセミナーの開催、生産年齢人口の減少等による人材不足問題では奈良県プロフェッショナル人材戦略拠点と連携し、セミナーの開催や相談者の取り次ぎを行っています。
また、社会全体のデジタル化が加速する中、当公庫ではお客さまの利便性向上を目的にインターネット申し込みやオンラインによる情報提供ツール「日本公庫ダイレクト」の活用を推進しています。
金融、経営の両面での支援を推進し、お客さまにとって身近な支援機関となれるよう役職員一丸となって努力していく所存です。