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第34回 読者が選ぶネーミング大賞
日刊工業新聞社は「第34回読者が選ぶネーミング大賞」に、大賞のサントリーをはじめ、17件を選定した。今回のネーミング大賞は2022年秋から23年秋までに開発・発売され、話題性のある優れたネーミングの製品・サービスを表彰対象とした。23年12月1日から24年1月8日までウェブで投票を募り、延べ1万386人が投票した。生活部門とビジネス部門それぞれに11件をノミネートし、投票結果から大賞、生活部門・ビジネス部門の1―3位を決めた。総投票数1万386票の内、3478票を獲得したサントリーの「こだわり酒場のタコハイ」が栄えある大賞に輝いた。生活部門1位はゼブラの「ピタン」が、ビジネス部門1位はキャニコムの「ジャスパー砂与」が受賞した。生活部門、ビジネス部門のほか①発想力に着目した「アイデアネーミング賞」3件②洗練された印象を与える「スタイリッシュネーミング賞」3件③一目で印象に残る「インパクトネーミング賞」1件④遊び心があふれる「ユーモアネーミング賞」3件―を選定した。さらに大賞となった「こだわり酒場のタコハイ」は、片平秀貴氏(丸の内ブランドフォーラム代表)など4人が審査員を務め、全17件の受賞ネーミングの中から選定した「審査員特別賞」も受賞した。
大賞
こだわり酒場のタコハイ サントリー
サントリーはRTD(フタを開けてそのまま飲めるアルコール飲料)「こだわり酒場のレモンサワー」を2018年から販売し、ブランドの第2弾としてプレーンサワー「こだわり酒場のタコハイ」を23年3月に発売した。関西を中心として酒場で愛される「タコハイ」の味わいに仕上げた。ほのかな柑橘(かんきつ)と焙煎(ばいせん)麦焼酎の香ばしい風味で食事に合わせやすい。
「タコハイ」という“なぞ味”が強烈なインパクトを持って消費者の関心を集めた。酒場では焼酎をサワーで割ったモノをベースとして広く飲まれている。「多幸(たこ)ハイ」とも呼ばれ、サントリーは気楽さやレトロ感のある面白い音感の名称として採用した。
RTDではレモンサワーが主流で、多種多様な商品が販売されている。開発したタコハイはプレーン味といっても焼酎をサワーで割った単純なモノではない。ビールと併飲するユーザーをターゲットに、食中酒としてパンチ力のあるレモンサワーと、飲み飽きないハイボールの“良いとこ取り”した味わい。
ほのかな柑橘風味で口内をリフレッシュするとともに、焙煎麦焼酎の甘香ばしさがどんな料理とも相性が良くなる構造にした。業務用でも展開しており、家庭と料飲店で楽しめる。
喜びの声 サントリー RLS事業部 光星 晴信氏
大賞の受賞は想定しておらず、関係者全員で喜んでいる。「タコハイ」はとても強いネーミングで、「何だろう」と興味を引き、思わず言ってみたくなる音の面白さが、お客さまに受け入れられたと思う。
「こだわり酒場のレモンサワー」に続く第2弾の開発のため、酒場をめぐる中で広く愛されている「タコハイ」に出会った。商品化では単純なソーダ割りではなく、少し甘さを感じる味わいのあるプレーンサワーを目指した。パッケージには少しレトロな“多幸ハイ”にちなみ、縁起の良い「寿」マークや「蛸(たこ)唐草模様」をデザインした。
プロモーションでは「?」を生ませるマーケティングを展開。タコハイが「何味?なぞ味?」として、どんな風味かを明かさなかった。消費者にとっては「買っても大丈夫なのか」という不安があったかも知れないが、それを乗り越える言葉の強さに託した。今回の受賞を弾みにさらに拡販につなげたい。
生活部門 第1位
ピタン ゼブラ
ゼブラ(東京都新宿区、石川太郎社長)の「ピタン」は、ノートに付けて一緒に持ち運べるジェルボールペンだ。ノートの裏表紙や厚紙に、クリップがついた専用ホルダーを装着し、磁力でペンを固定する。商品名は、磁石やノートに「ピタッ」とくっつく様子から命名した。
外観は“ノートと一体になるデザイン”を追求した。シンプルな形とノートに合わせやすい軸色を採用。ペンとホルダーの全長や厚みは、多くのノート幅や厚みに収まるよう設計した。ペン上部には、ホルダーからペンを取り外しやすくする紐(ひも)も追加。思いついたアイデアをすぐ書ける。
ピタンは商品開発をするデザイナーが企画した製品。ペンとノートを一緒に持ち運びにくいと気づいた担当者の発想から始まった。紙や3次元(3D)プリンターを活用して試作を重ね、約3年かけて開発。ペンをホルダーに取り付ける時の「ピタッ」という音やペンの感触など、細部まで丁寧に設計した。
喜びの声
ゼブラホールディングス 研究本部 研究部 長尾 雄介氏
ペンがノートに心地よく収まる様子を想像してもらいたいと考え、社内のデザイナーチームが名付けた。50種類以上挙がっていた案から議論を重ねて絞り込んだ。
商品開発では、ペンをホルダーに固定する吸着力の調整に苦労した。当社のボールペンは、従来加工性の高い真ちゅうを使っていた。一方、ピタンは磁石に反応させるために鉄を採用。吸着力を高めようと鉄を増やすとボールペンが重くなり、軽くするとホルダーからペンが外れやすくなる問題もあった。試作品を社内のピタン開発メンバーが使いながら研究を重ねた。“ペンとノートは別”という既成概念を打ち破る新しい使い方を提案できた。多くの人に体感してほしい。
生活部門 第2位
あんしん治療サポート保険R 東京海上日動あんしん生命保険
東京海上日動あんしん生命保険の「あんしん治療サポート保険R」は、治療が長引きやすい生活習慣病8疾病を対象に、入院の有無を問わず通院治療から保障する業界初の保障を提供する。また健康診断の指摘による受診段階から給付金を支払う特約により、疾病の早期発見・早期治療をサポートする。
健診結果を基に高血圧などの疾病発症リスクをシミュレーションできるヘルスケアサービスで顧客の健康増進も後押しする。早期治療から重症化した場合の長期治療まで幅広くサポートし、「リターン」「リザーブ」の二つの意味を込めてRを付けた。
喜びの声
企画部次長兼商品開発グループリーダー 南 武郎氏
受賞を大変光栄に思う。人生100年時代を迎え、シニア層の顧客を中心に「いつまでも健康で元気に過ごしたい」というニーズが一層高まっている。この商品は、こうしたニーズに対応して開発した。長生きに備える保障や老後の資産形成など保険に求めるニーズは単なる保障の提供に留まらず、「事前事後の安心・安全」の領域に拡大している。今後もこうした変化を捉え、独自性のあるサービスを保障と一体で提供していきたい。
生活部門 第3位
うつ和 名古屋樹脂工業
名古屋樹脂工業(名古屋市西区、伊藤誠一社長)の「うつ和」は和紙柄のアクリル樹脂製食器。高級感のある和紙柄のアクリル樹脂の板を、手曲げ加工で皿の形状にした。半導体搬送装置や看板などBツーB(企業間)製品の樹脂加工を手がける同社が培ってきたアクリル樹脂加工技術を生かして製作した自社ブランド商品。
職人技のため一品物。安定感を出すため底面は平らにし、食器棚に重ねて収納できるよう形状を工夫した。
アクリル樹脂製のため軽くて丈夫。刺し身皿のほか、豆皿や角皿、深皿などを展開。卸業者や日本料理店、レストラン、ホテルなどへ提案している。
喜びの声
ブランディング営業部 渡邉 美保氏
「うつ和」は、職人の手曲げ加工によるやわらかな曲線を持つ和紙柄のアクリル樹脂製の器。耐久性に優れるアクリル製のため長く安全に使用でき、透け感のある和紙柄が料理を美しく引き立てる。製品名は、器という機能のイメージはそのままに、職人によるやわらかな曲線をひらがなで、「和」を漢字にすることで日本の伝統的な和紙柄を表した。大きなサイズでも軽いため、ケータリングが盛んな海外にも積極的にアピールする。
ビジネス部門 第1位 ジャスパー砂与 キャニコム
キャニコム(福岡県うきは市、包行良光社長)の「ジャスパー砂与」は、生コンクリート専用運搬車の電動タイプ。砂与は米国市場向けにクローラー式で生コンを運ぶ「コンクリート砂男」の“妹分”として海外販売用に開発した。騒音が気になる都心部や住宅街でも音を気にせず作業でき、排ガスが出ないため、作業者への影響を与えない。
機械の寸法は長さ2140ミリ×幅740ミリ×高さ1055ミリメートルで重量は220キログラム。バッテリーの充電や交換も容易で、パンクの心配がないクローラー式により軟弱地でも作業しやすい。15度の傾斜に対応し、走行速度は時速0・5キロメートルから5・3キロメートルまで。
運搬時の荷箱は軽量で丈夫なポリエチレン樹脂の採用で生コンが剝離しやすく、運搬後の清掃負担も少ない。レバーを離すと砂与が停止し、自動でブレーキもかかる。緊急停止スイッチも備えており、ワンタッチでモーターが停止するなど安全面に配慮している。
喜びの声
会長 包行 均氏
「ジャスパー砂与」のジャスパーは1991年に旅行で訪れたカナダ・アルバータ州に位置する大自然に囲まれた国立公園のある町名に由来する。美しい山や湖といった絶景に魅了されると同時に、こうした自然を後世に残さなければならないという思いを強くした。電動化対応製品で自然保護の観点とも合致する。
先に発売していた「コンクリート砂男」はストイックな性格で屈強なイメージのエンジン運搬車だが、砂与は物静かな性格で透き通るクリーンな環境を与えてくれる意味で名付けた。草刈り機「まさお」などネーミングにこだわってきたが地名を入れたのは初。ジャスパーという響きもユーザーの方々が覚えやすく、愛される製品になると思っている。
ビジネス部門 第2位
ぷにゅ蔵くん タナック
タナック(岐阜市、棚橋一成社長)の「ぷにゅ蔵くん」は、注射の痛みを軽減する子ども用の冷却パックだ。冷たさで痛みを感じにくくなる作用を応用した一般医療機器で「子どもの注射嫌いを軽減したい」と願う小児科医師と共同開発した。
肌に当たる部分には、すでに医療分野で患部の冷却用に採用されている自社製の超柔軟ゲル素材「クリスタルゲル」を採用した。これで三重化学工業(三重県松阪市)製の凍らない保冷ゲルを包んだ。
一般の保冷剤と異なり、冷却しても固まらないのが特徴で、心地よく肌に当てて素早く冷却できる。
喜びの声
常務 棚橋 一将氏
「ぷにゅ蔵くん」は、神戸市立医療センター中央市民病院小児科の岡藤郁夫医長と共同開発した。注射の痛みを和らげ、子どもを注射に連れて行く保護者の負担も軽くしたい思いから。
命名は、日頃子どもと接する岡藤先生から候補を数点いただき当社で選んだ。「ぷにゅ」は子どもが好きな柔らかい語感。「蔵」は冷蔵庫の蔵。病気と闘う正義の味方として忍者のイメージキャラクターも創った。採用も増えており、広く普及させたい。
ビジネス部門 第3位
燃やさない保険 三井住友海上火災保険
三井住友海上火災保険の「燃やさない保険(衣料品循環費用補償特約)」は、衣料品循環費用を補償する保険だ。豊田通商の繊維事業部と連携して開発した。従来、工場火災などで煙のにおいがついたり、水にぬれたりした衣料品は、廃棄されていた。だが用途を変えると利用価値のあるものもある。
火災保険のオプションでこの保険を付けると、リサイクル業者へ運ぶ費用や加工費用を保険金で補い、再利用を促す。
商品名は、衣料品を燃やさずに循環させる意味を込めて付けた。大量廃棄(アパレルロス)の問題解決に貢献したい考えだ。
喜びの声
関西企業営業第四部・第四課長 大浜 篤氏
一言でわかりやすく、この保険で何をするのか、保険は自然環境にも貢献できることを伝える名前をひねり出すのに苦労した。多くの投票をいただき、とてもうれしい。読者の皆さまの自然環境保全に対する意識の高さが感じられた。
当社は中期経営計画で「地球環境との共生Planetary Health」を掲げる。今後も多くの事業者とサーキュラーエコノミーや気候変動対策につながるグリーン保険を開発していきたい。
アイデアネーミング賞
オトノハ 日本環境アメニティ
日本環境アメニティ(東京都港区、一色伸悟社長)の音響拡散体「オトノハ」は、植物の成長を参考に開発された。反射音を調整して本来の音を聴きとりやすくする工夫を施す。植物が葉を重ならせずにつける際に利用する黄金角と、音響上有利な無理数比の一つである黄金比を用いて数学的にデザインされた。
インテリア性を持ちながら反射音を球状に散乱させ、楽器演奏やオーディオ・録音などプロアマ問わずさまざまな場面で使用できる。
喜びの声 開発技術部 八並 心平氏
オトノハは「散乱性能」や「取り扱いの容易さ」「使用できる場面の多さ」に加え、名前にもこだわりを持つ。音響拡散体自体の認知度がない中、植物が開発の原点であることや、音に関する製品であることが覚えられやすいように名付けた。名前や商品とともに、反射音の重要性について広く知ってもらいたい。
アイデアネーミング賞
Rola 印南製作所
印南製作所(東京都足立区、印南英一社長)の「Rola(ローラ)」は、薄箱に対応する自動梱包(こんぽう)機だ。幅広いサイズの箱のテープ貼りを効率化できる。ベルト搬送で箱を送り出す前に、ベルト下方からローラーが繰り出してテープ面が箱の形に沿うように折り返すことで底面まで封をする。小型で安価な価格を実現。電子商取引(EC)市場の拡大に伴い、全国一律送料で郵便受けに届けられる薄箱の需要増加に対応する。
喜びの声 社長 印南 英一氏
BツーC(対消費者)にも販売を狙おうと堅苦しくない名前を考えた。昔は船に女性の名前を付ける風習があった。ローラと名付け新しい船で航海に出るような気持ちを表現した。機械に多数搭載しているローラーから名前を取り、テープでローリングして梱包するという意味も込めた。受賞をきっかけに販路拡大につなげたい。
アイデアネーミング賞
DECON 協和ホールディングス
協和ホールディングス(東京都渋谷区、立松和也社長)の「DECON(デコン)」は心と体の状態を整えるセルフケアブランド。アルミニウム製ボトルで環境に配慮したミネラルウオーター「ka―ra―da mizu(カラダ ミズ)」、アンチエイジングソイプロテイン「ka―ra―da michiru(カラダ ミチル)」、火を使わずに温熱効果を発揮するお灸(きゅう)「co―co―ro suikyu(ココロ スイキュウ)」などを展開する。
喜びの声 社長 立松 和也氏
デコンはデコンストラクション(再構築)という意味から名付けた。心と体が満たされより良い生活を送るため、次のスタンダードとなる価値を込めた。アルミボトルを採用したミネラルウオーターはプラスチックによる環境汚染やサーキュラーエコノミー(循環経済)を見据えた。環境を守り、次世代につながるよう努力を続ける。
スタイリッシュネーミング賞
キリン 上々 焼酎ソーダ キリンビール
キリンビールが2023年10月に発売したRTD(フタを開けてそのまま飲めるアルコール飲料)「キリン 上々 焼酎ソーダ」は、焼酎の本格的な風味でありながらクセがないすっきりとした味わいが特徴。メルシャン八代不知火蔵(八代工場、熊本県八代市)の本格麦焼酎原酒を一部使用し、さらに「米麹抽出物」や「食塩」などを加えて焼酎の特徴を引き立てている。
「食事に合う」「甘みが抑えられている」などのニーズに応える。
喜びの声 マーケティング部アソシエイト 高橋 祐介氏
スタイリッシュネーミング賞を受賞でき、大変うれしく思う。「キリン 上々 焼酎ソーダ」は心置きなくお酒を楽しみたいと思うお客さまに、いつでも心穏やかな幸せを感じてもらい、気分上々な生活に貢献することを目指すブランド。本格麦焼酎をソーダと合わせたスタイリッシュな飲み方の提案として、幅広いお客さまに届けたい。
スタイリッシュネーミング賞
トワイライトグラム TOPPANデジタル
TOPPANデジタル(東京都文京区、坂井和則社長)のホログラム「トワイライトグラム」は傾けると文字や絵などの潜像が現れる。潜像が出現しない場合は偽物であると判断でき、専用の器具や知識を持たない一般消費者でも目視で容易に真贋(しんがん)判定できる。一般的なホログラムと異なる特殊構造を持ち、製造には従来以上の技術と精度が必要で偽造が難しい。高価な精密機械部品や化粧品、金券の偽造・模倣品防止などの用途に活用する。
喜びの声 セキュアデバイス開発部 島村 純一氏
本製品「トワイライトグラム」のネーミングは社内関係者による公募を経て選定された。選定においては、製品の色合いを黄昏(たそがれ)(トワイライト)時の空色に、製品の特徴である潜像を確認する際に行う「傾ける」という行動を黄昏に夕日が沈む地平線を望む様に、それぞれ見立てられることが決め手となった。
スタイリッシュネーミング賞
MILATERA 千住金属工業
千住金属工業(東京都足立区、鈴木良一社長)の「MILATERA(ミラテラ)」は、低温ハンダ付け技術の総称。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ、CN)は各種電子機器製造においても達成すべき目標の一つだ。
本技術は汎用的な鉛フリーハンダより融点が約80度C低い低温ハンダを用い、材料・装置・工法の三位一体で提供することで、低温ハンダ特有の課題を解決。実装温度の低下を可能とし、CN実現に貢献する。
喜びの声 広報宣伝部 シニアサブリーダー 山本 忠夫氏
MILATERA(ミラテラ)は、未来+Tera(地球・大地)+照らすにインスピレーションを得た造語であり、新しいハンダの技術で地球の未来を明るく照らすという思いが込められている。CNに貢献する低温ハンダ付け技術としてのブランドネームであり、海外での展開も見据えアルファベット表記とした。
インパクトネーミング賞
NIGIRIST グラウンドデザイン研究所
グラウンドデザイン研究所(福岡市東区、木塚勝典社長)の工事現場用装具「NIGIRIST(ニギリスト)」は、手首に簡単に装着し、重い物や工具、機材などを握って持つときの握力を補助する装具型サポーター。手のひらサイズの耐油性強化ゴム製の巻き付け部分を、持つ物や道具に巻き付けて使う。持った物や道具の取り扱い性・操作性を損なうことなく、前腕部にかかる負荷を軽減する。
疲労で作業効率が落ちてしまうことを防ぐ効果が期待できる。
喜びの声 開発チーム新製品開発担当 藤本 大貴氏
土木や建築、製造の現場の省力化を図るいろいろな製品の一つとして開発した。現場で握る仕事をするユーザーへのリスペクトから、NIGIRUと人を表す接尾語ISTをつないだ。握ることで重量を手首に分散し軽減するという製品特徴を簡潔に一言に込めた。使い方がわかりやすく耳に残る音の響きがあり、力強さも伝えることができたと思う。
ユーモアネーミング賞
絶縁同芯 アイ・ティー・ケー
アイ・ティー・ケー(岐阜県羽島市、岩田真太郎社長)の「絶縁同芯(どうしん)」は小型複合加工機の探針(プローブ)だ。業界で珍しい直径0・1ミリ―3ミリメートルの小径回転工具用。先端に発光ダイオード(LED)ユニットを装着し、加工対象物(ワーク)に触れると通電し光る。主軸の位置確認が簡単にでき、段取り時の位置補正時間を従来の数分の1にできる。スピンドルに固定する保持部はセラミックス製で通常は絶縁状態を保つ。
喜びの声 会長 岩田 勝美氏
「絶縁同芯」はともに円柱状だが加工特性が異なるセラミックスとステンレスを同芯状に継いで外周を高精度に加工したのがポイントだ。ワークに接触しLEDが光った時点の主軸位置から、ずれを簡単に計算できる。
命名では、中心が同じ「同芯」と、治安のため見回りをする江戸時代の町方「同心」をかけた。
ユーモアネーミング賞
ひんやりュック サンコー
サンコー(東京都千代田区、山光博康社長)の「ひんやりュック」はリュックサックに冷却プレートとファンを取り付け、夏でもひんやり涼しく、背中の蒸れを抑えるユニークな商品。所有するリュックサックに後付けできる。プレートの冷却にはペルチェ素子を使用し、強弱2段階の切り替えが可能。モバイルバッテリーで使用可能なUSB給電方式で、ケーブル途中のリモコンで操作できる。椅子への取り付けもでき、猛暑をしのぐ強い味方だ。
喜びの声 執行役員 﨏 晋介氏
当社では社員がみんなで集まってネーミングを考える。新規分野や世の中にない新商品開発が多く、わかりやすい商品名が必要で「ひんやりュック」もそうしたコンセプト。ペルチェ素子を使ったプレートを2枚入れたベスト「クーリュック」も同様だ。これからも日常の困り事の解決や役に立つ面白い商品を開発していきたい。
ユーモアネーミング賞
もし、中小企業が7日間でメタバースを作ったら。 テックウェイ
テックウェイ(東京都中央区、瀬尾博文社長)の中小企業向けメタバース(仮想空間)構築サービス「もし、中小企業が7日間でメタバースを作ったら。」(もしメタ)は、仮想空間を最短7日間で構築する。仮想空間内に広場やセミナールームを事前に用意し、要望に合わせて掲載物や建物を追加する。展示会やセミナーでの利用が多いほか、書道の勉強会にも使われた。ウェブブラウザー上で動くため、通常のデジタル機器でメタバースが使える。
喜びの声 代表取締役社長 瀬尾 博文氏
インパクトのある名前で中小企業のデジタル変革(DX)に貢献できると考えた。今回の受賞を大変光栄に思う。メタバース業界は2020年のコロナ禍に、顧客企業の社員交流向け仮想空間を作ったことをきっかけに参入した。最近はメタバース人気が一巡し、注目度が下がりつつある。業界全体が発展するように盛り上げていきたい。
講評
丸の内ブランドフォーラム代表 片平 秀貴氏
「読者が選ぶネーミング大賞」34周年、おめでとうございます。また、今回受賞された皆さま、おめでとうございます。第1回の大賞はキリンの「一番搾り」でした。この賞はその後「リアップ」「い・ろ・は・す」「ななつ星in九州」などなど、皆に愛される名前を発掘、表彰し、その後の活躍を後押ししてきた貢献度は計り知れません。
今年の大賞は「こだわり酒場のタコハイ」です。今回も読者の皆さまによる大賞と、ブランド育成の大家が選ぶ特別賞との同時受賞となりました。「タコハイ」は株の世界では聞きなれた言葉です。オヤッと思わせながら、そこを逆手にとって「多幸をもたらす酎ハイ」という、おめでたいオチで締めたところがこのネーミングの妙ですね。多くの人に幸をもたらす、ビッグなブランドに育ってほしいです。
赤ちゃんが生まれたときに熱い思いを込めて名前を付けるように、今回も生みの親の熱い思いが乗ったいいネーミングが並びました。すべてにコメントする紙幅がないのは残念ですが、「ピタン」「うつ和」「オトノハ」「MILATERA」「絶縁同芯」「ひんやりュック」などなど、簡潔な中に説得力があり、今後使い手に愛される様を予感させます。
ビジネス部門1位はキャニコムの「ジャスパー砂与」です。いつもながら「コンクリート砂男」の妹というストーリーがあり、キャニコム流とでも言うべき独自の世界観を形成しています。このネーミングへの並々ならぬこだわりは、一言コメントに値します。
ネーミングは、商品・サービスの提供者の思いを伝える最も簡潔なメディアです。この認識が、今回の受賞された皆さまを越えて広く浸透することを祈ります。
審査員コメント
河野 透氏
「こだわり酒場のタコハイ」
ネーミングにはイメージを一新させるマジック効果がある。ちまたの「チューハイ」を、明るく円満な家飲みにイメージリフレッシュした「こだわり酒場のタコハイ」はその成功例だ。
齋藤 峰明氏
「こだわり酒場のタコハイ」
懐かしい昭和の時代の居酒屋を彷彿(ほうふつ)とさせるネーミングのリバイバル。なぜタコなのかはいまだに判然としないが、その語韻だけで楽しさあふれる大衆酒場の雰囲気を表現したのは見事。
前刀 禎明氏
「ピタン」
その価値をシンプルに表現したネーミング。好奇心をふくらませて手書きで自由に創造するからこそ、ペンとノートの組み合わせは大事。可能性を追求したくなるペン。