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長岡モデルの創造で、新たな価値を創出
地元企業と連携し、世界大会優勝目指す―フェニックスロボッツ―
新潟県長岡市内の学生らでつくる団体「Phoenix Robots(フェニックスロボッツ)」は、中国・深圳市で2024年夏に開幕するロボットバトルの世界大会「ロボマスター」での優勝を目指している。23年夏に唯一の日本代表団として初出場し、中国勢を除いた国際勢4チームの中で2位に輝いた。長岡技術科学大学院修士1年の高橋我公代表は「負けてしまった香港チームに次は勝ちたい」と力を込める。
フェニックスロボッツは、ロボマスターに出場するため2020年に設立した非営利の学生団体。創設メンバーの一人で会計・渉外を担う長岡技科大院博士4年の斎藤祐功さんは「日本のロボットコンテストに出場できるのは学部生まで。再挑戦したいとの思いからフェニックス(不死鳥)と名付けた」という。現在は長岡技科大や長岡工業高等専門学校を中心に、高専生、学部生、大学院生の17―30歳で構成。約50人が次の出場に向けてロボットの改良などを進めている。
ロボマスターは、深圳市を拠点に飛行ロボット(ドローン)を製造・販売するDJIが毎夏開催し、中国内外の約300チームが集まる。競技では縦15メートル×横25メートルのフィールドで、最大9台のロボットをカメラ越しに遠隔操作する。硬く小さい無数のボールを打ち合い、制限時間内に相手陣営の「体力」を多く奪った方が勝ち。ロボットの頑丈さや指示に対する動きの正確さなどのほか、操縦者の習熟度も重要だ。
フェニックスロボッツは23年7月下旬から8月上旬にかけて、悲願の初出場を果たした。新型コロナウイルス感染症の影響で出場できない状況が続いていた。
出場までにロボットの製造計画や資金計画などについて複数回の審査を受けた。設計、製造、制御は学生の手で行うが、資金集めにも奔走。県内企業を中心に約50のスポンサーがそろった。高橋代表は「訪中前に資金が足らなくなるのではと心配したこともあったが、なんとかなった。感謝の気持ちでいっぱい」という。
深圳市に滞在して分かったこともあった。部品などを電子商取引(EC)サイトで注文すると、数時間のうちに届いたという。高橋代表は「驚いた。中国勢はとにかく強いが、その秘訣は試行頻度の高さにある」とみる一方、「長岡市でも似たようなことは可能。自分たちにできないことをスポンサーのモノづくり企業に相談すると、数日で形になる。こんなことができるのは日本でここだけなのでは」と語る。
フェニックスロボッツによると、現在、ロボマスターのランクで世界上位10%にいるという。1チーム当たりのスポンサー数は最多で、資金部門の賞も獲得した。次回の出場可否が分かるのは24年6月。準備にまい進しつつ、地域の催しの中で子ども向けロボット操縦体験会を続ける。高橋代表は「世界に長岡を持っていく。地域に恩返しをしていきたい」としている。
ブリッジ・イノベーション・ラボラトリを開設―産総研―
産業技術総合研究所、新潟県長岡市、長岡技術科学大学の3機関は、連携拠点「長岡・産総研 生物資源循環ブリッジ・イノベーション・ラボラトリ(BIL)」を同市内の「ミライエ長岡」西館に開設した。有機廃棄物を含む生物資源の好循環を目指し、研究開発や企業支援を行う。産総研がBILの拠点を開設するのは、石川県白山市に置いた「金沢工大・産総研 先端複合材料BIL」に次いで全国2例目。長岡市内の新拠点でプロジェクトマネジャーを務める産総研生物プロセス研究部門生物システム研究グループの宮房孝光主任研究員に経緯や狙いを聞いた。
―なぜ同市内に開設したのですか。
「日本酒、醤油、米菓など、コメの加工が盛んな上、市がバイオエコノミーコンソーシアムを発足するなど素地があった。産総研としても以前から連携する機会があり、何でも『やってみよう』と協力的だったのが印象深い。企業の課題というのはいろいろあると思うが、バイオテクノロジー(生物工学)が解決できることは案外ある。産総研は国内最大級の公的研究機関で、産業競争力の強化が使命。企業連携には長年の実績があり、総合力を生かしたい」
―どのような取り組みから始めますか。
「例えば、酒かすは食品利用が減少傾向にあり、家畜の餌や肥料に混ぜるなど、お金にならない形が現状としてある。そこで機能性成分を引っ張り出し、例えばサプリなどとして展開できると、付加価値化を高められる。他にも、市内の米菓工場から出るコメのとぎ汁は、年間1000トンが廃棄となっている。安全安心なコメの粉で微生物を培養し、有用物質を生産できると、化粧品などの分野で流通可能になる」
―未活用資源は多く眠っていそうです。
「領域はもっと広げたい。市内はさまざまな産業が根付いており、イノベーションにつなげられるはずだ。何より、老舗企業が多く、若い人が活発。新技術の取り込みに熱心で活力ある地域でこうした活動をすることは大事だと思う」
―企業はどのようにBILと接触すればよいですか。
「バイオ関連企業でないと門前払いということは全くない。何か持ち込んでいただくのは大歓迎。BILの研究者が産総研や長岡技科大に持ち帰る。 『ミライエ長岡』の西館5階に開設したBILには常駐担当者がいないため、まずは電子メール(M-Nagaoka.AIST-BIL-ml@aist.go.jp)までご連絡を」
企業の課題解決に弾みつける ―ミライエ長岡いよいよ完成 ―
企業の課題解決に伴走
長岡産業活性化協会NAZE(新潟県長岡市)は、人手不足に伴う課題解決に取り組んでいる。伴走型支援の柱は、デジタルと外国人材の二つ。展開する「製造業デジタル化実装モデル事業」では、地元のIT (情報通信)事業者やアドバイザーが連携。アイデアの実現可能性や得られる効果を検証する「概念実証(PoC)」をもとに、小規模開発を繰り返す「アジャイル開発」で現場に即した導入を支援中だ。
同事業を活用する大塚木型製作所(新潟県長岡市)は、一覧表に入力した受注情報をもとに見積書を制作していたが、一覧表から見積書を自動生成。今後は生産管理システムにつなげる予定で、完成すれば、受注時の入力で納品までの手間を減らせるという。
就業者数増に向けては、モンゴルの高等専門学生の受け入れを進めている。このほど国際協力機構(JICA)は、「草の根技術協力事業(地域活性型)」の実施団体にNAZEを採択した。NAZEは長岡高専や市とも連携し、モンゴル高専生の産業デジタル変革(DX)人材としての育成、外国人活躍に必要な環境整備、企業インターンシップによる人材交流を進めるとしている。
長岡版イノベ拠点開業
産業振興と人材育成の拠点「米百俵プレイス ミライエ長岡」の西館が、この夏に先行開業した。館内には、3階と5階の一部に公立図書館「互尊文庫」、5階にはコワーキングスペースとして利用可能な「イノベーションサロン」や、3Dプリンタを備えた「ものづくりラボ」などを有する産学官連携の活動拠点「NaDeC BASE」がある。6階には、第四北越銀行のフロア。その一部を市が借りて、ベンチャー企業などが入居する「コラボレーションオフィス」を設置している。
長岡市商工部や長岡商工会議所などの産業系機関が入る東館は、2026年半ばに開業する見通し。入札不調で予定より1年ずれ込むが、完成すれば、西館と東館の3階が空中でつながる。