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宮崎県北地域特集2023
高速道路の開通や港湾設備の整備などで、宮崎県北地域の重要性が高まっている。旭化成を中核企業とした高度な技術を有する地元中小企業が集積する九州屈指のモノづくりエリアである。本特集では県北地域の中心都市である延岡市、日向市の市長インタビューなどを通じ、モノづくりで成長し続ける宮崎県北地域の今を紹介する。
延岡・日向 新時代切り開く
延岡市長 読谷山 洋司 氏/人材育成「延岡ITカレッジ」に手応え
―地域経済の現状は。
「新型コロナ後、飲食店はまだ苦戦しているようだが、観光客やビジネス客は急回復している。タクシー業界はドライバーが足りないほどだ。ライドシェアに関心を持っていて、我々としても手段を多様化することでニーズに応えていきたい」
―延岡市内の人口増も注目されています。
「赤ちゃんの出生数が2021年度から増え始めているほか、25歳から39歳までの人口が19年度から増えている。この2年ほどでIT企業を中心に14企業の新規事業所が開設された。21年8月に本市の事業が政府のスマートシティ関連事業に認定されたのも追い風になっているようだ」
―市長が進める重点事業の延岡ITカレッジの状況は。
「これは5カ月間の人材育成で、22年度からスタートした。学生コースと、求職者コースと、企業内DXリーダー育成コースの3コースがあり、若い世代が定員オーバーするぐらい人気で我々も手応えを感じている。講師陣も東京の企業から招いているほか、東京の大学や企業、地元の有識者とも連携して本市の実情にあったカリキュラムをつくっており、市が育成した人材を地元に根付かせていく」
―人手不足が深刻化しています。
「解消する一つの手段として、本市では奨学金返還の独自補助を実施中だ。これは県の奨学金補助への上乗せに加え、企業負担がゼロになるよう独自に補助するもの。4月から高校時代の奨学金返還を支援する制度を始める予定だ。また、一人ひとりの能力を最大限発揮するためにはデジタルの手段をしっかり生かすことも重要。延岡デジタルクロス協議会では市民や企業のためにデジタルで課題を解決する。我々も連携し、支援していく」
―地元企業に向けたメッセージを。
「今後4年間で障がい者雇用を倍増させることを目指した延岡市障がい者雇用奨励補助金制度を始めた。延岡市ワークステーションでは、市が率先して障がい者を雇用し、一般企業に人材を送り出してもいる。障がい者雇用はチャンスと捉え、本市の繁栄に向けて多様な人材活躍につなげていただきたい」
日向市長 十屋 幸平 氏/ひむかーBizの支援で創業続々
―現在の経済情勢をどう見ていますか。
「客足や売り上げは伸びてきているが、物価高などで収益は悪化している。小売業の回復はあまり感じられない。そこで、消費喚起策としてプレミアム付き商品券のプレミアム率を通常の30%から40%に引き上げて発行した。ガソリンや飲食など有効に使ってもらえればと思う」
―細島工業団地の状況は。
「細島港は外貿コンテナ航路の開設やRORO船の関東・関西航路の就航、国際物流ターミナルの供用開始など機能が充実してきた。東九州自動車道・九州横断自動車道延岡線の整備で企業立地が進むなどポテンシャルが高まっている。2023年度末には16号岸壁が供用開始する。国直轄事業である19号岸壁の整備も着工した。地域産業の物流効率化に寄与していく」
―人材確保をどう支援しますか。
「まず事業者の知名度を上げる必要がある。中小企業魅力発信事業では、社員目線で自社を紹介する動画を作成し、YouTube発信したり、DVDを各学校へ配布している。この動画を活用して日向地域の高校1、2年生向け企業説明会を年明けからスタートする計画だ。また、Uターンしてくる場合に地元にどんな企業があるか知ってもらうため、市内すべての中学3年生に市内企業を紹介する冊子を配っている」
―創業支援も積極的です。
「日向市産業支援センター『ひむか―Biz』への相談を経て起業する人が多く、23年度は創業支援を厚くしたこともあり、10月末時点で前年度実績と並ぶ13人が起業した。特に女性の起業が多くなっている」
―サーフィン移住の取り組みについて。
「移住相談会も7年間で計446件受け、37・2%に当たる166人がサーフィン関連の方からの相談だった。この12月には国際プロサーフィン大会も実施した。将来的にはトップレベルの選手が参加する大会を誘致し、地域資源であるサーフィンを生かして地域活性化につなげていく」
―企業版ふるさと納税も好調です。
「この3年間の合計は33社8498万円と、規模の大きな事業を実施することもできた。企業の気持ちはありがたい」