-
業種・地域から探す
リチウムイオン電池&全固体電池の材料と試験・製造装置
二次電池の主流であるリチウムイオン電池(LiB)は、エネルギー密度や出力密度が高く、繰り返し(サイクル)寿命が長いなどのメリットを持つ。また全固体電池はより高性能かつ小型で難燃性・不燃性に優れ、次世代二次電池として量産化が期待されている。二次電池に関する素材や製造装置、試験装置・サービスなどを扱う企業は、製品・技術の開発や生産・受託体制の増強に取り組む。
カーボンニュートラル実現
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に向けた潮流や再生可能エネルギーの普及、電動車(xEV)の利用拡大などを背景に、LiBの世界市場規模は拡大傾向にある。我々の生活において必要不可欠となっている一方で、夏場はモバイルバッテリーなどLiB搭載製品の発火事故が多数報告されている。
また電解質を含む全ての材料が固体で構成された全固体電池は、実用化に向けて研究・開発が進む。全固体電池は温度変化に強く、発火のリスクが少ない。また、さらなる急速充電の実現など、性能の向上においても注目されている。
製品評価技術基盤機構(NITE)は2024年3月、硫化水素ガスの処理ができ、硫化物系全固体電池などの試験を安全に行える「先端技術評価実験棟(NLAB MIDDLE チャンバー)」を大阪事業所内に新設した。今年2月には全固体電池の挙動確認のための試験を、企業と共同で初めて実施。今後も全固体電池の試験手順や安全対策などの知見を深め、民間試験所では実施が難しい試験需要に対応していく。
グラフェン EVに標準/SPAN ドローン適用
ADEKAは二次電池の性能向上に貢献する素材「アデカアメランサシリーズ」の開発を強化している。グラフェンとSPAN(硫黄変性ポリアクリロニトリル)の2種類をそろえる。
-
ADEKAのグラフェンは急速充電やサイクル寿命の延長に寄与する(ADEKA提供)
グラフェンはLiBの電極で使われる導電助剤。一般的に用いられるカーボンブラックやカーボンナノチューブと併用することで電極抵抗を下げ、急速充電やサイクル寿命の延長に寄与する。一般的なグラフェンは層が薄く、折れやしわ、穴などがあるものも多いが、同社のグラフェンは分厚くて大きな板状をしており、欠陥が少ない。品質がよく大量生産にも耐えられ、産業用に使いやすいグラフェンを開発した。
メインターゲットは電気自動車(EV)分野を考えており、EVの急速充電や中古車としての再利用などのニーズに応える。量産化の体制は整っており、今後は電池メーカーの具体的な要求に合わせて調整し、電池に組み込んだ後の評価を進めていく。
-
ADEKAのSPANを用いた二次電池。軽量で、飛行体分野への応用が期待される(ADEKA提供)
SPANは次世代二次電池として開発が進むリチウム硫黄電池や全固体電池向けの正極活物質。入手しやすい硫黄を使うため、サステナブルな素材だ。
SPANと樹脂箔(はく)による正極で試作した二次電池「軽量Li-SPAN/樹脂箔パウチセル」は、試験において重量エネルギー密度が最大で1キログラム当たり552ワット時に達し、現行LiBの値を大きく上回った。また満充電状態の試作セルに鉄クギを刺しても、発煙・発火が起こらないことも実証された。二次電池の軽量化や安全性・実用性の向上に貢献する素材として、ドローンなど飛行体分野への適用が期待される。
経産省 3万人育成計画
経済産業省は22年8月に発表した「蓄電池産業戦略」の中で、30年までに蓄電池のサプライチェーン(供給網)全体で3万人の関連人材を育成する目標を示した。
これを受け、産学官が所属する「関西蓄電池人材育成等コンソーシアム」は、蓄電池関連産業が集積する関西エリアにおいて、バッテリー人材の育成・確保の推進に取り組む。学生や社会人向けの教育プログラムの作成・提供や、バッテリー産業の機運醸成のための広報などを行っており、今後も取り組みを拡充していく。
