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リチウムイオン電池&全固体電池
リチウムイオン電池(LiB)はエネルギー密度や出力密度が高く、繰り返し(サイクル)寿命が長いなど優れた特徴を持つ。電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)など電動車(xEV)市場の拡大に伴い、LiBの生産を支える部材メーカーは生産増強を図る一方、製造装置メーカーなどではこれまでの経験とノウハウを生かして電池市場での存在感を高めている。また電解質を固体で構成する全固体電池は量産化を視野に入れた動きにも注目が集まる。
航空・宇宙/ドローン/医療 「電動車」軸に広がる市場
新車、100%電動化/政府35年目標
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商用車の新車販売比率で、xEV化が求められている(ジャパントラックショー2024)
政府は「35年までに、乗用車新車販売で電動車(xEV)100%」という目標を掲げ、クリーンエネルギー自動車の普及と、インフラとしての充電器などの設置を両輪として進めていくことを掲げている。
商用車は小型車が新車販売で30年までにxEV20-30%、40年までにxEV・脱炭素燃料車100%を目指す。大型車は20年代に5000台の先行導入を目指し、30年までに40年のxEVの普及目標を設定する。
こうした中、経産省は23年10月に「充電インフラ整備促進に向けた指針」を公表。30年までに30万口(内、急速充電器3万口)の設置を目指す。
調査会社の富士経済では、走行用の電力源となるEV向けの駆動用二次電池における世界市場の調査を行っている。EV向けはカーボンニュートラル実現に向けて、EVモデルの大幅な投入増加を予想。25年の世界市場は前年見込み比10・7%増の20兆5993億円を見込んでいる。
EVトラック・バス向けの駆動用二次電池の世界需要は、中国が大型EVトラックの積極的な導入を始めたことから市場が拡大。現在もEVトラック向けが市場の中心となっている。今後は燃費規制の強化などに伴い、欧州や北米の需要拡大が予想される。また物流におけるEV化、都市の環境対策として公共交通機関のEV化を見込み、25年には同10・0%増の8128億円を予測している。
「EV/PHVの充電インフラ市場」における国内需要の調査では、23年の市場規模は補助金を反映し、急速・普通ともに充電器は過去最高となり、合計で前年比16・1%増の4万5680個の出荷となった(個は充電器のコネクター数)。
急速充電器の23年実績は、同33・9%増の1万2800個となった。公共用で90キロワットタイプが高速道路のサービスエリアやパーキングエリア、コンビニエンスストアなどで設置が急増した。また、50キロワットタイプは幹線道路沿い、特にガソリンスタンドでの設置が大きく伸びた。
普通充電器は同10・4%増の3万2880個となった。公共用では6キロワットタイプを中心に宿泊施設や遊戯施設、レジャー施設などで設置が増えた。今後はカーディーラーや商業施設を軸に充電ステーション設置が増加するとみている。
充電インフラ整備促進に向けた指針の発表から、急速充電器設置に対して機器購入費用の50%の補助金が支給されるなど、充電インフラ普及に向けた国家的戦略が追い風となり、市場拡大が期待される。
全個体電池 3兆8605億円/40年世界市場
全固体電池は産業総合技術研究所によると温度変化に強く、発火リスクが小さいといった安全面に加え、EVの充電1回当たりの走行距離が長い、ガソリン車の給油並みの急速充電ができるといった性能面からの期待が持たれているという。
富士経済が22年に実施した調査では、全固体電池の世界市場は40年には21年比約1072倍の3兆8605億円に拡大すると予測した。酸化物系は40年に1兆2411億円、硫化物系は同年には2兆3762億円に達すると見込んでいる。
全固体電池は高分子系と酸化物系が中心であり、硫化物系もわずかながら市場が形成されている。高分子系はカーシェアリングや路線バスなどの商用EVに搭載されている。
酸化物系は小型が中心である。大型は界面形成や量産技術のハードルが高いことから、実用化を優先するため固体電解質をベースに電解液やゲルポリマーを添加する疑似固体の製品化に向けた取り組みが海外を中心に進んでいる。
全固体電池のアプリケーション別では、大型ではxEV、小型ではIoT機器やウエアラブルデバイスなどでの搭載が進むとみられる。電力貯蔵システム(ESS)の採用はxEVでの量産化後になるとみられる。また安全性や耐久性から、航空・宇宙や医療、インフラなどの用途のほか、電池の軽量化・コンパクト化につながることからドローンや〝空飛ぶクルマ〟などの飛行体用途での研究開発にも期待されている。