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量産化を視野 EV向けに注目
経産省が産業戦略
炭素循環社会に向けてEVや再生可能エネルギーの普及が進む中、キーデバイスとなる車載や定地用の蓄電池の重要性が高まっている。さらにドローンや電動キックボードの普及拡大などにも蓄電池の需要増加に期待がかかる。
経済産業省は2022年8月31日、30年までに車載用や定置向けLiB・材料の国内製造基基盤を年間で150ギガワット時とすることを目指し、30年には世界市場において日本企業全体で600ギガワット時の製造能力を確保する目標などを盛り込んだ「蓄電池産業戦略」を発表した。
同産業戦略では全固体電池を中心とした次世代蓄電池技術開発支援を強化。日本が強みとする研究開発力で国際的にリードする。LiBが主流の中、30年頃の全固体電池の本格実用化やハロゲン化合物などの新しい電池分野で技術的優位性を確保を目指す。
こうした中、調査会社の富士経済によると、25年のLiB世界市場は12兆3315億円と予測した。旺盛なxEV開発計画と販売目標に加え、定置向けなどの大幅な伸長を見込んでいる。
リチウム電池/電動車向け9兆円―25年世界市場
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使用済みLiBのリサイクル市場に期待するクロマジャパン(スマートエネルギーWeek 春の同社ブース)
米テスラなど自動車メーカーのEV生産の拡大、環境規制と導入インセンティブによるEVの販売増加により、23年の世界xEV用LiB市場は前年予測比2・5%増の8兆6700億円、25年は9兆3890億円を見込んでいる。
また定置用途の電力貯蔵システム(ESS)や無停電源システム(UPS)、無線基地局用(BTS)の23年世界市場は同15・7%増の7960億円、25年には1兆970億円と予想する。
東京・有明の東京ビッグサイトで3月に開催された「スマートエネルギーWeek 春」に出展したクロマジャパンは「車載向けに加えて、コンテナ型蓄電池システムに対する検査需要が高まっている」と述べる。大型商業施設の付加価値として、EV充電システムの電源や災害対策での活用と分析する。
同社の検査装置はLiBの充放電試験に加えて、絶縁や漏れ電流の安全試験がワンストップで行える優位性を持つ。
今後は使用済みLiBのリサイクルが課題となるとし、新しいビジネス創出に期待を高める。
LiBは省スペース化が可能で、ESSでは入出力特性に優れるLiBの採用が進んでいる。太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー発電の増加により、家庭での自家消費、発電事業者による系統安定化など幅広い用途で導入されている。米国、中国、欧州市場がけん引している。
BTSでは中国が環境配慮と廃棄の観点からLiBの採用が加速している。
全固体電池/量産化へ―1.6兆円市場 35年予測
産業技術総合研究所によると温度変化に強く、発火リスクが小さいといった安全面に加え、EVの充電1回当たりの走行距離が長い、ガソリン車の給油並みの急速充電ができるといった性能面からの期待が持たれているという。
自動車メーカーによるxEVへの搭載計画の発表のほか、安全性の高い電池として性能向上、コンパクト化やレアメタルフリー、コスト低減などの実現を目的に開発が進んでいることから、富士経済による23年の全固体電池世界市場は、前年比約3倍の181億円を見込み、35年には1兆6374億円と予想。
全固体電池は高分子系と酸化物系が中心であり、硫化物系もわずかながら市場が形成されている。高分子系はカーシェアリングや路線バスなどの商用EVに搭載されている。
酸化物系は小型が中心である。大型は界面形成や量産技術のハードルが高いことから、実用化を優先するため固体電解質をベースに電解液やゲルポリマーを添加する疑似固体の製品化に向けた取り組みが海外を中心に進んでいる。
中国で疑似固体電池をEVに搭載する動きが多くみられ、25年にかけて伸長が予想される。
硫化物系はxEV向けで有望とみられ、30年までにEVへの搭載も進み、40年に向け急速な市場拡大が期待される。特に硫化物系がけん引することで市場が拡大し、全固体電池全体の世界規模は40年には3兆8605億円が予測される。
アプリケーション別では、大型ではxEV、小型ではIoT機器やウエアラブルデバイスなどでの搭載が進むとみられる。ESSの採用はxEVでの量産化後になるとみられる。また安全性や耐久性から、航空・宇宙や医療、インフラなどの用途のほか、電池の軽量化・コンパクト化につながることからドローンや空飛ぶクルマなどの飛行体用途での研究開発にも期待されている。
電動2輪の電池 充電済みに交換
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「Honda Mobile Power Pack e:」とステーション(スマートエネルギーWeek 春)
炭素循環社会に向けて電池交換シェアリング(バッテリースワップ)サービスに注目が集まる。2022年4月1日、エネオスホールディングスと2輪車メーカー4社は、電動2輪車の共通仕様に適合したLiB「Honda Mobile Power Pack e:」シェアリングサービス提供と、そのためのインフラ整備を目的とする新会社「Gachaco(ガチャコ)」を設立した。
エネオスと2輪4社―インフラ整備で新会社
使用したLiBを、ステーションで充電済みLiBと交換する仕組みなので、車載の電池に充電するよりも短時間で作業が完了する。
富士経済による23年のバッテリースワップサービスの世界市場は前年比32・0%増の735億円と予測する。35年は6157億円と見込む。
中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)などで小型2輪車が広く普及していることから、中国、インドネシア、インドで市場が形成されている。
国内では個人ユーザー向けの電動2輪車の販売強化により、市場拡大を見込んでいる。また交換ステーションの広がりは、走行距離の課題解決にもつながる。