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ICT/DX―テックで安心を提供
ICT(情報通信技術)やデジタルツールの活用により、ビジネス上の作業や業務をスムーズに進められるようになる。ひいては作業者の確実な業務遂行にもつながり、最終的にサービスや製品が提供される生活者の安心感を生み出す。デジタルツールを通じて全国で業務効率化に貢献する企業を紹介する。
C&Gシステムズ/工程管理 勘・経験を体系化
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AIQは過剰在庫や表計算管理にも対応する
「生産性の限界に挑戦する」を社是とするC&Gシステムズは、モノづくり現場を支えている。金型向け国産CAD/CAM(コンピューター利用設計・製造)システム大手として、国内外の製造現場に欠かせないソリューションツールを提供するが、最近ではCAD/CAMシステムと連携する工程管理システムにも力を入れている。
2018年に14年ぶりにリニューアルして発売した工程管理システム「AIQ(アイク)」は、IoT(モノのインターネット)やビッグデータ(大量データ)技術を生かして、熟練者の経験や勘に頼っている製造現場の工程管理を体系化する。高額な専用システムの導入が不要なため、大規模投資が難しい中堅・中小製造業でも導入しやすいのが特徴だ。
開発には同社の若手技術者を多く充て、ユーザーインターフェースを旧来品から刷新。分かりやすく、使いやすくすることで導入のハードルを下げた。基幹システムと連携でき、スケジュール管理や原価計算などもシステム化することで、中小企業のデジタル変革(DX)に貢献する。
23年7月には最新版「V16・1」を発売。設備の保守が必要になった際の警告や、量産設備の稼働スケジュールの可視化などの機能を追加した。これにより、中小量産メーカーの課題とされる過剰在庫や表計算管理などの解決を可能にした。
YEデジタル/スマートバス停で負担軽減・広告宣伝
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スマートバス停は、電子看板に運行時刻や系統図を表示。手作業で行われているダイヤ改正や災害時の運休情報などの告知を遠隔で更新できる(長崎空港)
YEデジタルはIoT(モノのインターネット)技術を使ったスマートバス停を全国に拡大中だ。バス停は全国に52万停あるとされ、都市部だけでなく過疎地域にも点在する。少子高齢化で地方では利用者が減り、運行本数も減便になる一方だが、バス停がある限り情報の更新は避けられず、人手による深夜に及ぶ作業はバス事業者の負担になっている。
スマートバス停は、デジタルサイネージ(電子看板)に運行時刻や系統図を表示するほか、通常は手作業で行われているダイヤ改正や災害時の運休情報などの告知を遠隔更新できる。このため時刻表更新の負担軽減と広告宣伝という“二刀流”効果で、都市部で人気を呼んでいる。太陽光発電を利用する郊外モデルなども用意しており、過疎地での利用にも抜かりはない。
既に北九州市のほか熊本市、岐阜市、北海道帯広市など全国で設置が進み、2023年度末までに220台の稼働を予定する。
玉井裕治社長は「バス会社の働き方改革に貢献できるサービスとして全国に広げたい」と期待している。
正興電機製作所/介護保険 ITで支援
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「デジタルファースト」は中計で掲げる柱の一つ(人工知能〈AI〉カメラを用いた外観検査システム) -
正興ITソリューションでは健康分野のデジタルソリューションも提供(介護予防向けリハビリ支援ゲーム「起立の森」のデモ)
正興電機製作所では、三つの重点戦略を掲げる中期経営計画「IC2026」が走る。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に資する「脱炭素社会の実現」、設備の制御・運用やITなど自社技術の総合力を生かす「One正興」を実行する。さらに「デジタルファースト」を旗印に、社会のデジタル化や顧客のデジタル変革(DX)に貢献する。
デジタル分野の推進において、グループの正興ITソリューション(福岡市博多区)は情報システムなどの取り扱いに特化している。コンテナ台帳をはじめとする港湾業界向けクラウドシステムで高いシェアを誇るほか、最近は健康経営の支援ソリューションでも存在感を見せる。
多様な産業領域向け製品を擁する中、20年以上にわたり自治体業務のデジタル化を支援してきたロングセラー商品が「介護保険認定審査支援システム iRavit(アイラビット)」だ。自治体の介護保険システムに連動する形で、被保険者の認定審査をデジタル化し支援する。
全国の市町村など60以上のユーザーで稼働中だ。地場の九州では大手ベンダー製品を抑えてシェア約2割を誇る。「他社に切り替えたユーザーはいない」と担当者は胸を張る。
アイラビットは3システムで構成する。ベースになるのが、自治体担当者にとって特に業務負担の大きい認定審査会で用いる資料作成をサポートする「事務支援システム」だ。
オプションとして、大量の紙を必要とする審査資料のペーパーレス化に対応する「審査会支援システム」、被保険者への訪問調査のスケジュール管理や調査結果の入力を効率化する「訪問調査支援システム」も用意する。
介護保険制度がスタートした2000年から提供しており、3年に1回の制度改正に適応しながらユーザーを増やしている信頼性の高いシステムだ。正興ITソリューションではリリース当初から販売を担い、全国で制度運用を支えている。
さらに自治体向けシステムにとって大変革となる、国主導による25年度の「システム標準化」と「ガバメントクラウド」導入にも対応する構えだ。
提供する企業によっては25年以降に現行システムを継続利用できなくなるケースも見込まれる中、正興ITソリューションでは「標準化対応とクラウド化を急いでいる。オプション対応にも応えられる」として、しっかりとした受け皿になるべく開発に力を注いでいる。