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脱炭素/九州から世界をサステナブルに
排出ゼロを超えて “カーボンマイナス”へ
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九州電力はゼロエミッション電源を最大限活用して社会の脱炭素化を実現する(玄海原子力発電所、佐賀県玄海町)
九州電力による地域や社会を持続的にする取り組みが実を結び始めている。池辺和弘社長は自社を「九州各県の地場企業」と位置づけ、九州に拠点を置く電力会社としてだけでなく、各地に根付き寄り添う企業としてグループ事業を展開する。
国際社会からの要請であるカーボンニュートラル(温室効果ガス〈GHG〉排出量実質ゼロ)に対しては2021年、「九電グループ カーボンニュートラルビジョン2050」を定めた。
再生可能エネルギーの主力電源化をはじめとする電源の低・脱炭素化に加えて、需要側の電化の推進などを通じて世の中のGHG排出削減に貢献することで、同社グループの企業活動における排出量を実質的にマイナスとする「カーボンマイナス」の実現を目指す。
現在、アクションプランを実行中で、GHG排出削減目標は「SBTイニシアチブ」から科学的根拠に基づく目標として認定を得た。国内大手エネルギー事業者では初の認定で、野心的かつ現実的な削減策が走っている。
発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しないゼロエミッション電源である原子力の最大限の活用は柱の一つ。九電では新規制基準に適合した玄海原子力3、4号機(佐賀県玄海町)、川内原子力1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)が稼働しており、このうち川内は40年超運転の国の認可を11月に受けた。
ゼロエミ電源のトップランナー
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グループの経営資源を集中して再生可能エネルギーの開発を推進する(九電みらいエナジー「唐津・鎮西ウィンドファーム」、佐賀県唐津市)
九電の発受電電力量に占めるゼロエミッション電源の比率(FIT電源含む)は、18―22年度実績で約4―6割に上り、全国トップレベルにある。“低・脱炭素のトップランナー”である九電にとって、24年は大きな節目となる。
九電はグループの九電みらいエナジー(福岡市中央区)に、再生エネ事業を段階的に移管する。まず4月に地熱事業を移した後、水力の移行を進める。最終的に九電みらいは太陽光、風力、地熱と水力、バイオマスの5電源を擁する国内最大級の再生エネ事業者になる。経営資源を集中して規模のメリットを生かし、さらなる再生エネ開発を推進する。
大規模電源として期待がかかるのが洋上風力だ。北九州市若松区響灘では九電みらいなどが出資する、ひびきウインドエナジー(北九州市若松区)による建設工事が25年度の発電開始に向けて進む。海上の4エリアに25基、最大出力22万キロワットの風車が立つ計画だ。
このほか九電が国内トップを走る地熱発電でも域外を含め開発検討を進めるなど、脱炭素化に向けた地域資源の最大利用を後押しする。
電化推進 再生エネ 最大限に
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再生エネの余剰電力は水素製造にも活用する(実証運行中の燃料電池大型バスと福岡市西区の九州大学水素ステーション)
社会が低・脱炭素化に向かう中で、インフラや機器のエネルギーを電化することは重要な要素になる。九電では電化を促進したり、再生エネを最大限に活用したりする取り組みに力を注いでいる。
10、11月にはオール電化向け料金プランのユーザーを対象に、指定時間帯の電気料金を実質無料とする「タイムセール」を実施した。エコキュートの沸き上げや電気自動車(EV)の充電といった電力需要を、太陽光による発電量が高まる昼間にシフトし有効活用する狙いだ。
再生エネの余剰電力は、九州大学などと実証する水素燃料電池(FC)バスの運行でも最大限に使う。独自のエネルギーマネジメントシステムやマッチングシステムを通じ、九大伊都キャンパス(福岡市西区)での水素生成に用いる。
FCバスにはキャンパス内で水素を充填し、最寄り駅との間を運行する一般路線バスとして走らせる。学生や市民に向けて、次世代エネルギーである水素の有効性を感じてもらうことにも一役買う。
輸送分野の電化は、脱炭素への貢献度が高いとされる。このことから九電はマンション入居者向けEVシェアリングサービス「weev(ウィーブ)」を22年5月に全国に拡大。個人専用EV充電設備を整備するサービス「PRiEV(プライブ)」も首都圏と福岡市で展開している。さらに九電は30年までに、保有する社用車のうち特殊車両を除き100%EV化を目指す。
持続可能な地域をつくる
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豊前発電所敷地内で陸上養殖した「みらいサーモン」。鮮度を強みに域内外で販売を見込む
「地場企業」としての九電グループの事業活動は協働・共創を通じて多様化している。
豊前発電所(福岡県豊前市)敷地内ではサーモンの陸上養殖がスタート。ニチモウなどと共同で「みらいサーモン」として冷凍せずに生食できる鮮度の良さを売りにする。まず年産300トンに乗せ、同3000トン規模を視野に入れる。食料自給率の改善や地域活性化といった国連の持続可能な開発目標(SDGs)の実現にもつなげる。
筑邦銀行、SBIホールディングスと出資する、まちのわ(福岡市中央区)では情報プラットフォームの提供を通じて自治体のプレミアム付商品券の電子化サービスを支援する。子育て給付金やインバウンド(訪日外国人)向け旅行券の発行にも拡大したほか、2月には環境省が推進する「グリーンライフ・ポイント」事業にも採択されるなど活動の輪を広げている。
地域とより一体化した事業では2カ所で展開中の「Qでんにぎわい創業プロジェクト」がある。九電社員が地域に入り込み、地域主体のビジネス創出を通じて課題解決に貢献する。長崎県東彼杵町では特産品「そのぎ茶」を訴求した地域商社事業や交流拠点の運営、福岡県新宮町相島では玄界灘の旬の魚を用いた棒ずしを開発・販売するなど、地域の住民や団体とともに汗をかいている。
