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九州中央支局特集
~「Re」につなぐ港湾
熊本県は、台湾積体電路製造(TSMC)の生産子会社のJASM(熊本県菊陽町)第1工場が本格稼働を始め、半導体関連企業の集積やインフラなどの計画の推進で「新生シリコンアイランド九州の実現」に向けて全国から注目を集める。同県には、半導体だけでなく自動車関連や食品関連などさまざまな産業が集積する。今後の企業集積やインフラ整備のカギを握るのは熊本港(熊本市西区)と八代港(熊本県八代市)だ。1月に東京で開催したポートセミナーには、200人以上の参加があり関心の高さがうかがえた。機能強化が進む両港の現状を見る。
機能強化進む熊本港・八代港
熊本港は、韓国・釜山港間に週2便、神戸港から世界につなぐ国際フィーダー航路週1便の航路を持つ。2024年のコンテナ取扱総量は1万2849TEU(速報値20フィートコンテナ換算)で、22年以降堅調に推移している。
コロナ禍による物流の混乱で一部の大口荷主企業が九州北部港に利用港を変更した。一方、23年度に就航した神戸港経由の国際フィーダー航路が新たな選択肢となり取扱量の増加を後押ししている。世界的なハブ港である釜山港の混雑のスケジュール遅延を嫌い、神戸港の優位性が高まったことも背景にあると熊本県は見ている。
新ガントリークレーン導入
熊本港は1月に新ガントリークレーンを導入、供用を開始した
港の機能や耐震性の強化も順調に進む。25年1月に新ガントリークレーンを導入。供用を開始した。また、国は耐震強化岸壁を整備中で31年頃の完成を計画する。県はコンテナヤード拡張に取り組み、コンテナ取扱量増加に対応する蔵置スペースを確保する。災害時の物資受け入れ拠点としての役割を果たす。
将来、国の中九州横断道路や熊本市の熊本西環状道路など高規格道路が熊本港と接続することで、半導体関連企業が集積する県北エリアまでの移動時間が90分から30分に短縮されることが見込まれ、同港の利便性が増すことが期待される。県では熊本港利用促進に向け、コンテナ利用荷主への助成事業などを用意し、同港の利用を促している。
八代港は、輸出入総額や海上物流量はともに県内トップ。韓国・釜山港間に週2便、台湾航路(基隆、台中、高雄)間に週1便、神戸港経由の国際フィーダー航路が週1便寄港する。南九州では唯一となる高圧ガス貯蔵所や危険物倉庫も整備。半導体関連部材のゲートウェーとして重要度がますます高まる。
24年のコンテナ取扱量は、1万9458TEU(同)と、熊本地震発生の16年以来8年ぶりに、2万TEUを割りこんだ。従来の利用企業が熊本港に荷を一本化したことや、飼料の輸入についてコンテナからばら積みへ移行が進んだ影響を受けた。
コンテナターミナルは、水深12メートル。敷地面積5万6000平方メートル。ガントリークレーン2基やストラドルキャリア3台が活動する。定温倉庫を含む荷さばき用のCFS倉庫や48口の冷蔵・冷凍荷物用のリーファー電源を整備。後背地の農水産物や酒類といった貨物の集積や輸出用小口混載ニーズに対応する。
バイオマス発電所 運用開始
八代港のバイオマス発電所は、一般家庭約15万世帯分の年間消費電力に相当する電力を作り出す
24年6月に、くまもと森林発電(熊本県八代市)の八代バイオマス発電所も運用を開始。発電容量は毎時7万5000キロワットと、バイオマス発電では国内最大クラス。約15万世帯分の発電量を持つ。
コンテナターミナルに隣接する国際クルーズ船受け入れ拠点「くまモンポート八代」は大型クルーズ船の寄港による人流増と県内観光に寄与する。さらに、大規模災害発生時における緊急物資や自衛隊派遣部隊の輸送など被災地支援の防災拠点としての機能も持つ。
メッセージ/八代港港湾振興協会 会長(MATSUKI社長) 松木 喜一 氏
台湾と南九州結ぶゲートウエー
八代港港湾振興協会 会長(MATSUKI社長) 松木 喜一 氏
熊本県に進出した令和の黒船ともいうべき台湾積体電路製造(TSMC)が量産をスタートした。今後の設備投資や増産も期待される。八代港は台湾との航路を持つことが大きな強みだ。このことを実感しながら大切に関係を築いていきたい。熊本県と台湾との交流や関係は今後も深く強固なものになると思うが、TSMCなくしては成り立たない。半導体関連や半導体を使う企業の熊本県への集積がさらなる地域貢献につながるはずだ。
愛媛オーシャン・ライン(松山市)が台湾と熊本とのコンテナ航路の船主として先行して八代港を活用している。台湾との絆を強化するためにも、国による港湾整備をはじめ熊本県や八代市など自治体レベルのさらなる交流支援が望まれる。1月に東京で開いた熊本県ポートセミナーは、多くの船社や荷主、フォワーダーなどの参加があり大盛況だった。注目の高さと期待の大きさを肌で感じた。
1月に実施した「熊本県ポートセミナーin東京」には200人以上の港湾関係者が詰めかけた
そうした中で課題もある。私たちが思っているほど、八代港や熊本港のことが台湾の人たちに認知されていないことだ。両港を台湾の人たちに向けてアピールする絶好のタイミングは今しかないと考える。できれば2025年度内になるべく早く台湾で「熊本県ポートセミナー」を企画し実施してほしい。特に八代港は台湾と南九州を結ぶゲートウエーであることをきちんと伝えることを提案する。
さらに、県主導で八代市、熊本市、関係機関や企業なども参加するイベントを、県と台湾の両方で開催し、観光も巻き込んで物流と人流の大きなアピール活動を早急に継続的に実施すべきだ。