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京都のライフサイエンス メディカル2025
世界の多くの国が高齢化の課題に直面する中、世界に先駆けて超高齢化社会に突入した日本の医療・健康関連産業は、健康寿命延伸と生活の質(QOL)向上に向けた取り組みで最先端を走る。伝統と革新、文化とテクノロジーが融合する京都でも、多くの企業が最先端の医療・健康関連産業に携わり、社会課題解決に向けた事業を推進している。
最先端医療で社会課題解決へ
万博・京都ゾーン/文化・食など魅力発信
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拡張現実(AR)錯覚でそうめんを食べても、ラーメンを食べたと感じる技術。食事制限ある人などに期待
大阪・関西万博は会期が終盤に差し掛かるにつれて人出が増え、会場は連日大盛況だ。万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。よりよい生き方や、ヒトだけでなく多くの「いのち」のあり方を考える場として、最先端の技術と英知を用いたパビリオンや催事で未来社会を描いている。京都からは、関西パビリオンの京都ゾーンなどを通じて、京都ならではの文化や食、産業、環境、いのち、観光に関する魅力などを発信している。
京都ゾーン「ICHI—ZA KYOTO(一座きょうと)」は一定期間ごとに展示物を入れ替え、文化や食、産業といった6分野の内容を発信する仕組み。9月から始まった「いのち」分野ではセルフケアプランや長寿食、健康長寿、生と死について考えることの重要性、認知症と正しい理解、今後のあり方などを提案している。
京都・大阪・奈良をまたぐ関西文化学術研究都市で開かれている「けいはんな万博」も、4月と9月に「in夢洲」と題したイベントを大阪・関西万博会場の大阪ヘルスケアパビリオン前で開催。企業や大学、研究機関がワークショップや体験展示で盛り上げた。
第一工業製薬/生活臭を1本で中和 抗菌・消臭剤、人気集める
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機能性表示食品「快脳冬虫夏草」㊧と、抗菌・消臭剤「NIOCAN」
界面活性剤など工業用薬剤を手がけ、創業116年となる第一工業製薬。2018年にライフサイエンス分野に本格参入した。純国産「カイコハナサナギタケ冬虫夏草(カイコ冬虫夏草)」やグループ会社の独自素材であるすだち由来の「スダチチン」の機能性を探求し、学会や学術論文での発表を多数行う。
主力製品は23年発売の機能性表示食品「快脳冬虫夏草」。グループ会社がカイコ冬虫夏草から発見した有用成分「ナトリード」を機能性関与成分とし、中高年の認知機能の維持が期待される。カイコ冬虫夏草には睡眠の質改善や男性機能向上、テストステロン増加なども確認されており、「スダチチン」の抗酸化作用や抗炎症作用と共に、現代の超高齢化社会や高ストレス社会の課題解決と健康寿命の延伸を目指す。
同社が新たに開発した「NIOCAN」は数種類の精油の力でさまざまな生活臭を1本で中和する“超優れもの”の抗菌・消臭剤として人気を集める。
三洋化成/人工たんぱく質 多用途展開推進 半月板再生材、企業治験へ
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シルクエラスチン
三洋化成は、組織の修復や再生を促す人工たんぱく質「シルクエラスチン」の多用途展開を進めている。シルクフィブロインとエラスチンの各部分配列を組み合わせ、遺伝子組み換え技術で作製される人工たんぱく質で、体内でも炎症を起こさずに皮膚になじみやすく、自然治癒する環境を作るのが特徴だ。
「治りにくい傷を治す」をコンセプトに難治性部位への適用を目指しており、半月板再生材用途で開発を進めている。従来の切除術の他に、修復を目指す再生医療の新たな選択肢として関節機能の温存に貢献することが期待されている。2025年度内に企業治験を開始予定である。
また、肺がんなどで肺切除した際にできる気管支断端からの空気漏れを防ぐための気管支塞栓(そくせん)材の開発も進行中だ。他にも適用部位の拡大を目指すとともに、海外展開も視野に入れる。
三洋化成は、シルクエラスチンを通じて健康寿命の延伸や生活の質(QOL)向上への貢献を目指す。
魁半導体/超撥水処理 独自のプラズマプロセス
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超撥水処理を施した材料表面
プラズマ装置メーカーの魁半導体は、撥水化や親水化など、さまざまな機能を対象物表面に付与できるプラズマ技術を事業基盤に、ライフサイエンス分野での応用も積極的に進める。5月に開発した超撥水処理技術は独自のプラズマプロセスで、基材表面に水滴がほとんど付着せず、容易に滑り落ちる超撥水効果をドライプロセスで付与できる。樹脂や金属といった幅広い基材に適用でき、防汚コーティングや水分・血液を弾く手術器具、細菌の付着を防ぐ医療用コーティングなどへの応用が期待されている。
同社は細胞培養用容器へのプラズマ表面改質も提供している。独自の「SAM技術」の応用で、シャーレや培養容器表面へ細胞特性に応じた分子構造を付与し、細胞が定着しやすい環境を実現する。
このほか、装置販売に加え、プラズマ受託処理や装置レンタルサービスも展開。大気圧プラズマ・真空プラズマ両対応の技術開発力を強みに、今後も市場ニーズに応えていく。
