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京都のライフサイエンス・メディカル2024
京都流の伝統と革新、文化とテクノロジーの融合は、ライフサイエンス分野でも異彩を放つ。多くの京都企業が成長著しいライフサイエンス市場に直接、または間接的など、何らかの形で同市場に携わり、事業展開を加速。先端技術、産学公連携のオープンイノベーション、スタートアップ・エコシステムの構築で存在感を示す。
先端技術で存在感を示す
産業育成、スタートアップ支援
グローバルで成長が続く医療・健康関連産業。急速な少子高齢化や、健康寿命延伸への対応をはじめ、多様な課題を抱える課題先進国の日本は、医療・介護データの集積によるイノベーションなどが見込め、各地でライフサイエンス分野の産業育成に熱が入る。
京都市と京都高度技術研究所は、ライフサイエンス産業育成とスタートアップ・エコシステム構築に向け、産学公連携の研究開発や事業化支援、大学発ベンチャー創出支援などを行っている。このほど、ライフサイエンスベンチャー創出支援事業として、起業に必要な事業戦略をはじめ、薬事、知財などの基本的知識、留意点を伝えるセミナーを開催。10-11月の間の全5回のオンラインセミナーも通じて支援する。
また、京都・大阪・神戸の3商工会議所は、関西圏のライフサイエンス産業振興に関する要望を合同策定した。データ利活用環境やリスクマネー投入などの基盤整備、「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマの2025年大阪・関西万博後で示される未来像の実現に向けた戦略的投資などについて、7月に関係省庁へ要望した。
魁半導体/プラズマ受託処理堅調 細胞培養容器の処理技術
撥水化や親水化など、対象物表面にさまざまな機能を付与するプラズマ技術を展開する魁半導体は、医療やバイオ分野からのプラズマ受託処理案件の受注増加が堅調で新プロセス技術の開発にも注力する。このほど、従来のプラズマ処理に加え、独自プロセス「SAM技術」を用いた細胞培養容器向け処理技術も開発。シャーレなどの容器表面に細胞の性質に合わせた分子構造を付与し、細胞を定着しやすくする技術で細胞培養用途に提案し、受託処理と装置販売の両方で提供している。
このほか、液体薬品を容器から垂らす時の液切れを良くする撥水加工技術、分散剤を使わず水にフッ素樹脂(PTFE)粉体を混合する技術など、ライフサイエンス分野のニーズに対応したプラズマ技術を数多く提供する。同社はグローバル展開も加速。8月に米国半導体専門メディアからアジアの優れた半導体関連企業に選出されたほか、アジアや欧州などの海外展示会への出展も増やしている。
第一工業製薬/新規成分「ナトリード」 認知機能の維持期待
界面活性剤をはじめとした工業用薬剤を手がける第一工業製薬。同社は2018年、医薬品原料の製造や食品の機能性研究を手がける企業2社をグループ化しライフサイエンス分野に本格参入した。100%国産の「カイコハナサナギタケ冬虫夏草(カイコ冬虫夏草)」の持つ機能性を探求し、学術学会発表や論文発表を多数行う。
主力製品は23年8月に発売した機能性表示食品「快脳冬虫夏草」。同社グループがカイコ冬虫夏草に発見した新規有用成分「ナトリード」を機能性関与成分とするのが特長だ。同社の研究で「快脳冬虫夏草」は中高年の認知機能の維持効果が期待できると分かった。
カイコ冬虫夏草には睡眠の質や男性機能の改善効果も期待される。同社は外部とも連携しながらナトリードの効果測定や作用機序の解明を進め、さらにカイコ冬虫夏草の機能性を追求。現在、社会問題となっている超高齢化やストレス過多などの課題解決と健康寿命延伸を目指す。
三洋化成/短時間に高収率で高純度EV回収 徳島大学と共同開発
三洋化成はエクソソームなどの細胞外小胞(EV)を簡単な操作で短時間に、高純度かつ高収率で回収できる精製キット「EXORPTION」(エクソープション)を5月に発売した。EVは細胞から分泌される微小粒体で、血液や尿などの体液中に存在。疾病や組織修復、免疫応答、老化現象などに関与しており、診断や治療への活用が期待される。
徳島大学と共同で、ハイドロゲル技術を応用した新規精製法「Hydrogel adsorption separation(HAS)」を開発した。同法を用いた精製キット「EXORPTION」は、体液を吸収する特殊なハイドロゲルビーズを含むスピンカラムを使う。一般の小型卓上遠心機で精製処理が可能だ。普及する超遠心法と比較すると精製時間は約10分の1の90分、不純物量は約100分の1未満、回収量は約10倍になる。EXORPTIONを通じてEVの応用研究を加速させ、新薬の創出に貢献する。