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京都のものづくり2024
日経平均株価がバブル期以来の高値水準で推移し、経済が活発化する中、製造業では目前に迫る「物流の2024年問題」に代表される人手不足などの課題がのしかかる。モノづくり力の低下も叫ばれ、近年力を付ける中国などに対抗する技術力の維持・向上も求められる。多様な業界で存在感を示す京都企業だが、こうした課題への対応でもその真価が問われそうだ。
課題対応へ真価問われる
自動機械で物流2024年問題に挑む
トラック運転手の時間外労働を4月から上限規制する「物流の2024年問題」では、運転手不足や輸送能力の低下などが懸念される。規制適用まで1カ月を切った3月初旬、総合物流機器メーカーの三菱ロジスネクストは、無人搬送車(AGV)や無人フォークリフト(AGF)といった最新の自動化技術を報道陣に披露した。
バッテリーフォークリフトやAGVなどを生産する安土工場(滋賀県近江八幡市)で実施したデモンストレーションでは、最新型のAGF「プラッターオート Hタイプ」で驚くほど速い無人の物流作業を実演。倉庫内のレイアウト変更が容易なレーザー誘導方式で、走行速度は最大時速9キロメートル、リフトの昇降速度は最大秒速390ミリメートルと、走行・荷役の高速化を実現し、同社従来品と比べて荷役作業のサイクルタイムを約29%短縮させた。
間野裕一社長は「どうしても人の作業の方が速いし便利だが、24年問題で人手が足りなくなり労働に制限が出てくる。人に代わるには、いかに速く、フレキシブルにするかがポイントだ」と強調する。デモのほか、複数の実機も展示。車体の向きを変えずに前方と左右の3方向荷役が可能な「ラックフォーク」は、ラック間の通路幅が狭い現場にも対応でき、スペースの有効活用などに寄与する。
こうした製品展開に加えて、鴻池運輸と親会社の三菱重工業との共同で、AGFによる屋外でのトラックの荷積み・荷降ろしを自動化する実証実験も推進中。間野社長は「かなりいい線まで行っている」と手応えを示しており、フォークリフト操作者の負担軽減とトラックの滞留時間削減が期待される。これらの取り組みで倉庫・工場内物流を自動化し、24年問題解決の突破口を開く。
産学で機械工学人材育成/寄付活用、講座開設や実践的な学びの場創出
モノづくりに必須の技術力を高めるには、〝技術者の卵〟である学生や若手研究者への投資も必要だ。包装機械大手の京都製作所(京都市伏見区)は、京都大学に10億円、京都工芸繊維大学に5億円の寄付をこのほど決め、産学連携で機械工学系エンジニアの育成に心血を注ぐ。
京大では6月をめどに、機械理工学、マイクロエンジニアリング、航空宇宙工学の機械系3専攻を横断する2講座を開設する。特定の分野に限定する寄付講座が一般的な中、今回は3専攻に対して総合的な支援を行うほか、給付型奨学金制度の設立などにも充てる。
一方、京都工繊大では加工設備の先進化と充実を図るほか、学生の海外チャレンジ支援、学生と教員のものづくり系共同プロジェクトも推進して、実践的学びの場を創出する。
橋本進会長兼最高経営責任者(CEO)は「日本の技術発展が減速し、中国の追い上げを痛感している。企業も学生らを支援する義務があり、遅れだしている技術力をもう一度高めるチャンスだ」と、意義を語る。将来を担う若手人材の育成を進め、日本のモノづくり力復権を目指す。