-
業種・地域から探す
中小企業の技術を集結 町工場見本市 開催
地域サプライチェーン形成
-
前回の町工場見本市。葛飾区内だけでなく近隣の台東区、墨田区、江東区などの企業も出展するのが特徴
支え合う製造業 連携の輪広がる
葛飾区内にモノづくり企業が多く生まれたのは大正時代から。玩具メーカーをはじめとした近代的な大工場を持った会社が次々と創業し、部品・部材を納める取引先企業が集積するなどモノづくりの街として栄えた。
太平洋戦争の空襲で近隣地域に比べ被害が少なかったこともあり、台東区や墨田区などからの移転も多く、戦後は玩具、金属、機械など幅広い業種で発展を遂げることになった。
ゴム関連や金属加工など本来はライバル関係にあるメーカー同士が、協力し合って仕事に取り組む同業者の組合が生まれたほか、異業種のグループも数多く発足。厳しい経営環境下でも開発や調達で支え合うといった連携の輪が広がっている。
区内の工場数は東京23区の中で大田区、墨田区、足立区に次ぐ第4位。その大半を金属プレス、機械部品、粉末冶金製品などを作る従業員6人以下の小規模工場が占めている。
それぞれの規模は小さいながら、幅広い業種のメーカーがそろっているため、地域全体で一つのサプライチェーンを形成。日本の製造業の根底を支えている。
さらに、多様化する顧客ニーズに対応した多品種少量生産が問われる中、東京という巨大なマーケット近くにあって、機動力をもった部品供給で即応可能な葛飾区の町工場には、これまで以上の優位性が期待されている。
ただ、脱炭素、生産性向上のためのデジタル化、物流問題への対応、商取引の多様化などモノづくりを取り巻く環境はここ数年で大きく変化。世界の産業・経済の変化をにらみながら、葛飾区のモノづくり企業が得意とする製品、技術の魅力を区内外にアピールする必要性が高まっている。
-
第10回町工場見本市2024では産学連携による最新の成果を発表する(前回の見本市)
第10回町工場見本市2024
東京都葛飾区は東京商工会議所葛飾支部と共催で「第10回町工場見本市2024」を2月15、16の両日に東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催する。テーマは「中小にしかできない『技術(こと)』がある―モノづくりの見本市―」。開催時間は10―17時(15日は16時半まで)。
葛飾区内はもちろん近隣の台東区、墨田区、江東区なども合わせ、機械・機器、金属加工、ゴム、プラスチック、ガラス、皮革、紙・印刷、メッキなどの業種から74社(1月25日時点)が出展し、得意とする製品や技術を展示する。
葛飾ブランド「葛飾町工場物語」のコーナーでは、23年度に新たに認定を受けた企業の製品などを紹介する。
特別企画として、葛飾区内にも拠点がある東京理科大学との産学連携による最新の成果を発表。他地域連携の「START UPコーナー」では、スタートアップ企業を支援する団体と各団体に所属するスタートアップ企業などを特別招待し、各地域の取り組みを紹介する。展示会初日の模様は出展企業へのインタビューと合わせ、動画配信サイト「YouTube」でライブ配信する。
15日は東京大学大学院経済学研究科ものづくり経営研究センターの藤本隆宏センター長が「30年ぶりに『生産性の時代』に入った地域経済」をテーマに講演する。また松山工業(東京都世田谷区)の鵜久森洋生社長がモデレーターとなって、東京、静岡、大阪の企業支援機関の担当者3名が意見を交わすパネルディスカッション「未来を創るコミュニティが町工場に求めていること」を開く。
16日はハタノ製作所(大田区)の波田野哲二代表がモデレーターとなり、松浦製作所(大田区)の色川泰広氏、Creative Works(江戸川区)の宮本卓代表取締役、扶桑(葛飾区)の富田成昭代表取締役のパネリストが「ちいさな町工場の技術と魅力の『発信』を考える」をテーマに議論する。同日にはアーティストとして活動する明和電機代表取締役の土佐信道氏が「明和電機 会社説明会」を開く。
葛飾町工場物語 「未来を照らす技」全国に発信
-
「葛飾町工場物語」の表紙
葛飾区の町工場から生み出されるえりすぐりの製品・部品・技術の優位性を全国に発信するのが、2007年度から続く「葛飾町工場物語」だ。申請のあった製品・技術を葛飾区や東京商工会議所葛飾支部が審査して「未来を照らす技」として認定。会社や製品の概要にとどまらず、開発・製造の背景やエピソードなどを交えながら、ストーリー性を豊かに漫画や紹介記事にまとめ、区内外にアピールする、全国でも珍しい地域ブランド発信事業だ。
23年度に認定されたのは五つ。丸彰の「ブリキ玩具」、愛和モールド工業の「スプリングブレーキシステム」、京葉特殊工具の「超硬合金工具の研磨加工技術」、山崎精工の「金属挽物の精密加工技術」、扶桑ゴム工業の「卓球ラバー」。認定製品・技術の内容は、町工場物語の冊子にまとめて紹介するほか、内容は「Amazon」の「Kindle」で無料ダウンロードできるなど、区内外に向けた情報発信で葛飾のモノづくりの強さをアピールする。