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葛飾区産業界特集
中小企業の技術を集結
産学公連携で製品開発/“知的”筋肉トレーニング装置
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産学公連携で開発したトレーニング装置の試作機
葛飾区は産学公連携事業にも積極的に取り組んでいる。区内にキャンパスがある東京理科大学と、カインズ(搬送機器・カーAV関連機器など製造)、中野製作所(工業用ゴム製品製造)、ミヨシ(射出成形金型製作)、ラヤマパック(プラスチック加工)の区内4社とともに、トレーニング装置「WING PROTO 1(ウイングプロトワン)」を開発した。現在は商品化に向けてブラッシュアップを進めている段階だ。
開発したトレーニング装置は、アスリートから高齢者まで、一人ひとりの筋力に合わせた30種目以上の運動ができるのが特徴。従来のトレーニング装置では、重りを付け替えて荷重を調整する必要があるが、同装置はモーターにより負荷を制御するため、荷重の調整が容易になる。使用者の安全性確保のため、自動停止装置や緊急停止装置も備えている。
産学公連携を始めたのは2021年度。東京理科大との連携に関心のある区内企業を公募し、22年度には公募で集まった区内4社のモノづくり企業とともに研究開発テーマの検討を始めた。近年の健康志向の高まりや、厚生労働省が23年11月にまとめた「健康づくりのための身体活動・運動ガイド」で、個人差を踏まえて強度や量を調整し、可能な運動から取り組むよう推奨していることから、東京理科大工学部機械工学科の橋本卓弥准教授の研究室が開発中の同装置の社会実装を目指すことになった。
葛飾区は今回、補助率4分の3で400万円の補助金を支出したほか、アドバイザーの派遣や開発の進捗管理を担う体制を確立した。単純に金を出すだけでなく、人も提供する支援を初めて実施したのが特徴だ。
今後は小型・軽量化を進め、信頼性を向上させるほか、使用者の体調に合わせた荷重の自動調整機能や、筋力を自動で測定する機能を整備する。トレーニング装置そのものが個々人に最適な運動を“知的”に提案し、アスリートから高齢者までが目的に応じた運動を設定できる装置を目指す。
第11回 町工場見本市/中小製造業の製品・技術 広くPR
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東京国際フォーラムで開いた前回の町工場見本市
葛飾区が東京23区の中で際立っているのは、区主催の産業展示会「町工場見本市」を、区外の東京国際フォーラム(東京都千代田区)などで開いてきた点にある。葛飾区内の中小製造業が生み出した製品・技術を、大企業が集積する東京都心で広くPRし、販路を開拓・拡大するためだ。区内で毎年開く「葛飾区産業フェア」は昨年秋で40回目を迎えたが、「町工場見本市」は1月29日ー31日に第11回目を開く。
「第11回町工場見本市」は、東京ビッグサイト(同江東区)で行われる「ENEX2025 第49回地球環境とエネルギーの調和展」の併設展として開く。東京国際フォーラムが長期修繕工事に入ったためで、これまでの独立した中規模展示会から、さまざまな展示会が集まった大規模展示会に移行することで、一層の集客力向上と商談件数アップが期待できる。
「町工場見本市」の1小間当たりの出展料は、区内企業が6万円、区外企業でも13万円と、ほかの展示会と比べて低めに設定されている。区商工振興課の渡辺裕淳工業振興係長は同見本市を一般の展示会の入門編と位置付け「展示会で何をどうすればいいかわからない中小企業に積極的に利用してほしい」と話す。
24年は51社が出展し、約2000人が来場した。交通の便が良い東京国際フォーラムで開催することで、興味を持った人が気軽に足を運びやすくなり、「予想以上に成約に結びつくケースが多かった」と渡辺係長は振り返る。
初めて東京ビッグサイトで開く今回は、41社が出展する。同時に開催される14展示会を含む全体の来場者数は約4万7000人を見込んでおり、さらなる販路開拓につなげる。
選りすぐりの製品・技術 ストーリー漫画で区内外に発信「葛飾町工場物語」
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葛飾町工場物語の表紙
葛飾区は区内町工場の高い技術や製品の精巧さを一般消費者に伝えるため、選りすぐりの製品・部品・技術を葛飾ブランド「葛飾町工場物語」として認定している。サッカー漫画『キャプテン翼』の作者・高橋陽一さんの出身地が葛飾区であることにちなみ、会社や製品概要、開発・製造の背景やエピソードをストーリー漫画で区内外に発信している。
葛飾ブランド認定/展示会などに無料出展 販路開拓の交流機会提供
認定されると、「葛飾町工場物語」のストーリー漫画集に掲載され、メディアへの広報や公式ホームページを通じて広く情報発信できる。「葛飾町工場物語」のロゴマークの使用も認められる。「国際雑貨EXPO」「町工場見本市」「葛飾区産業フェア」などへの無料出展や、認定企業同士の交流会に参加できるなど、ビジネスチャンスを広げる機会も提供される。
認定のための審査は、葛飾区や東京商工会議所葛飾支部が行う。①葛飾区内に主たる事業所を有する製造事業者が国内で製造している②認定時に製造販売・受注が可能③十分な安全性を有している―の3項目を満たした製品や技術が応募対象となる。07年度に開始し、24年度には合計認定件数が103件と100件の大台を超えた。
23年度までは区内の製造拠点で製造している事業者のみを応募対象としていた。しかし24年度からは、区外(国内に限る)に製造部門を移転した事業者であっても応募申請を可能にした。
この結果、24年度はニューロング工業(工場は福島県喜多方市)の「紙袋の製造に用いる製袋機」、オプトゲート(同埼玉県三郷市)の「光ファイバー断線検査機」、磯村産業の「金属板の精密加工技術」、アオキスイーパーの「熱溶着チャンネルブラシ『エコブラシ』」、大塚製作所(同茨城県守谷市)の「大塚式縫製技術」、ラボシステムの「無縫製ニット製造技術」、オビツ製作所の「ソフトビニール製品の加工技術」と、七つの製品・技術が認定された。
内容は紙での配布のほか、「Amazon」の「Kindle」で無料ダウンロードも可能だ。