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関西発―次世代産業への取り組み(4) 脱炭素・環境配慮を下支え
ヤンマーエネルギーシステム/水素パッケージ商品提案
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9月1日に開設した実証施設「ヤンマークリーンエナジーサイト」(岡山市)
ヤンマーエネルギーシステム(兵庫県尼崎市、山下宏治社長)は、水素関連のエネルギーシステムの研究開発に力を注いでいる。このほど、同社の岡山試験センター(岡山市)内に専用の実証施設を開設した。設備の検証を行うとともに、脱炭素に興味のある官公庁や病院、自治体、企業などに広く公開し、顧客の要望に合わせたパッケージ商品の提案に力を入れていく方針だ。
敷地面積約1000平方メートル内には、水素製造装置や水素タンクなどの水素貯蔵設備、ドイツ2G社製の水素エンジンコージェネレーション(熱電併給)システム、水素混焼のコージェネレーションシステム、水素燃料電池発電システムなどが並ぶ。
水素燃料電池発電システムは、2024年度に商品化を予定しており、「脱炭素の機運が高まる中、水素需要をいち早く取り込んでいきたい」(山下社長)狙いがある。
今後、これらのシステムを組み合わせ、パッケージ商品としての販売を始める。同社のエネルギーマネジメントシステムを活用することで、熱と電気の需要に合わせて発電を制御し、二酸化炭素(CO2)排出量を最小化できる提案なども進める考えだ。
岩谷産業/燃料電池船 国内初の旅客運航へ
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大阪・関西万博への移動手段となる水素燃料電池船
岩谷産業が関西電力や名村造船所などと協力し開発を進めている燃料電池船が、2025年に国内で初めて旅客運航を開始する。中之島西端近くの中之島ゲートからユニバーサルシティポートを経由、大阪・関西万博会場の夢洲(ゆめしま)をつなぐ。さらに万博では海上の「動くパビリオン」としても、水素社会の可能性をアピールする。
24年5月に完成する燃料電池船は全長30メートルで定員150人。時速およそ20キロメートルで、中之島ゲートと夢洲を約40分で結ぶ。建造は名村造船所が受注し、アルミニウム合金製船舶に特化する瀬戸内クラフト(広島県尾道市)で開始。フランスを拠点にカーデザイナーとして活躍する山本卓身氏が手がけたデザインは近未来を印象づける。
燃料電池と二次電池を搭載し、水素充填だけでなく二次電池に直接充電することも可能だ。フル充填、フル充電で130キロメートルの運航が可能という。
岩谷産業では7月に燃料電池線の特設サイトを開設した。今後コンテンツを充実させ、万博に向けた機運を高めていく。
同社は年間1億2000万立方メートルの液体水素を製造するなど水素産業をリードしてきた。豪州でのグリーン水素プロジェクトに参画するなど、水素社会実現に向けた取組を加速している。
東洋紡/プラスチックと共生社会実現
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包装や工業用途などに活用されるフィルム原反
東洋紡で売上高の約4割を占めるフィルム事業。プラスチックの特性を生かし食品、日用品などの包装用途や工業用途に活用している。プラスチックとの共生社会実現を目指しており、フィルム事業全体でバイオマス原料やリサイクル原料、プラスチックの減容化など環境対応型のグリーン化したプラスチックの比率を2030年に60%、50年に100%を目指している。
東洋紡は環境に配慮したフィルムに早くから携わっている。工業向けでは1991年からペットボトルのリサイクル樹脂を使用したフィルムの提案を開始。10年ごろからは食品用途にもリサイクル樹脂を使用したフィルムの提案を始めた。
食品包装用途でリサイクル樹脂を使ったポリエステルフィルムを国内で生産・販売しているのは同社のみという。
また、従来より薄肉化したフィルムも10年ごろから市場投入。ペットボトルに巻いて使用する包装用フィルムでは12マイクロメートル(マイクロは100万分の1)、ポリエステル系の熱収縮フィルムでは20マイクロメートルと薄肉化したフィルムの製造が可能だ。
環境配慮型フィルムはここ数年で需要が増え始め、特に食品や日用品に使用する包装フィルムの売り上げの2割が環境対応型。工業用でも薄肉化したフィルム製品もあり、今後も環境対応型製品の拡販に力を入れていく。