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多様化する今に挑む CASE2
神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)/未来の化学プラントでサステナブルな社会を実現
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デスクトップ化学プラント実験機(左からセンサユニット、反応ユニット<マイクロ流体デバイス>、送液ユニット)
デスクトッププラント実用化・事業化目指す
神奈川県では、2012年3月に策定した総合計画「かながわグランドデザイン基本構想」の基本理念で、「いのち輝く神奈川」を掲げ、医療をはじめ、環境、エネルギー、農業など県民の生活のすべてにわたって安全・安心を確保し、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向け施策を展開している。神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)は、こうした政策課題を受け、県内産業や経済にインパクトのあるイノベーション創出に貢献すべく、23年4月から「マイクロ流体化学プラント開発プロジェクト」を立ち上げ、デスクトップサイズの化学プラントの実用化・事業化に向けた共同研究開発を推進している。
同プロジェクトでは、KISTECの前身である旧神奈川科学技術アカデミー(KAST)の北森プロジェクト(1998―2003年)・マイクロ化学グループ(03―09年)から積み重ねてきた経験を活用し、世界で初めてマイクロ流体デバイスを多数配列した「デスクトップ化学プラント」実現を目指す。特に、ダイセルおよび台湾・国立清華大学と進める国際産学公共同プロジェクトは、送液制御など高度なマイクロ流体技術を実装し、直列に繋いだマイクロ流体デバイスを大量に並列化し大規模集積化を目指す。巨大な化学プラントを、マイクロ流体デバイスによって小型化し、省スペースで省エネルギーな未来の化学プラントとして、二酸化炭素排出量の削減などにも貢献していく。
エレックス工業/デジタル型マイクロ波放射計でニーズに応える
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5月をめどに投入する予定のデジタル型のマイクロ波放射計
気象・農業・漁業などリモートセンシング向け
エレックス工業(川崎市高津区)は市販用として開発するデジタル型のマイクロ波放射計を2024年5月めどに投入する。物体が放出する電磁波から得た輝度温度をもとに水蒸気量、風速、塩分濃度などを推測。気候変動が加速する中、リモートセンシングに活用すれば気象、農業、漁業、防災など高精度化が求められる多様なニーズに応えられる。
同放射計の強みはリアルタイム性、広帯域化、高分解能化。大気中の水蒸気量を高精度に捉えれば線状降水帯の早期発生予報につながる。砕氷船の航行支援や積雪・凍結が課題となる冬期に人手を介することなく路面を監視できる可能性がある。同社はこうした製品事業を担う新たな人材の採用に動いている。
FACTORIZE/スマホで日報を自動作成・工程管理
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作業ごとに設けたQRコードをスマホで読み取る
クラウドシステム「軽減くん」提供
中小製造業から誕生したFACTORIZE(神奈川県横須賀市)は人が関与する業務を工程ごとに2次元コード(QRコード)化し、スマートフォンで読み取ることでデータ化するクラウドシステム「軽減くん」を提供している。日報を自動的に作成し、クラウド管理のためリアルタイムでデータの確認・集計・分析ができる。
業務終了時には結果(作業量や不良品数など)を入力し、その場でコメントも付けて管理者に伝えられる。現場が“見える化”され、トラブルへの迅速な対応や、スピーディーな改善を可能にする。
スマートフォンが使えれば導入できる手軽なSaaS(サービスとしてのソフトウエア)でペーパーレス化も推進、毎日100枚以上あった紙の日報がゼロになった導入事例もある。
日本耐熱線工業/きめ細かな製品開発でシェア拡大
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500度C雰囲気下で使用可能な耐熱絶縁電線各種
電熱ヒーター、工業用から宇宙まで用途広範
日本耐熱線工業(川崎市中原区)は、国内唯一の耐熱絶縁電線専業メーカーである。
被覆熱電対・補償導線や工業用ヒーターリード線のほか、高温機器周辺配線や炉内配線、プラント配線用電線など、扱う品目は多岐にわたる。
独自のセラミックスフェルティング技術で、1000度Cの高温にも耐えることができるアルミナファイバー絶縁電線を開発。超耐熱電線「アセコート」として発売以来、業界をリードしてきた。
同社の強みは、専業メーカーならではのきめ細かさだ。工業用ヒーター、半導体、液晶、プラズマ分野でシェアを拡大し、製品の応用範囲は工業用から宇宙まで広がっている。
スチールプランテック/脱炭素社会へ独自技術・製品展開
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環境対応型高効率アーク炉「ECOARC―light™」
環境対応型高効率アーク炉など稼働
スチールプランテック(横浜市港北区)が脱炭素社会に向け、独自技術・製品を展開している。主力の電炉プラントでは、中部鋼鈑向けの環境対応型高効率アーク炉「ECOARC―FIT(エコアークフィット)」を施工中で、2025年度には大阪製鉄向けの「ECOARC―light(エコアークライト)」の稼働を見込む。また、東芝三菱電機産業システム(TMEIC、東京都中央区)と共同で電力系統に影響を与える電圧変動を抑える電気炉向け新電源システム「CleanArc(クリーンアーク)」を開発した。
一方、国内で高シェアを持つ石灰焼成炉では、二酸化炭素(CO2)を高濃度で回収するプロセス研究に着手し、実証実験に向けて開発が進んでいる。