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人材育成で未来へ導く
建学の精神をYOKOHAMAの地で/神奈川大学
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学長 小熊 誠氏
神奈川大学は2028年の創立100周年に向け、学部の新設・再編やキャンパス開設など大規模な改革を推し進めてきた。23年度の湘南ひらつかキャンパスから横浜キャンパスへの理学部移転に併せ、同学部と工学部の既存学科を発展的に改組して化学生命学部と情報学部を新設し、ミクロから宇宙まで幅広い学びを実現した。文系・理工系11学部を備えた総合大学の強みを生かし、他学部の授業の受講などで学びの範囲を大きく広げている。「YOKOHAMA」の地に根差す横浜キャンパス、21年度に開設したみなとみらいキャンパスを舞台に日本を、そして世界を学び、グローバルな視野から論理的、科学的に思考できる人材育成に取り組む。
アカデミックとソーシャル 教育研究の両輪/「化学生命学部」「情報学部」を新設
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みなとみらいキャンパスでは、学生が街全体をキャンパスとして学んでいる
神奈川大学は伝統を大切にしながら、新しい社会に対応する教育を開拓している。小熊誠学長は「本学の建学の精神である『質実剛健』『積極進取』『中正堅実』を現代的に捉え直し、未来を創っていく必要がある」と言う。そのためにはハードの改革だけではなく、中身をどのように変えていくかがより一層重要になる。
ハード面では20年度に国際日本学部、22年度に建築学部を新設しており、23年度までに11学部22学科の組織体制が整った。横浜キャンパスには理工系5学部と法学部、経済学部、人間科学部がある。23年度新設の化学生命学部と情報学部を含め、横浜キャンパスに医歯薬系以外のすべての理工系分野が集結。一方、みなとみらいキャンパスには国際日本学部、外国語学部と経営学部のグローバル系3学部が集まる。
みなとみらいキャンパスがある横浜みなとみらい21地区には世界有数の企業や官公庁のほか、美術館や劇場など文化施設も多い。この環境を生かし、学生は“街ごとキャンパス”として地域の企業・施設などと連携した課題解決型学習(PBL)を通じ、実践的能力を育んでいる。
このキャンパスで地域社会との連携拠点となっているのが「社会連携センター」だ。同センターは自治体、企業などの団体、小中高校、他大学、地域住民などあらゆるステークホルダーと連携する総合窓口。総合大学の教育・研究をもとに地域課題解決に取り組み、未来社会を担う学生の育成や社会人に向けた学びの場を構築することで、開かれた大学づくりの要となっている。
また、神奈川大学は22年度以降の入学者を対象に「共通教養データサイエンスプログラム」を開設するなど、数理・データサイエンス・人工知能(AI)教育を推進している。全学共通科目として履修できる同プログラムでは、学修した数理・データサイエンス・AIに関する知識・技能をもとに、人間中心の適切な判断ができ、日常生活などで活用できる人材の育成を目指す。文部科学省の「数理・データサイエンス・AI教育プラグラム認定制度(リテラシーレベル)」の認定を受けており、さらに「同(応用基礎レベル)」での認定を目指して準備を進めている。
創立100周年とその先の未来を見据え、小熊学長は「アカデミックな教育研究、ソーシャルな教育研究の両輪がバランスよく回ってこそ、はじめて建学の精神を踏まえた真の実学が実現する」と期待を膨らませる。
多様な創造力の根源 文化・芸術分野に助成/小笠原敏晶記念財団
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理事長 小笠原 三四郎氏
公益財団法人小笠原敏晶記念財団は長年の実績がある科学技術分野の助成事業を踏まえ、多様な創造力の根源となる文化・芸術分野の助成に乗り出している。科学技術分野の深耕を図りつつ、文化・芸術分野まで活動領域を広げることで世の中に新しい価値を生み出す人たちを応援し、未来を切り開いていく狙いがある。リスクを恐れず、常識を打ち破り、社会に人間らしい豊かさをもたらすこと뗙。そこに使命を見いだし、意欲を注ごうとする創造的な熱きチャレンジャーに寄り添い、支援することでイノベーション創出を後押しする。
支援通じ健全で豊かな社会づくりに貢献/科学技術分野、スタートアップ助成強化
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助成採択者が集い「2023年科学技術と文化・芸術分野の交流会」を開催
小笠原敏晶財団はニフコ創業者の小笠原敏晶氏によって1986年に「小笠原科学技術振興財団」として設立され、30年余り科学技術分野で助成事業を行い、2020年に改称して文化・芸術分野の助成を始めた。
科学技術助成は設立当初からの高分子分野における新素材・加工技術・新機能に関する研究開発課題を対象とした「一般研究助成」に加え、15年には起業家の公益性の高い新製品・新技術開発プロジェクト支援を目的として、インキュベーションとベンチャーを組み合わせた「インキュベンチャー助成」<造語>を開始。24年度は高等専門学校を含む“若いチカラ”によるスタートアップ支援を強化する。また、研究者が成果を発表する国際研究集会への参加渡航費補助の「国際出張助成」、国内における国際研究集会開催を補助する「国際会議開催助成」も実施している。
文化・芸術助成では4年前、日本の現代美術分野における新型コロナウイルス感染拡大の影響に対応するため「新型コロナウイルス特別助成」を立ち上げた。20年度から22年度の第3次まで、現代美術の担い手に対する緊急支援に始まり、創造・表現活動のエコシステムが維持されるための環境整備、そしてコロナ禍を通して得られた知見を基に継続的に取り組むプロジェクトへの支援で最終フェーズを迎えている。
その一方、日本の現代美術の発展と国際的なプレゼンス向上を目指し、調査・研究活動やアーティストによる制作活動のためのリサーチを支援する「調査・研究等への助成(現代美術分野)」、関連文献を英訳して海外へ紹介する「現代美術の翻訳助成」を制度化。国内で開催する現代美術関連の会議費用を補助する「交流助成」や、海外で開催される会議を含め参加するための「渡航・旅費等の助成」も行っている。
また、緊急対応で1月の能登半島地震によって被災した現代美術・伝統工芸や両分野にかかわる個人や団体を資金支援する「令和6年能登半島地震緊急助成」を実施。影響が深刻なため24年度も第2次、必要に応じ第3次の助成措置を講じる計画だ。
小笠原三四郎理事長は助成活動について「文化・芸術分野まで助成対象を広げた支援を通じて、心豊かな社会の実現の一助となることを期待している。多彩な才能との相互交流を通じて、健全で豊かな社会づくりに貢献したい」と話す。コロナ禍が明けた昨秋には助成対象にする科学技術および文化・芸術の両分野の採択者が集う初めてのイベント「2023年科学技術と文化・芸術分野の交流会」を開催。これまで接点がなかった両分野の採択者にコラボレーションの機会を提供し、新たなイノベーションを創出する狙いだ。両分野の採択者と財団関係者ら約100人が参加した。