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神奈川県特集(2024年3月)
スマートシティー・EV化で描く未来
スマートシティーはIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)といった先端技術を駆使してエネルギーの使い方やモビリティー、物流などのインフラを効率化し、社会生活をより快適にする。日本は過去に公害や都市機能の集中による交通渋滞や事故の多発、災害などの課題に直面し、乗り越えてきた。関内・伊勢佐木町地区と横浜駅周辺地区に都市機能が二分されてきた横浜市において、みなとみらい21(MM21)地区は離れていた2地区を結びつける形で開発・整備が進んだ186ヘクタールもの都市フィールド。これまでの経験を踏まえ、広大なキャンバスにスマートシティーが形づくられる。
カーシェア・自動運転 広がる可能性
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みなとみらい21地区をバックにするEV(左)、燃料電池車(中、FCV)、プラグインハイブリッド車(右、PHEV)<提供、横浜市>
スマートシティーは国家的なプロジェクトだ。内閣府は「ICT(情報通信技術)等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域であり、ソサエティー5・0の先行的な実現の場」と定義する。
資源エネルギー庁は2010年、日本型スマートシティーを実現するための「次世代エネルギー・社会システム実証地域」として、横浜市、愛知県豊田市、京都府の「けいはんな学研都市」、北九州市の4地域を選定。横浜市ではMM21地区などで太陽光発電の大規模導入や環境負荷の少ないスマートハウス・ビルの建設などが進められた。
モビリティー分野ではバンダイナムコゲームス(現バンダイナムコエンターテインメント)とNECが11年1月から3月まで、MM21地区を舞台に電気自動車(EV)「リーフ」を使用し“走行情報が見える”カーシェアリング実験を実施。EVの充電レベルや位置情報をセンターからネットワークを介して管理し、利用者が状態を把握して活用できる環境づくりに取り組んだ。
横浜MM21地区などで実証進む/EV急速充電器 公道上の設置加速
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全国で初めて公道上にトラック用EV充電器を設置 -
充電スペースを示す標識
一方、横浜市と日産自動車は12年にMM21地区を中心とした短距離移動を前提に、超小型EV「日産ニューモビリティコンセプト」を時間制限付きで貸し出す実証実験を開始。その後も超小型EVに「チョイモビ ヨコハマ」の愛称を付けワンウェイ型カーシェアリングや、観光客を想定したラウンドトリップ型カーシェアリングなどを実施し、モビリティーとして利活用を進めた。
また、日産はディー・エヌ・エー(DeNA)と共同で18年、MM21地区で自動運転機能を搭載した「リーフ」による新交通サービスの実証実験を行った。スマートフォンの専用アプリで目的地の設定や配車、料金の支払いができる手軽さから、サービスを「イージーライド」とネーミング。翌19年に行った2回目の実証実験ではリストの中から行きたい場所を選べるようにするなど観光ユースも想定。MM21地区におけるモビリティーの可能性を広げた。
EV普及のカギとなるのは充電インフラの整備だ。横浜市は電力会社や自動車メーカーが設立したe―Mobility Power(東京都港区)と「横浜市内のEV普及促進に向けた連携協定」を結び21年、郊外の青葉区で全国初となる公道上の急速充電器設置に踏み切り、各方面から注目を集めた。2カ所目の公道設置も郊外エリアの都筑区だったが23年12月、3カ所目の設置場所となったのがMM21地区。しかも、50キロワットの急速充電器に加え、まだ普及初期にあるEVトラックを想定し、国内では最大級150キロワット出力の超急速充電器を併設した。
都市機能の維持には物流が不可欠。産業社会の動脈だ。長距離幹線輸送は大型トラックを環境負荷が少ない鉄道や船舶に切り替えるモーダルシフトの取り組みが進むが、ラストワンマイル(目的地までの最終区間)の配送を担うのは小回りが利く中・小型トラック。運送業は車両の稼働率が収益に直結するだけに、インフラとして短時間で“満タン”にできる超急速充電器の整備が待望される。
政府はスマートシティーをインフラ輸出のメニューとしても位置づける。19年には東南アジア諸国へ日本の都市開発技術を移転することを目的に「日ASEANスマートシティ・ネットワーク官民協議会」(JASCA)を設立し、横浜で国際会議が開かれた。
電装品の性能・安全性を評価
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に向け、電源・電子負荷装置が自動車の電動化を推し進める各種電装品開発や、性能評価で活躍している。車載機器は今やほとんどの機能が電子化され、先進運転支援システム(ADAS)の標準化も進む。EVに至っては“走る電気製品”ともいえる。
自動車は命を預かる乗り物だけに、各種電装品が電源変動というストレスに対して影響されないことを確認する耐性試験が必要となる。国際標準化機構(ISO)規格に加え、各自動車メーカーが独自に電源変動試験の規格を設けており、サプライヤーに厳格な対応が求められている。電装品が追加されると、新たな電源変動パターンでの試験が必要となり、サプライヤーの電源変動試験ニーズは高まる一方だ。
菊水電子工業 電源機器を拡充/高電圧・大容量化 電源変動試験ニーズ高まる
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回生電子負荷装置「PXZシリーズ」は10台まで並列運転が可能
菊水電子工業は2月上旬、3U(1Uは高さ44・5ミリメートル)サイズの筐体で定格電力20キロワットの回生電子負荷装置「PXZシリーズ」を発売した。2023年4月に同社として初めて製品化した双方向直流電源「PXBシリーズ」の姉妹機になり、同年12月発売の大容量直流電源「PXTシリーズ」と併せて“3U・20キロワット”の電源機器ラインアップが出そろった。
最大動作電圧1500ボルトで車載電装品の高電圧・大容量化に対応。最大10台を接続して、容量200キロワットで並列運転できる特長は共通だ。動作モードは定電流(CC)、定抵抗(CR)、定電圧(CV)、定電力(CP)に加え、任意の電圧・電流値をCC、CVの動作モードごとに設定できるIV特性機能がある。動作電圧範囲10―500ボルトの「PXZ20K―500」、同30―1500ボルトの「PXZ―20K―1500」の2モデルで、消費税抜き価格はいずれも300万円。
高性能スイッチング技術により回生効率は負荷電力6キロワット以上で90%以上(最高約95%)。回生した電力を事業所内で消費できるだけではなく、回生効率に準じて放熱量が減るため設置環境における空調コストの大幅な削減も期待できる。
菊水電子工業は自動車産業にとどまらず建機・農機、航空機産業などにも電源機器や評価試験システムを納入しており、スマートシティーへの歩みを支えている。