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モノづくり発展に貢献 技術力・市場性で評価
十大新製品賞は日刊工業新聞社が1958年に創設。各製品は独創性、性能の秀逸性、産業水準向上への貢献性、産業・社会発展の先導性などの観点で審査される。今回は応募製品の中から特に優れた製品に贈られる増田賞をはじめとする19の製品が各賞に輝いた。いずれもが産業技術を通じて社会の発展に貢献する製品として、今後の活躍が期待されている。
【増田賞】
川崎重工業の「ドライ・水素専焼 1・8MW級ガスタービンコージェネレーションシステム PUC17MMX」はドライ方式で水素専焼できる世界初のシステム。水噴射せずにNOxを低減する燃焼方法により、規制値を超えずに安定運用できる。水素を体積比50―100%の任意の割合で、天然ガスとの混焼運転にも対応する。
【本賞】
アイダエンジニアリングの「EV駆動用モーターコア生産向け 高速精密プレスライン」はプレス機だけでなく周辺装置のモーターも一括制御することなどで業界トップ水準となる毎分130メートルの送り速度を実現した。ラインの監視制御システム(SCADA)も開発。デジタル変革(DX)によるライン全体の効率化に取り組む。
アマダの「サーボベンディングマシン『EGB―e』シリーズ」は音声操作やガイダンス機能、突き当てモニターなどを搭載し、未経験者でも高精度な板金加工を容易にできる。顔認証機能を搭載した数値制御装置「AMNC 4ie」や新サーボシステムを導入し、人手不足や環境負荷低減などの社会課題の解決に貢献する。
オークマの「社会課題を解決するグリーンスマートマシン立形マシニングセンタ MB―VⅡシリーズ」は機械が自律的に高精度を安定維持する知能化技術により、暖機運転や寸法確認、工具補正など精度を確保する人手の作業を削減。油空圧動作を完全電動化し、無人工場に求められる高精度な遠隔監視や状態認識を実現した。
コマツ産機の「Water Laser:TWCL/TWC」は水中での形状切断が可能なファイバーレーザー加工機。レーザー発振器の出力は6キロワット。レーザー安全クラス1を実現しマシンカバーを不要とした。水中で冷却しながら切断することで製品間のピッチを縮められる。熱による歪みも抑えられ、不良率低減も見込める。
島津製作所の「ガスクロマトグラフ『Brevis GC―2050』」は小型ながら2種類のサンプルを同時に分析できる。装置は試験開始に適した状態を自動設定する。分析操作や装置状態の確認作業を手元のタブレット端末などで確認できる機能を搭載し、初心者でも的確なメンテナンスや安定した分析結果の取得が可能だ。
清水建設の「環境配慮型コンクリート『SUSMICS―C』」は木質バイオマスを炭化した「バイオ炭」を混入することで、コンクリート構造物に炭素を貯留する環境配慮型コンクリート。強度は一般的なコンクリートと同等で、既存のコンクリート工場で製造できる。ポンプ圧送に適応する流動性があり、現場打ち施工が可能。
タダノの「フル電動ラフテレーンクレーン EVOLT eGR―250N」は1度のフル充電で平均的な1日のクレーン作業と走行が可能だ。充電時間は急速充電で約2時間半。独自開発の電動コントロールユニットが走行用、クレーン用、コンプレッサー用など、通常の電気自動車より多く搭載されるモーターを制御する。
ファナックの「FANUC αi―D series SERVO」は高い加工性能を実現するサーボシステムとしての高性能化に加え、小型化や省配線といった使いやすさも向上。モーターは防塵・防水保護等級IP67に標準対応。システム全体でのエネルギー損失を従来比約10%低減し、機械の省エネルギー化に寄与する。
三菱電機の「三菱電機 高効率同期リラクタンスモーターRF―SR形『MELSUSMO』」はモーター出力15キロワット以下で国内メーカー初となる産業用モーター国際高効率規格の最高レベル「IE5」を達成した。モーター効率は94・7%。回転子に永久磁石を使わない構造で、省資源化を実現。分解が容易なので保守性が高い。
レーザーテックの「高輝度EUVプラズマ光源『URASHIMA』」は極端紫外線(EUV)露光用マスクパターンの欠陥を高感度で検出するための光源。回路線幅7ナノメートル以下の微細プロセスに対応する。高速回転するルツボ内面の溶融スズにレーザーを照射する独自のレーザー生成プラズマ方式でEUV発光させる。
【日本力(にっぽんぶらんど)賞】
オムロンの「気象IoTセンサー ソラテナPro」は気温、湿度、気圧、雨量、風向、風速、照度の7項目を1分ごとに観測する気象観測機。小型・軽量で持ち運びやすく、簡単に設置できる。1時間雨量50ミリメートル、風速毎秒50メートルの観測が可能。IoT通信機能を内蔵し、観測機設置場所の気象情報をリアルタイムに把握できる。
日立製作所の「線形加速器システム OXRAY」はガントリー回転に加え、装置土台部分を水平方向にリング旋回させる2軸の回転運動を採用。多様な照射軌道を選べるので、正常な組織への照射を減らし、腫瘍に線量を集中できる。治療時間、照射回数、さらには通院回数を減らせるため、患者の生活の質向上に貢献する。
安川電機の「太陽光発電用パワーコンディショナ Enewell―SOL P3A 25kW」は系統側への電気の逆流防止に必要な自家消費機能を内蔵し、200ボルト級では最大級の出力25キロワットを実現した。密閉・外部ファンレス構造により重塩害地域への設置にも対応。メンテナンス工数の削減や保守費用の低減に貢献する。
【モノづくり賞】
SMCの「弾性フィンガ MH―X7654」は弾性体ラバーを採用したアタッチメント。加工対象物(ワーク)の形状にならい変形する。把持部の厚さは0・5ミリメートルで、狭ピッチで並ぶワークも把持できる。素材は食品向けはシリコーン、工業品向けはエチレン・プロピレンゴム。既存のグリッパー製品の多くに取り付け可能。
ナガセインテグレックスの「超精密門型成形平面研削盤SGD―3012・4012」は大型の金型や部品を高精度、高効率で加工する。チャック幅を1200ミリメートルと大きくした一方で、設置面積は独自設計手法「イグタープデザイン」で従来機の半分とした。砥石(といし)軸の回転や上下・前後動の速度、剛性を大幅に高めている。
不二越の「高速・高精度協働ロボット CMZ05」は高い安全性と優れた操作性を持ち、クラストップレベルの高速・高精度によって生産性向上に寄与する。「ロボット簡単ティーチングシステム Nachi Tablet TP」はロボットに不慣れな人でも使いこなせるような画面設計や分かりやすいガイドを実装した。
冨士ダイスの「高熱膨張ガラス成形用新硬質材料」は、金型に用いることで赤外線透過ガラスレンズを安定的に量産できる。熱膨張率がガラスと同程度なので、寸法変化量の差で生じるレンズの割れが防止され、生産効率を20%改善できる。原料にはタングステンやコバルトを使用しておらず、地政学リスクを受けにくい。
【中堅・中小企業賞】
相澤鐵工所の「全自動シャーリングシステム ARS―1020DA」は従来、厚さ6・5ミリメートルまでだった鋼板の全自動切断を同9ミリメートルまで対応。これまで、表面保護の油で密着した鋼板同士の分離が自動化の障害だった。鋼板を吸着するユニットを前後で独立させ、時間差を設けて吸引する機構を採用し、完全無人化を実現した。