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第58回 機械振興賞
機械産業技術の進歩・発展の促進
機械振興協会は「第58回(令和5年度)機械振興賞」11件を決定した。応募総数26件の中から、「研究開発」の業績で「経済産業大臣賞」1件、「中小企業庁長官賞」1件、「機械振興協会会長賞」4件、「審査委員長特別賞」1件、「奨励賞」1件を、「支援事業」の業績で「中小企業基盤整備機構理事長賞」1件、「奨励賞」2件を表彰する。表彰式は16日15時から東京・芝公園の東京プリンスホテルで開かれる。
機械振興賞は、「研究開発」については独創性、革新性、経済性に優れた機械工業技術に関わる研究開発と、その成果としての実用化によって新製品の製造、製品の品質・性能の改善や生産の合理化に顕著な業績を上げた企業・研究開発担当者が対象。「支援事業」では、支援効果、継続性に優れた支援事業によって機械産業技術に関わる中小企業が優れた成果を上げた支援機関と担当者が表彰の対象となる。
顕彰事業の沿革をたどると、1966年度創設の「機械振興協会賞」と、70年度創設の「中堅・中小企業機械開発賞」が元となっている。両事業は2003年度に「新機械振興賞」として統合され、18年度に「機械振興賞」に改称された。こうした経緯から、中小企業・小規模事業者における機械産業技術の進歩・発展の促進を重視・配慮した特徴的な運営が行われている。
ごあいさつ/機械振興協会 会長 釡 和明
創造と技術の進歩―成長の原動力
わが国経済は、半導体を代表とする活発な国内投資など、再び成長に向かう変革の時を迎えています。一方、間近に迫る労働の2024年問題をはじめ社会課題への対応は喫緊の要請です。
機械産業は課題解決と成長をけん引する存在として、産業経済の中核の役割を担ってきました。創造的な発想と技術の進歩は新たな市場の創出や生産性の向上を生み、経済社会の持続と発展の原動力になります。
当協会では、機械産業技術の進歩・発展に著しく寄与した企業や研究開発担当者および、中小企業の事業化につながる支援活動を「機械振興賞」として表彰しております。今年度は26件の応募をいただき、中島尚正東京大学名誉教授を委員長とする審査委員会で厳正に審査し、支援活動3件を含む11件の表彰を決定しました。
受賞者各位のこれまでのご尽力に深く敬意を表しますとともに、今後のますますのご発展と機械産業の進歩に寄与されますことを祈念いたします。また、ご後援、ご協力をいただきました関係各位に深く感謝の意を表します。
2024年度の募集は4月1日から5月31日まで行います。機械技術を活用した先進技術の開発、グリーン変革(GX)/デジタル変革(DX)対応、省力化、ヘルスケアなど社会課題への対応や、これらの事業支援を行っている団体など幅広いご応募をお待ちしています。
中小企業庁長官賞
魁半導体/プラズマによる自己組織化単分子表面改質技術と装置の開発
魁半導体は物体表面を親水化や撥水化、親油化、撥油化することを可能とする、プラズマを用いた自己組織化単分子膜を形成する技術を開発した。撥水技術では、スポイトなどで薬液を計量する際、スポイトへの液滴の回り込みを防ぐことができ、液滴の微細化や分量の安定化を図れる。撥水処理面の剝離などもないことから、液滴の高純度化が実現できる。
溶媒や触媒を使用せず、乾式で加工できることから、残留不純物の心配がなく、食品や化粧品、医薬品など広範な用途に採用可能である。さらに、単分子膜の組成などを細かくコントロールすることにより、ユーザーの要望に応じて付加価値の高いさまざまな対応ができる点が高く評価された。
機械振興協会会長賞
阪村ホットアート/バー材とビレット材の両方を使用できる熱間フォーマー
横型の鍛造機は金型面が縦方向になることから、直接、金型面に水をかけても水はけに問題が出にくく金型の冷却が早い。また、プレス動作に連動して材料の棒材を必要な長さに切断しながら加工することができ、縦型の鍛造機と比べて大幅な高速化が可能である。しかし、材料の切断時に発生するバリが製品の鍛造面に傷を付けることがあり、歯車のように鍛造面を残す部品には不向きであった。
この業績では、従来の棒材の予熱・供給装置に加え、切断済み材料(ビレット材)を予熱しながら同期供給する装置を別方向に設けることによって、世界で初めてバー材とビレット材の両対応とした点が評価された。
三菱電機・ヤマハ発動機/船速に依存せず正確に方位制御可能な操船システムの開発
ボートの舵(かじ)の効きは船速によって異なる。ボートの大きさや取り付けられる船外機の数もさまざまなので、これまで、自動操舵システムを組み込むためには制御装置を調整する必要があった。
この業績では、船外機が取り付けられる代表的な4種類のボートと船外機のセットに対し、周波数応答を解析して独自の制御理論を確立した。同制御理論ではボートの方位運動に関わる制御特性は船速の違いのみで決定でき、ボートの違いや船外機の数による差が小さいことを見いだした。どのようなボートに取り付けても初期調整不要の自動操舵(そうだ)システムを実現した点が評価された。
機械振興賞受賞者講演会 4月16日
機械振興協会は4月16日13時半から機械振興会館地下2階ホールで、「機械振興賞受賞者講演会 受賞者に学ぶ!技術者の成功要件」を実施する。ウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」を使用した配信も行う。優れた成功事例を周知し、機械工業技術の研究開発の促進を図る。
講師として経済産業大臣賞のトヨタ自動車、中小企業庁長官賞の魁半導体、機械振興協会会長賞の三菱電機・ヤマハ発動機などの担当者が登壇し、講演と意見交換を行う。聴講無料。定員は会場60人、ウェブ100人。詳細や申し込みは同協会ホームページへ。