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次世代自動車充電インフラ技術
次世代自動車と呼ばれる電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)は国連の持続可能な開発目標(SDGs)やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現を目指す上で、大きな役割を担っている。さらに、自動車本来の〝移動〟だけでなく、EV・PHVが搭載する大容量蓄電池を家庭やビルの電力システムの蓄電デバイスとして活用できる。こうした期待を寄せられる次世代自動車が広く普及するためには、充電インフラの整備が不可欠だ。
成長著しい 軽EV
次世代自動車振興センターの資料によると、2022年度のEV・PHV国内販売台数はEVが7万9952台、PHVが3万9861台、合計で11万9813台となった。21年度の5万2730台と比べ2倍以上の増加だ。特に軽EVは21年度比28倍以上の4万3812台と急成長を見せた。
22年度の販売台数が大きく伸び、22年度末の国内EV・PHV保有台数も43万6555台へと増大。自動車全体から見ればまだ少数だが、成長が加速している。
日本自動車工業会(自工会)の「2023年度乗用車市場動向調査」では、次世代自動車の中で、EVを購入検討順位で1位とした割合がこれまでの調査から継続的に上昇している。購入意欲の高まりの一方、懸念点として「車両価格」「航続距離」「充電時間」が挙げられている。
自宅への充電器設置はほとんどなく、非設置理由は「設置費用」と「設置スペース」。充電器設置希望場所は「ガソリンスタンド」「コンビニエンスストア」「大型商業施設」「高速道路のサービスエリア・パーキングエリア(SA・PA)」などだ。
充電設備の設置増が次世代自動車普及のカギとなっている。
V2H-新たな生活スタイル
EV、PHVが搭載する大容量の蓄電池は車両の動力源としてだけでなく、住宅やビルなどの電力供給源としても活用できる。V2H(ビークル・ツー・ホーム)、V2B(ビークル・ツー・ビルディング)は施設と車両の電力をトータルで運用するシステム。車を核とする新しいライフスタイルの提案だ。電力網のピークカット、平準化への貢献も期待できる。
補助金活用も有効
次世代自動車の普及を促進させるため、充電設備(急速充電・普通充電)、V2H充放電設備、外部給電器に対して導入促進補助金が設けられている。申請窓口は次世代自動車振興センターが担当する。23年度補正予算・24年度予算分については、8月19日に第2期分の交付申請の受け付けが開始された。
受付期間は急速充電設備が9月2日13時まで、普通充電設備は9月17日13時まで。また、V2H充放電設備、外部給電器の申請受け付けは9月30日までだが、先着順。この事業の詳細は同センターホームページ(https://www.cev-pc.or.jp/)へ。
ワイヤレス給電で協議会設立
EVやPHVなど電動車への充電は車両と充電器をケーブルでつなぐことで行われる。ユーザーにとっては作業の手間や待ち時間など、ストレスに感じる要素も少なくない。給電をワイヤレスとすることで、ユーザーの負荷をなくし、資源・環境問題の解決にも貢献できる。
こうした中、電動車へのワイヤレス給電実用化・普及促進を目指す「EVワイヤレス給電協議会」が今年6月10日に設立された。会長は堀洋一東京理科大学教授。関西電力、ダイヘン、シナネン、三菱総合研究所、ワイトリシティジャパンの発起人5社が幹事会員となり、ダイヘン東京本社内に事務局を置く。
活動の目標・内容はまず、EVワイヤレス給電の社会インフラ化の推進。都市、交通などの課題解決のために、自動運転などの技術におけるEVワイヤレス給電技術の有益性の理解促進を目指す。また、EVワイヤレス給電技術の相互運用性やセキュリティー確保のために標準化活動を行い、相互利益のある基準・規格の確立を目指す。
磁界共鳴方式によるワイヤレス給電は、ケーブルやプラグをつながず、地面に敷設した送電コイルから電動車側の受電コイルへと電力を供給する仕組み。駐車場など停車している電動車に対して充電する停車中給電(SWPT)と、道路に連続的に送電コイルを埋設して走りながら充電が可能な走行中給電(DWPT)がある。
ユーザーメリットとしては、充電時間・待ち時間の削減、充電スペースの削減、蓄電池コストの削減、手間の削減、メンテナンスコスト削減など。充電ケーブルの絡まりがなく、充電忘れもない。安全、安心、便利な充電技術だ。