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JIMTOF 2024に向けて
次世代を見据えたJIMTOF2024への期待
【執筆】金沢工業大学 工学部 機械工学科 教授 坂本 重彦
第32回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2024)が11月5日から開催される。工作機械、工作機器、機械工具、そのほか工作機械に関連する機器などが出品される国際的な見本市である。「モノづくり」に関する講演や人材育成、共創に進むビジネスがトピックスとなる中、準備を進める企業に準備状況をヒアリングした。
モノづくりと共創
JIMTOFは工作機械やそのあらゆる周辺機器が一堂に会する、モノづくりの総合見本市である。最先端の技術や製品が世界中から集結し、さまざまな困りごとに対する解決策やそのヒントが得られる場となる。今回は「次のモノづくり」や「共創社会」に対する考え方や在り方などが、講演会・セミナーで議論される。
主催者は新しい試みとして「アカデミックエリア」を設置する。出展者である企業・団体と学生をつなぎ合わせ、モノづくりの大切さを学生に伝える。次世代を担う学生に、理系や文系の境もなく、モノづくりの魅力を伝えることで業界の可能性を肌で感じ取れる体験型コンテンツを用意する。工作機械業界への知見を深めてほしいという願いが込められた企画である。
加えて、工作機械とはどのような機械であるのかを広く周知することを目的として実施されている「工作機械(MT)検定」の第7回が、会期前から受験可能となっている(詳細はhttps://www.mt-kentei.jp/)。
高能率加工の実現
製造業は急激に変化する作業環境への対応が常に求められている。製品の多様化に加えて、さらなる生産性の向上、新しい価値の創出が要求されている。働き方改革が広まる世の中では、省人化・工程集約への対応も望まれている。
このような社会的な背景の中、工作機械には高精度・高速加工に加えて、省エネルギー、環境対策、ユーザーフレンドリーなどの要求が常に継続的に積み上げられている。外観では、デザイン性が高いスプラッシュガードに覆われたマシニングセンター(MC)が増えている。
牧野フライス製作所は幅広い業種に向けて、従来よりも大きな加工対象物(ワーク)の高能率な加工を実現した5軸制御横型MC「a500iR」を新発売した(図1)。生産性の高い機械構造を基本として、加工室内、テーブルなどで確実に切りくずを処理し、経済性や環境への配慮をしながら、長時間の連続運転や5軸加工による工程集約が可能となる。
また、各種自動化システムに対応し、加工の自動化・省人化に寄与する。労働環境の改善や技術者のスキルをカバーする工作機械を提供している。
環境性能・省エネ・長寿命
工作機械の高速化や高精度化、環境性能、省エネの向上を支える機械要素の進化も著しい。日本精工の調べによると、テーパーサイズ#40番において、MCの主軸回転数は毎分1万―2万回転が主流で、毎分3万回転のものも少なからず見られる。早送り速度は毎分60メートルが最も多く、高精度機では毎分20メートルがここ最近の傾向である。
これらの性能を支える技術として、環境に優しいグリース潤滑の取り組みが挙げられる。主軸用軸受については、耐焼き付き性とクーラント環境下における信頼性の向上に貢献するグリースが開発されている。
またボールねじについては、発熱対策の簡易化、高速静音技術による高速・静音性、表面改質技術による摩耗の低減によるメンテナンスサイクルの延長など、さまざまな技術革新が取り組まれている。さらに高精度化が必要な金型加工に対応するため、運動方向反転時の摩擦変動をコントロールすることで、象限突起を抑制することのできるボールねじを発表している(図2)。
グローバル対応
工作機械とその関連機器の市場は、国内にとどまらず海外での割合が増えている。わが国の企業は世界屈指の高い技術力で、世界中のモノづくりを支えている。
住友電工ハードメタルは電気自動車(EV)、航空機、小物部品加工などを重点市場として、加工工程のデジタル変革(DX)によるデジタルソリューションをグローバルに提供している。同時に、環境に配慮した製造工程や加工の効率化を実現することで、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を意識したグリーン・トランスフォーメーション(GX)への取り組みも進めている。
熟練工のスキルに、DXをプラスしたセンシングツールをさまざまな加工用で発表する(図3)。工具刃先の加工状態を監視するため、切削力をリアルタイムで見える化することが、定量値に基づいて加工条件の設定支援や可視化による異常原因の究明支援につながる(図4)。
熟練技術の自動化
国内外における自動車の生産において、ギガキャストへの対応や、HV(ハイブリッド車)・EVなどエコカーへの対応が進められている。
三井ハイテックは車載用モーターコア(主機)および半導体パッケージのリードフレームで世界シェア1位となっている。金型の設計から製作、コアのスタンピング生産まで一貫して行い、グローバルに高品質の製品を供給している。
精密加工技術を駆使し、高精度加工ができる研削盤を社内で開発・製造する一方で、ユーザーとしての立場を強みとして、6面加工を全自動化した技術を発表する。1マイクロメートルの加工精度を自動化するため、匠(たくみ)の技とロボット技術を融合させ革新的な技術を開発している(図5)。
おわりに
モノづくりにおいて、グローバルな市場に、直接・迅速に対応するサービスが、各社の業務内で意識されている。DXを基本としたGX、サステナビリティー・トランスフォーメーション(SX)など、ビジネス上の変革は当然の流れとして我々の意識の根底にある。ユーザーへの歩み寄りを意識したサポートが注目される。
JIMTOF2024は情報収集の場としてだけではなく、学生を含む幅広い来場者間で対話や相談が行われ、深い交流の場となることが期待される。