-
業種・地域から探す
JCSSの校正サービス
モノづくりの現場で使用する計量器や計測器は、それらが示す「数値」の信頼性が重要とされる。計量器や計測器の性能や精度が正しく維持されているかを検証する「校正(キャリブレーション)」は、安心・安全につながる。計量計測の基準を供給する制度が計量法校正事業者登録制度(JCSS)。計量器に対して国家計量標準に準じた校正ができる事業者を登録する制度で、2023年11月には創設30周年を迎えている。このJCSS認定で校正する事業者は、培ったノウハウや技術力を生かし、高品質な校正サービスを展開している。
モノづくりの高品質支える
計測の安心・安全保証
JCSSはジャパン・キャリブレーション・サービス・システムの頭文字による略称で、計量法に基づく計量法トレーサビリティー(履歴管理)制度を表している。計量器について国家計量標準にトレーサブルな校正を行う事業者に対し、計量法関係法規および国際認定機関の国際規格ISO/IEC17025の要求事項を満たしているのかを製品評価技術基盤機構(NITE)の認定センター(IAJapan)が経済産業大臣に代わり審査して登録する。
また産業技術総合研究所(産総研)、情報通信研究機構(NICT)がそれぞれの国家計量標準の維持・管理を行っている。
IAJapanの審査は①書類審査②登録申請者の設備や校正作業の現地調査(または遠隔審査)③技能試験への参加―を鑑みて登録される。
登録後はさらに4年ごとの登録更新審査を経る必要があり、校正事業者の能力に信頼性を付与している。
登録された校正事業者は登録を受けた区分(範囲)内の自社製品や依頼を受けた製品に対して校正を行い、校正結果によってJCSS標章を付けた校正証明書を発行できるようになっている。
計量トレーサビリティーでは①国際計量標準または国家計量標準への切れ目のない校正の連鎖②文書化された測定の不確かさ(計量器の精度)③文書化された測定手順④認定された技術能力⑤国際単位(SI)へのトレーサビリティー⑥校正周期―が求められ、JCSS標章付き証明書は①から⑤までを満足する必要がある。
登録区分
NITEが定めた区分の名称に「長さ」「質量」「時間・周波数及び回転速度」「温度」「圧力」「電気(直流・低周波)」「硬さ」など25の登録分野がある。
JCSS登録事業所数は23年12月末において281事業所で、うち国際的に通用する校正証明書を発行できる認定事業所は247事業所となっている。事業所が発行するJCSS校正証明書発行件数は18年度累計約57万枚、19年度と20年度は同約59万枚、21年度は約61万枚、22年度は約65万枚となった。
グローバル対応
IAJapanは国際試験所認定協力機構(ILAC)、アジア太平洋認定協力機構(APAC)の相互認証取り決め(国際MRA)に参加している。これによりビジネスのグローバル化に伴う計量器の精度を、国際的にも証明する要望に対応する。米国(NVLAP、A2LA)、英国(UKAS)、ドイツ(DAkkS)、豪州(NATA)などの認定機関が認定した校正事業者が発行する校正証明書と同じ効力を発揮する。
これはIAJapanの登録審査に、さらに①2年以内の認定維持審査②技能試験への参加―を経た校正事業者は「認定事業者」としてILAC MRA付きJCSS認定シンボルが記載された校正証明書を発行することができる。この校正証明書は国際取引において通用する証明書で、ジャパンクオリティーへの信頼性を高める。
校正は計量器の健康診断ともいえ、標準となる校正器が示す理想的な値と、使用している計量器が示す値を比較し計量器の状態を確認する大切な作業。また校正を行う現場環境の信頼性が求められる。こうした「測ること」の基準は、国家・生活の根幹を支え、日本のモノづくりの基盤となる。校正事業者は顧客満足度向上や利便性を考慮し、校正範囲拡大を視野に入れ、積極的な活動を行っている。高い技術力と信頼を付与するJCSSとその事業者が果たす役割は重要性を増している。
「計量トレーサビリティ」/「講演会」動画配信
日本品質保証機構(JQA)の計量計測部門は15日17時まで、「2023年度マネジメントシステムのための計量トレーサビリティ」と題した講演会をオンデマンドで動画配信している。共催は製品評価技術基盤機構(NITE)と日本適合性認定協会(JAB)。
2月14日にオンラインで開催し、聴講者数が定員に達した好評の講演会。講演内容は国際品質規格「ISO9001」などで要求される事項の一つである「測定のトレーサビリティ」のほか、試験所と校正機関の能力に関する国際規格「ISO/IEC 17025」などに焦点を当て、計量トレーサビリティーについて解説する。
受講料は無料。JQAのウェブサイトで受け付けている。