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ゲリラ豪雨への備え
短時間で局地的に非常に激しい雨が降る"ゲリラ豪雨"が、近年、想定を超えて激甚化・頻発化している。ゲリラ豪雨は発生の予測が難しく、都市部では排水能力を超える量の雨が降り、道路の冠水や建物への浸水を招いたり、電気などのインフラが寸断されたりして、物流や生産活動が中断することも予想される。企業は「事業継続計画(BCP)」の事前の策定により、さまざまな緊急事態に備えることが求められている。
激甚化・頻度2倍/インフラ寸断 物流・生産が中断
都市型水害 日常生活にリスク 局地・突発-難しい予測
ゲリラ豪雨はごく短時間に狭い範囲で、突発的に発生する集中豪雨のことを指す。気象用語でいう「局地的大雨」で、急に強く降り、数十分の短時間、狭い範囲に数十ミリメートル程度の雨量をもたらす。単独の積乱雲が発達することによって起き、大雨や洪水の注意報・警報が発表される気象状態でなくても、河川や水路が増水するなど、急激な状況変化により重大な被害を引き起こすことがある。
気象庁の統計によると、大雨の年間発生回数は増加しており、より強度の強い雨ほど増加率が大きくなっている。最近10年間(2015-24年)の平均年間発生回数(約334回)は、統計を開始した最初の10年間(1976-85年)の平均年間発生回数(約226回)と比べて約1・5倍に増加。中でも1時間降水量80ミリメートル以上、3時間降水量150ミリメートル以上、日降水量300ミリメートル以上など強度の強い雨は、80年頃と比較して、頻度が約2倍に増加している。
大雨による水害は、河川があふれる「外水氾濫」だけでなく、都市部で大量の雨が短時間に下水道管に集中し、河川があふれる前に下水道管の能力を超えて発生する「内水氾濫」がある。内水氾濫が主な原因とされる都市型水害では、道路の冠水やマンホールの故障、オフィスビルやショッピングモール、駅構内の浸水といった被害が考えられ、事業活動が停滞する、日常生活が継続できないリスクもある。
昨年の夏には東京23区や埼玉県内で1時間におよそ100ミリメートルの猛烈な雨が降ったとされ、「記録的短時間大雨情報」が発表された。内水氾濫が起きていたとみられ、歩道にあるマンホールから猛烈な勢いで水が噴き出し、高さ数メートルの水柱が上がったと報じられた。地下鉄の駅の浸水やエレベーターが故障するなどした。
19年の台風19号では多摩川につながる排水樋管の逆流に端を発した内水氾濫で、川崎市内延べ約110ミリメートルに被害をもたらした。泥水が流れ込んだことにより、タワーマンションの電気設備も停止した。
一般的に都市の下水道は、1時間に50ミリメートルの雨を流せるように設計されている。ただし、ゲリラ豪雨のような数十分といったごく短時間に50ミリメートル以上の雨が降った場合は、排水能力を超えて道路冠水が発生する。
東京都は浸水被害の影響が大きい大規模地下街や甚大な浸水被害が発生している地区では、1時間に75ミリメートルの降雨に対応できるよう整備を進めてきた。23年には「東京都豪雨対策基本方針」を改訂し、想定の雨量を都内全域で10ミリメートル引き上げて、目標降雨を1時間に85ミリメートルとした。また洪水の一部を貯留する調節池や、洪水の一部を別のルートに分けて流す分水路の整備なども行っている。
企業・個人の対策で効果 リスク知り安全行動
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設置が容易な止水板が増えている(「防災産業展2025」文化シヤッターブース)
都市型水害の対策において、国や自治体による河川・下水道の整備・増強、大規模な雨水貯留浸透施設の設置といったインフラ整備が重要だが、一つひとつは小規模でも企業や個人の対策が地域全体に広がれば大きな効果を発揮する。屋上や敷地、駐車場で雨水をタンクにためたり、雨を大地に浸透させるといった取り組みだ。近年、大型商業施設やマンション、公共施設などで雨水貯留浸透施設の導入が進んでいるが、雨水貯留浸透施設の導入に対しては、多くの自治体で補助金を交付している。
ビルや事業所への浸水を防ぐ止水板の設置なども事業活動を止めない対策として欠かせない。設備を導入しても、迅速に対応できなければ被害を最小限に抑えられないため、さまざまな防災情報アプリでリアルタイムの情報を得ることも必要だ。
気象庁のサイト「キキクル」では、リアルタイムで現状や今後の危険度を知ることができる。「洪水」「浸水」「土砂災害」の三つの情報を画面で切り替えられ、それぞれの危険度が地図上に色分けされて表示される。危険度に対応した適切な安全行動を判断する助けとなる。
浸水予想区域図や洪水ハザードマップの確認をし、水害リスクや避難ルートを把握しておくこともリスク回避につながる。災害時に事業活動への被害を最小限に抑え、災害後は速やかに事業再開できるようBCPを策定するなど、激甚化・頻発化する豪雨災害への備えが求められている。