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ゲリラ豪雨に備える
ゲリラ豪雨と呼ばれる局地的大雨や集中豪雨は、近年全国的に頻発化・激甚化している。大量の降雨は浸水害や河川の氾濫、土砂災害、人的被害などを引き起こす。産業界では生産拠点の浸水や道路の冠水で、企業活動が停滞するケースが見られる。災害リスクを把握し、対応ができるよう予報精度や全世界をカバーしたハザードマップが求められている。
豪雨 頻発・激甚化―企業活動が停滞
大雨発生1.5倍 近年
局地的大雨とは、短い時間に非常に激しく雨が降る状況のことを指す。具体的な降水量については定義はないものの、外水氾濫や内水氾濫を引き起こすおそれがある。
気象庁によると、1976年から85年の10年間における毎時50ミリメートル以上の雨の平均年間発生回数は226回であったのに比べ、2013年から23年にかけては328回と約1・5倍に増加している。毎時50ミリメートル以上の雨は道路が大規模冠水するレベルの雨量で、滝のように降る激しい雨。温暖化が進むと空気中で水蒸気の割合が増え、大雨が発生しやすくなる。
国内での水災害に備えるため、民間の予報サービスを利用する企業が多い。1993年に政府が実施した気象業務法の改正で、民間事業者も独自の天気予報を発表できるようになった。
また、23年の気象業務法改正では、最新技術を踏まえた予報業務の許可基準の最適化や、防災に関連する予報の適切な提供の確保、予報業務に用いることができる気象測器の拡充など、多様なニーズに応じた予報を提供する。
広域洪水ハザードマップ 全世界で無償公開
国内で水害への事業継続計画(BCP)を行う企業は、地域のハザードマップと民間の気象予報を併せて利用することで水害リスクを知り、対策できる。
17年、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は気候関連のリスクを開示する枠組みを提言した。21年のコーポレートガバナンス(企業統治)コード改訂から、プライム市場上場企業はTCFD相当の情報開示が求められている。
また、東京大学と芝浦工業大学、MS&ADインターリスク総研は共同研究「LaRC-Floodプロジェクト(現 洪水リスクファインダー)」において「将来の広域洪水ハザードマップ」を公開した。アジアなどの一部地域を先行して無償公開し、9月に対象地域を全世界に拡大。想定される世界中の浸水深分布を、現在と将来で比較・閲覧できる。企業の海外拠点選びやサプライヤーの気候リスクを把握し、洪水で事業が止まらないよう対策を立てる判断材料として使用されている。
同研究成果は国土交通省の「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き~気候変動を踏まえた洪水による浸水リスク評価~」で利用可能な将来洪水ハザード情報として紹介されている。MS&ADインターリスク総研はIT企業から地方の金融機関など、56社のコンサルティングを担当する。
将来の広域洪水ハザードマップを共同で開発した芝浦工業大学の平林由希子教授は「日本国内は各地域にハザードマップがあるが、そのようなマップの整っていない途上国などの地域でも洪水リスクを示すことができるようになった。今後は観測データの積み重ねや堤防の情報をモデルに入れ込むことで、より正確なマップになっていく」と今後の見込みを述べた。
【出典論文】
Kimura, Y., et. Al. Methodology for constructing a flood-hazard map for a future climate. HESS, 27, 1627–1644, 2023