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インバーター
近年、世界的にカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)達成への機運が高まっている。モノづくりの現場におけるカーボンニュートラルへの第一歩は、徹底的に省エネルギー化を図ること。インバーターはモーターの回転数を制御して、大きな省エネ効果を発揮。工場やビルの機械・設備の省エネ、自動化に欠かせない機器として、産業や社会インフラを支えている。
モーター制御で省エネ効果
インバーターは電源とモーターの間に設置し、電気の周波数を変えてモーターの回転数を制御する。モーターは基本的に周波数によって回転数が決まり、一定の回転数で回り続ける。
このため使用環境により変速運転が必要な箇所など、モーターがそこまで回る必要のない時、インバーターで適正なレベルに出力制御することで、大きな省エネ効果を発揮する。例えば、ダンパーやバルブで機械的に制御していたファンやポンプの駆動に、インバーター制御方式を採用し、モーターの回転速度に比例する風量や流量を調整すると、使用電力は回転数の3乗に比例して減少する。
一般的な工場では総電力使用量のうち7割程度がモーターを通して消費されると言われており、インバーターの導入やモーターの高効率化によって、大きな省エネと二酸化炭素(CO2)削減効果が期待できる。初期投資は大きくなるが、長期間使用するとライフサイクルコスト全体では大半を電気料金が占めるため、経済的メリットも生まれる。
環境負荷低減サポート
安川電機は環境ビジョンである「YASKAWA ECO VISION」を掲げ、2050年にグループのグローバルな事業活動に伴うCO2排出量を、実質ゼロにする取り組みを進めている。
この一環として、インバーターや高効率なモーターなどの製品供給を通じて、顧客の環境負荷低減もサポート。25年には同社グループによるCO2排出量の100倍以上のCO2を、ユーザーが使用する同社製品によって削減する目標「CCE100」の達成を目指している。
同社インバーターを導入した際の省エネ事例を紹介する(図)。ファンの風量制御をダンパー制御からインバーター制御に変更した事例では、年間消費電力を約45%削減。電力量約1万8700キロワット時の削減、電気料金約30万円の節約、CO2排出量約8トンの削減を実現した。
また永久磁石同期(PM)モーターへの置き換えによる省エネ事例では、年間電力量約4100キロワット時の削減、電気料金約7万円の節約、CO2排出量約1・7トンの削減となっている。
PMモーターは、産業用として多く使われている誘導モーターよりも省エネ性が高いとされる。誘導モーターは15年に「トップランナー制度」の対象に加わり、効率レベルが国際電気標準会議で規定された「IE3(プレミアム効率)」に引き上げられているが、市場には従来のIE1(標準効率)の誘導モーターも少なくない。
PMモーターではIE5(ウルトラプレミアム効率)レベルの効率も実現しており、IE1からIE5へ置き換える場合の効果は特に大きい。
設備の稼働率向上
インバーターメーカーでは、機能の充実や使い勝手の向上を図っている。近年、インバーターはIoT(モノのインターネット)に対応し、予防保全に活用できる。モーターの速度や電流といった稼働データを監視することで、設備の異常を把握。インバーター自身の主要部品の寿命予測機能も進化しており、設備の稼働率向上を実現する。
併せてモーターの効率レベルの向上や、省スペース化などを図りながらラインアップを増やし、セットメーカー製品の高効率化・高付加価値化に貢献している。