-
業種・地域から探す
続きの記事
4月18日 発明の日
4月18日は「発明の日」。1885年4月18日に、現在の特許法の前身である「専売特許条例」が公布されたことに由来する。特許や意匠、商標など産業財産権の普及・啓発を目的に制定され、日本の産業発展の礎となった。技術進化や産業構造が大きく転換している現代、知的財産権の重要性は増している。競争力の源泉となる知財の創出や保護、活用のあり方について、あらためて考えたい。
知財教育と人材育成
イノベーションの成果を企業発展に結びつけるためには、知的財産の権利化や活用が不可欠だ。事業戦略、経営戦略の柱として取り組むことの重要性についての認知は徐々に広がっている。そこで、的確な知財マネジメント、知財戦略の検討のできる人材が求められる。世界に通用する知財人材の育成を目指し、専門的、実践的な教育プログラムを展開する大学の取り組みを紹介する。
知財専門の即戦力 育成/大阪工業大学
大阪工業大学は日本唯一の知的財産学部を設置し、同大学専門職大学院知的財産研究科と連携して知財専門の即戦力人材を育成している。学部設立から20年以上培ったノウハウを生かした実践型教育で〝知的財産業務の場で活躍できる〟人材育成に重きを置く。
実践型教育には知財の専門職の実務を疑似体験する授業がある。学部3年生からのPBL(問題解決型学習)形式の授業で、企業の経営課題を知財の知識で分析し経営戦略の提案・発表などを行う。座学で得た知識を実践形式でアウトプットする機会を設け、実務に必要な判断力を養う。
ゼミの活動でも社会経験を先取りするような取り組みが行われている。同学部の水野五郎教授のゼミでは学生が出版・書店事業を運営。出版から販売までに関わる法律や権利、経営手法などを実際に経験しながら学べる。
取り組みの成果はさまざまな形で表れている。2023年の学部実就職率は97・1%と法学系大学では西日本1位(大学通信調べ)。さらに、大学院修了者の半数以上が知財の専門職に就いている。また近畿経済産業局が1月27日に開催した「令和5年度知財ビジネスアイデア学生コンテスト」では、エントリーした10大学25チームの中、知的財産研究科のチームが提案したビジネスプランが最優秀の近畿経済産業局長賞を受賞した。
一方で、同大学は学外の知財教育支援にも力を入れている。23年度から「高大接続プロジェクト」を立ち上げ、「高大連携」により、知財教育支援を強化した。高校生向け知財教育用の教材の作成や出前授業を実施。出前授業で訪問した高校は50校を超える。昨年は榎本吉孝教授のゼミ生を中心に、大阪府内の高校で謎解きゲーム形式の体験型ワークショップを開いた。生徒が楽しみながら知財権とビジネス社会の関係を感じ取り、自ら学びたいと思えるようなきっかけを提供している。
社会人の学び直しに有益/金沢工業大学
金沢工業大学のイノベーションマネジメント研究科・同専攻は東京・虎ノ門にキャンパスを構える社会人向けの「KIT虎ノ門大学院」として知られている。選択必修科目が異なる修士(経営管理)=MBA、修士(知的財産マネジメント)=MIPMの二つの学位プログラムがある。
虎ノ門大学院は2004年にスタートし、16年に現在の研究科に改組となった。これまでに累計で700人以上が修了し、ビジネスと知的財産の専門知識を併せ持つイノベーションリーダーとして社会で活躍している。
同研究科は22年12月から23年1月にかけて、21年8月と22年3月に修了した37人を対象に、同研究科でのプログラムがどのような価値を提供し、キャリアにどのような影響をもたらしたかについて、アンケートを実施した(回答数21)。
「社会人の学び直し教育機関として有益か」との問いに回答した全員が有益性を認めている。「学び直しを考えている社会人にKITを紹介したいか」には95%が「紹介したい」としている。また、キャリアへの影響は90%の人が「効果があった」、3分の1の人が「年収が上がった」と回答している。
専攻主任の加藤浩一郎教授は「我々が考える社会人への専門教育のあり方に確かな手応えを感じている」と話す。アンケート結果には、仕事の合間に貴重な時間と学費をかけ、ハードな講義を受ける修学生の期待に十分応えられていることが表れている。
コロナ禍を経て、授業の進め方はオンラインと対面を併用するハイフレックス制を採用している。地理的条件に縛られないオンライン授業の有効性とともに、対面による直接的なコミュニケーションがもたらす〝人としての力〟を伸ばす効果も重要視している。加藤教授は「多くの人にぜひ挑戦してもらいたい」と呼びかける。
社会人・留学生…知財人材輩出/国士舘大学
国士舘大学は法律学に基づいた知的財産の専門人材を育成している。2006年に大学院修士課程に総合知的財産法学研究科を設置し、同大の学部生に限らず他大学の学部生や社会人、留学生らが入学して知財を学んでいる。
これまでに100人以上の修了生を輩出し、企業の知財関連の部署や自国の弁理士事務所などで活躍している。海外への技術流出などの問題が重要視される中で、知財に関する専門人材の育成は必須になっている。
同大院の総合知的財産法学研究科では法律学を学んだ人だけでなく理系出身者も多い。そのため弁理士になることを目指す人だけでなく、企業などの知財に関する部署での活躍をのぞむ人もいる。
知財の中でも興味を持つ分野は学生によって異なり、近年は不正競争防止法で定められた要件を満たす「営業秘密」や「限定提供データ」といった技術流出の仕組みや特許出願に関わる取り組みを研究する学生が多い。
同研究科の講義では著作権や産業財産の理論、文献の検索や明細書の作成といった理論と実践の講義に加え、弁理士の国家試験対策の講座だけでなく弁理士事務所などでの実務研修にも力を入れている。最近は中国人留学生も多く、修了後は日本の企業に就職したり中国の企業への就職や資格試験を受験するなど進路はさまざまだ。日本へ学びに来る学生は技術流出など知財への意識は高く、留学生をはじめとして日中の架け橋となる人材になりそうだ。
同大学院総合知的財産法学研究科の田辺恵教授は「バックグラウンドに関わらず知財を学べることが特徴。若い人から学び直しを希望する人まで受け入れる準備はあるため、知財に興味があれば入学してほしい」と話す。