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工業炉と関連機器
中外炉工業は2018年に当時世界初の工業用汎用水素バーナーを開発して以降、さまざまな用途の水素バーナーの開発を進めてきた。25年に神戸製鋼所高砂製作所へ納入した国内最大級となる水素燃焼金属加熱実証炉では、自動空気比制御システム「EBC」と酸素濃度センサー「ラムダアイ」を組み合わせた独自のシステム「ラムダリンク」を採用することで安定した炉内雰囲気制御と省エネルギーを実現し、水素バーナーだけではなく制御を含めた脱炭素加熱設備全体を提供できる技術基盤を確立した。
水素バーナーのその先へ —制御技術で確立する脱炭素加熱設備の技術基盤—
【執筆】中外炉工業株式会社 プラント事業本部 サーモシステム事業部 開発設計部 開発設計課 川端 健介
●脱炭素社会に向けた水素バーナー開発と低NOx技術
50年カーボンニュートラル宣言以降、日本のエネルギー・産業部門ではかつてない規模の構造転換やイノベーションの創出が加速している。当社における本格的な水素バーナー開発は、18年にトヨタ自動車と共同開発した汎用性の高いHSGB型ハイスピードバーナーに始まり、その後も用途に応じたさまざまなタイプの水素バーナーを開発しラインアップを拡充してきた。とりわけ23年11月の「熱技術創造センター」(堺市西区)開設により水素の貯蔵能力が旧燃焼研究所(大阪府柏原市)の6倍以上となってからは、開発スピードが飛躍的に向上した。
以下に主な開発例を挙げる
①WRBG型ラジアントチューブバーナー
熱処理炉や連続焼鈍ライン(CAL)、連続溶融亜鉛メッキライン(CGL)などに用いられる間接加熱用途のバーナーで、排ガス循環の強化により水素燃料でも従来燃料同等の低窒素酸化物(NOx)性能と極めて良好なチューブ表面温度分布を実現した。
②ガンタイプバーナー(オリンピア工業との共同開発)
主に暖房や乾燥などの低温用途を想定したバーナーで、バーナー本体にブロワと制御盤、水素対応制御機器を一体化。電気、ガスのユーティリティーを接続するだけですぐに使用でき、水素バーナーの導入ハードルを下げた。
③DGB型ダブルコーンガスバーナー
車体塗装乾燥用途向けバーナー。強みである幅広いターンダウン性能を維持しつつ、専用のガスコントロールユニットに交換するだけで水素燃焼への切り替えが可能。
④SLNG型バーナー
1次・2次空気比率を可変とすることで多様な運転条件に対応できる低NOxバーナーで、部品交換せずに都市ガス専焼・水素専焼・両者の混焼に対応できる。さらに予熱空気燃焼でも低NOx化を達成した。
⑤RCB型リジェネバーナー
最も省エネ性能が高い燃焼方式のバーナーであるが、熱回収率の高さに伴う超高温空気燃焼ではサーマルNOxが発生しやすい。そこで各流体の流速やノズル角度などを最適化し、水素燃焼においても低NOx化を実現。部品交換無しで都市ガス燃焼にも対応可能とした。
しかしラボ試験でこれらの水素バーナーがどれだけ高性能であっても、実際の加熱設備で本来の性能を安定的に発揮するためには緻密な空気比制御が不可欠である。特に燃焼速度の速い水素は空気比が高くなると燃焼が促進されて火炎温度が上昇し、NOxの発生が顕著となりやすい。加えて水素は発熱量当たりのコストが現状では都市ガスより著しく高いため、空気比の乱れによるコストインパクトが大きい。すなわち水素燃焼では、環境性・経済性の両面から従来の化石燃料以上に精密な空気比制御が求められる。
●水素燃焼を実用化する自動空気比制御システムEBC
一般的な空気比制御はオリフィス、差圧発信器、流量調節弁を組み合わせたFIC流量制御が多いが、フィードバック方式ゆえの応答遅れで空気比が安定しないことやターンダウン時にオリフィス差圧が小さくなり測定精度が低下するなどの課題がある。これに対し当社の自動空気比制御システムEBC(Easy&Eco.Burner Control system)は、ユニークな制御原理により応答性・ターンダウン性能・制御精度のすべてで高水準を実現している。
EBCは出荷前に1台ごと、バルブ開度と流れやすさ(流量特性)の関係を実測して係数化し、その固有値をシステムへ入力する。これにより流量計からのフィードバックが不要で応答性の高い制御を実現している。EBCは既に水素燃料対応可能となっており、社内外の水素燃焼設備に採用されている。一般的に高性能化の代償として操作が複雑になったり習熟に時間がかかったりするが、EBCの操作画面はユーザーフレンドリーなユーザーインターフェース(UI)を採用し、誰でも簡単に精密な燃焼制御が得られる工夫を施している。さらに25年にはEBC3(イービーシーキューブ)にグレードアップし遠隔監視・遠隔操作機能を追加。当社の製品である酸素濃度計・ラムダアイと組み合わせたラムダリンクを完成させ、炉内酸素濃度を基準とした空気比補正や材料の装入・抽出時に生じる炉内酸素濃度の乱れ抑制など、よりフレキシブルな制御を可能にした。
●課題解決へ導く「ラムダリンク」
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中外炉工業が納入した国内最大級の水素燃焼金属加熱実証炉
同年、当社は国内最大級の水素燃焼金属加熱実証炉を神戸製鋼所高砂製作所向けに納入した。本設備のバーナーは予熱空気を用いながらも水素100%から都市ガス(13A)100%まで、いずれの条件においても良好な低NOx性能を有している。このバーナーの性能を引き出すためにEBCを搭載し、水素・都市ガス・予熱空気を精密に統合制御している。加えてラムダリンクを採用することで炉内酸素濃度と空気比制御を連動させ、安定した炉内雰囲気と省エネの両立を実現した。
水素燃料は従来の化石燃料と燃焼特性・コストが大きく異なるため、バーナー本来の性能を引き出し環境性能・省エネ性能を安定的に維持するには高度な空気比制御が欠かせない。当社はラムダリンクの開発により水素燃焼の一連の課題を解決し、脱炭素加熱設備全体を提供できる技術基盤を確立できたと考える。
