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茨城県内企業 飛躍に向けて事業基盤を強化(2)
伊藤鋳造鉄工所/総合事務所棟を新設 部門間連携を促進
伊藤鋳造鉄工所(茨城県東海村)は、新たな総合事務所棟を完成、2024年1月に稼働する。製造や品質保証、管理など従来は部門ごとに分散していた執務室を1カ所に集約して部門間の連携を促進する。また、約150人の従業員が一堂に集まれる食堂・集会スペースを整備し、従業員同士のコミュニケーションの円滑化と福利厚生の充実を図り、将来の事業の成長の原動力となるような拠点として活用していく。
総合事務所棟は手狭になっていた従来の事務所棟を建て替える形で建設した。3階建てで延べ床面積約1000平方メートル。投資額は約3億5000万円。
総合事務所ではグループ会社で機械加工を手がけるアイ・エム・エス(同)を含め、すべての部門の管理者が一つの事務所で執務する。部門間連携による業務効率化やデジタル変革(DX)を推進しやすい体制を構築。従来はQCサークル活動や安全大会など全社員を集めた行事は外部の施設を借りていたが、今後は社内で実施して活動の活性化を図る。
伊藤鋳造鉄工所は建設機械などの鋳造部品を手がけ、ベトナムにも複数の生産拠点を置く。3年後の創立80周年とさらにその先を見据え、海外拠点を含めた生産体制の最適化やDX、脱炭素化などさまざまな取り組みを推進する計画。その活動の基盤となる従業員の働く環境を整備し、事業の成長に結びつけたい考えだ。伊藤秀幸社長は「新棟を核に社内に横串を通して事業を進めたい」と話す。
富田製作所/洋上風力発電の支柱向け 機械式「継ぎ手」を開発
富田製作所(茨城県古河市)は、洋上風力発電設備の支柱向け「継ぎ手」の研究開発を推進している。開発している継ぎ手は大口鋼管同士を機械的につなぎ合わせる部分に使う独自構造の機構で、洋上風力発電設備の建設時に現場での溶接作業を削減できるメリットがある。これまでにシミュレーションや試験片での引っ張り試験で十分な強度が得られることを検証済み。今後は製造技術の開発などを進め、3年後にも実用化したい考えだ。
接合する鋼管の端部を特殊形状に加工し、一方の鋼管の端部をもう片方の鋼管の端部に差し込み、ピンで固定する方式を考案した。接合部をテーパー(傾斜)構造に加工することで、多少の変形があっても差し込みやすくする工夫を加えた。最大で直径3メートルの鋼管に対応できる。現在、同技術の特許を出願中。
風車を海中で支える「ジャケット式」の基礎構造物への応用を想定して開発した。機械式継ぎ手の採用により、人手不足が懸念される溶接技術者の技能に頼らずに工事ができ、解体工事も容易になると期待される。
新技術の実用化に向けて同社は、2023年に横型マシニングセンター(MC)などを新規導入し、製造技術の開発を本格化。今後の市場拡大が期待される再生可能エネルギー分野での新規受注の獲得を目指す。富田英雄社長は「厚板鋼板の鋼管加工から機械加工まで一貫生産できる自社の強みを生かした新技術を世の中に提案したい」と話している。
育良精機/製品開発力を強みに市場拡大
育良精機(茨城県つくば市)は、自社開発の工業製品の製造・販売を手がける。製品分野別に自動旋盤向け自動棒材供給機やその関連製品を手がける「省力機器事業部」と、建設工事現場で使われる溶接機や穴あけ機など多様な製品を手がける「工具事業部」の二つの事業部門で構成。最大の強みは商品開発力で、ユーザーのニーズを反映した新製品開発を常に行い、タイムリーに製品供給することで、市場の拡大に取り組んでいる。
省力機器事業部/旋盤周辺機器をワンストップで提供
省力機器事業部では「BARTOP (バートップ) 」のブランドで知られる自動旋盤向け自動棒材供給機が主力製品だが、近年は旋盤の周辺機器の商品開発にも力を入れている。作業環境の改善や省スペース化に寄与する製品群を棒材供給機とセットで販売し、ワンストップでのトータルソリューションを顧客に提供する。
周辺機器としてはこれまでに、切削液(クーラント)の吐出圧を高める「中・高圧クーラント装置」 、切削液を冷却する「オイルクーラー」、切削液のミストを捕集する「ミストチェンジャー」などを展開。いずれも棒材供給機の下部や上部などの空いているスペースに配置できるように設計しており、工場の床面積当たりの生産性向上に寄与する。
新製品として旋盤内にたまった切りくずを排出する「チップコンベア」の開発を進めている。外形をコンパクトに設計しながらコイル式で効率的に切りくずを排出できる装置を開発し、ユーザーの困りごとを解決する。
そのほか、加工後のワーク(加工対象物)に付着した切りくずを除去・回収する「パーツブロークリーナー」などの新機種を投入。こうした製品は旋盤以外の機械加工メーカーからも引き合いがあり、育良精機にとっては顧客層の拡大に結びついている。
同社は周辺機器の製品展開を5年程前から取り組んできた。曽根栄二社長は「周辺機器を手がけたことで社員の開発への意識が向上し、技術力も高まったのではないか」と手応えを語る。
工具事業部/現場ニーズに応じ多彩な製品を展開
一方の工具事業部では、建設や電設の工事現場、設備・メンテナンス、溶接関連などの製品を手がけ、アイテム数は250点にも上る。平均で1カ月に1点以上の新製品を開発して間断なく市場投入し、建設現場の省人化や作業者の負担軽減、安全向上に貢献する。
例えばケーブルを巻き取る「ケーブルウインチ」といった長年販売している製品でも新機種を継続的に開発している。最近では防音性の高い製品やエンジン式の製品を市場投入し、時代のニーズに対応し続けている。
今年の新製品としては、バッテリー式でコンパクトに設計したポータブルタイプのTIG(タングステン不活性ガス)溶接機「ライトティグ」などを投入。母材同士を高品質に接合するTIG溶接を手軽に行える製品として注目されている。
同社は「社内異業種交流型」の開発を強みとする。工作機械事業部と工具事業部に加え、グループ会社の日本アイ・エス・ケイを含め多彩なジャンルの製品を手がけている。この利点を生かし、各ジャンルの要素技術などを融通させたり掛け合わせたりしながら製品開発をすることで、競争力を高めている。