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茨城県内企業 飛躍に向けて事業基盤を強化(1)
茨城県内の中小製造業では将来の飛躍に向けて事業基盤を整備する動きが活発だ。生産拠点の拡充を通じた生産能力増強や生産効率向上、新技術や新製品の開発を通じた新市場の開拓などに積極的に取り組んでいる。県内7社の取り組みを紹介する。
フォージテックカワベ/鍛造工場を新設 水戸工場で一貫生産 歯車加工能力も拡充
フォージテックカワベ(茨城県つくばみらい市)は水戸工場(同城里町)内に「第3鍛造工場」を完成し、稼働した。県内に分散していた熱間鍛造の生産ラインを水戸工場に集約。材料の切断から鍛造、機械加工、熱処理までの一貫生産体制が水戸工場に整った。さらに水戸工場では歯車加工の設備増強も進めており、既存のトラックや建設機械向け鍛造部品の競争力強化だけでなく、ロボットや電気自動車(EV)など新分野開拓に向けた体制も整備している。
第3鍛造棟の延べ床面積は約1250平方メートル。屋上に出力100キロワットの太陽光発電システムを設置し、環境配慮型の工場棟とした。
現在、加圧力2000トンの熱間鍛造のプレスラインを1基、冷間鍛造の設備を1台導入済み。熱間鍛造ラインは本社・つくば工場の老朽化設備を更新して新設備に刷新したもの。熱間鍛造ラインの集約で生産効率化と納期短縮、材料輸送コスト削減を図る。さらに来年には2500トンの熱間鍛造のプレスラインを1基追加し、生産能力の増強も進める 。
水戸工場は同社の主力生産拠点で、2020年には鍛造後の歯車加工を手がける工場棟を新設し、ギア部品を完成品に仕上げて供給する体制の構築に注力している。同工場棟には歯車加工の設備を増設し、多様な形状の歯車加工に対応できる生産体制を整備する。河辺真理子社長は「技術力を高め、完成部品までを製造する提案活動を強化していきたい」と話している。
瑞井精工/里美工場に新事務所棟を完成 生産スペースも拡張へ
瑞井精工(茨城県常陸太田市)は、里美工場(同)に新たな事務所棟を完成した。事務室や会議室、従業員の食堂・集会スペースなどを整備して業務効率の向上を図る。併せて来春をめどに既存の工場棟の一部を改修し、生産スペースを約3割拡張して生産能力の強化にも結びつけるのが狙いだ。
新事務所棟は2階建てで、既存の工場棟と棟続きとなるように建設した。延べ床面積は約500平方メートルで投資額は約2億円。
既存の工場棟の2階部分にあった会議室や食堂を新棟に移設して新たに整備した。今後、既存の棟の2階の空いたスペースには検査設備や一部の生産設備を1階から移設する。手狭になっていた生産スペースを拡大し、生産性の向上と生産能力の強化を図る。
瑞井精工は鏡面シャフトや極小ピンなどの小径長もの部品、高機能コロなどの微細な金属部品の高精度加工を手がけ、自動車、半導体、医療など多様な分野に製品を供給している。半導体や電子部品分野などで今後の市場拡大が見込めることから、生産体制を整備して増産への対応にも備える。
里美工場は1987年に開設した同社の生産拠点。建屋の増設は工場開設以来初めて。新事務所は業務効率化に向けたデジタル変革(DX)などを推進する拠点としても活用する計画で、井上雅弘社長は「社員にとっても新たな刺激になる。新棟を活用して社内をより活性化していきたい」と話している。
リーデン/フィリピンに新工場 グローバルで生産体制最適化
リーデン(東京都台東区)は、フィリピンにワイヤハーネスの新工場を4月に稼働し、11月に現地で開所式を開いた。海外でのワイヤハーネス生産は中国、インドネシアに続き3カ国目。建設機械や農業機械などに使われるワイヤハーネスの生産能力を増強するとともに、生産拠点を分散配置してリスク回避を図り、グローバルで最適な生産体制を構築する狙いがある。
フィリピン新工場は首都マニラの南方にあるリパ市内の工業団地「リマ・テクノロジーセンター」に建設した。敷地面積約1万6000平方メートルで建物面積約3000平方メートル。現在の従業員は約130人だが、来年以降に200人規模に拡充することを想定する。
ワイヤハーネスは電源供給や信号伝達の複数の電線を束ねた集合部品。同工場で生産した製品は主に日本と米国に供給する。同社はチャイナリスクも考慮した供給網の複線化に向けて数年前から新拠点開設を模索。関税の優遇措置が受けられる経済特区があることなどからフィリピンへの進出を決めた。将来は第2期棟を建設し、生産能力をさらに増強する計画もあるという。
リーデンはワイヤハーネスのほかに建機向けの各種部品の製造・組み立てを手がけ、日本では茨城県土浦市に主要拠点を置く。フィリピン現地法人の社長を務める塚本浩平リーデン常務は「フィリピンでもグローバルに負けない品質とコストを達成したい。若い力を大いに生かして成長したい」と話している。
岡田鈑金/茨城工場に組立工場を完成 板金からの一貫生産体制を強化
岡田鈑金(東京都大田区)は茨城工場(茨城県小美玉市)内に新たな組立工場を完成した。2024年1月以降に本格稼働する。生産能力の増強とともに、板金加工から溶接、塗装、組み立てまでの一貫生産体制を強化する。組立工場の新設を足がかりに医療機器や半導体製造装置、燃料電池などの分野で受注拡大を図り、事業の成長に結びつける。
今回は茨城工場の隣接地約1万3000平方メートルの土地を新たに取得し、その一部に組立工場を建設した。組立工場は平屋建てで、建築面積は約1500平方メートル。工場内部には気圧を陽圧に制御して防塵・防虫に対応できる組み立てスペースなどを整備する。
同社は現在も茨城工場の既存の工場棟で組み立てを手がけているが、組立工場の新設で従来よりも精密な組み立て品などに対応の幅を拡大できる。増田武夫社長は「人材育成にも取り組みながらレベルの高い組み立てにチャレンジしていきたい」と話している。
岡田鈑金は板金加工だけでなく、溶接や塗装、組み立ての一貫生産体制を持つ。顧客の要望に応じて複数の部品を組み合わせて半製品に仕上げて供給できる強みがあり、今後はこうした受注活動をさらに強化する。
今回で茨城工場全体の敷地面積は約6万平方メートルに広がった。拡張した用地の活用方法は、組立工場の建設以外は現時点で未定だが、将来は需要動向に応じてさらなる生産拠点の開設も視野に運用していく方針だ。