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業種・地域から探す
〝真〟の地域活性化に向けて 会議所・金融機関トップに聞く
長引いたコロナ禍が収束し、インバウンド(訪日外国人)が復活している。また、来年には「2025年大阪・関西万博」も開催され兵庫・神戸が活気づいてきた。ただ、産業界にとってはエネルギー価格の高騰や人手不足など、対処すべき課題も多い。地元の盛り上がりを〝真の意味で〟地域活性化にどうつなげるか。川崎博也神戸商工会議所会頭(神戸製鋼所特任顧問)と武市寿一みなと銀行社長に聞いた。
雇用産み続ける産業育成必要
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神戸商工会議所会頭 川崎 博也氏
―2024年の神戸経済の展望は。
「23年は新型コロナウイルス感染症の5類移行で人流や消費、インバウンドが回復し、景気が好転した。24年は(日銀が指摘する良い物価上昇である)『第2の力』が強まり、賃金と物価上昇の好循環の世界に突入できるかが課題だ。大企業のみならず中小企業が賃上げできるよう、25年大阪・関西万博を活用して神戸に来てもらうなどの取り組みで、売り上げ拡大あるいは原資確保につなげてもらうことが必要だ」
―会頭自らの発案で23年9月、県立高校の生徒と「これからの神戸」をテーマに意見交換しました。
「30年先を見たときに、中堅として企業や神戸を支えるのは今の中学生や高校生だ。神戸には大学がたくさんあるが、東京や大阪に就職し、戻ってこないことが課題。若者に関心を持ってもらい、雇用を生み出し続ける産業の育成が必要だ。加えてケミカルシューズや日本酒などの伝統産業も神戸にとって重要な産業だが、意外と若い人たちに知られていない。新しい産業と伝統的な地場産業の両方を若い人たちに知ってもらう必要がある」
―神戸では医療産業が育ってきています。
「神戸医療産業都市(KBIC)はメディカルの〝芽〟に加え、バイオ分野でも極めて重要なスタートアップが育ってきている。プラスチックは石油由来だが、微生物が二酸化炭素(CO2)を原料にプラスチックを作る技術を持つ会社が実際に生まれている。大きなビジネスチャンスだ。またバイオからフードテックやアグリカルチャーの世界に入っていける可能性もある」
―水素産業の育成も重要です。
「燃料電池車(FCV)は10年前の想定よりも普及が遅く、電気自動車(EV)が台頭している。とすると、熱需要の水素への置換が重要になるのではないか。神戸空港島には(世界初の液化水素荷役実証ターミナル)『Hy touch神戸』がある。(神戸空港島と連絡橋でつながる)ポートアイランドはホテルや病院があり、どれだけ熱需要があるか把握することが重要だ」
金利動向見据え、顧客にきめ細かく対応
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みなと銀行社長 武市 寿一氏
―マイナス金利解除に向けた対応について聞かせてください。
「お客さまの動向については個人・法人ともに表面金利に敏感であり、きめ細かな対応が必要だ。個人向けでは今後、短期金利が上昇した場合、住宅ローンの約9割を占める変動金利利用者の返済負担が増加する。一方、当社の変動金利利用先の約8割に対しては、返済額が5年間変わらない『5年ルール』や、返済額の増加を1・25倍までとする『125%ルール』を設けており、急激な返済負担の増加は回避できると考えている」
「他方、法人向けでは長期金利の上昇により長期固定金利は上昇したが、短期金利は横ばい。現時点においては、金利上昇に備えた貸出金の金利固定化の動きは見られていない。こういった対応に向けては、現在、事務手続きだけでなく金利動向などについての研修を進めているところだ」
―預金戦略については。
「2023年8月の、地銀・第二地銀の流動性預金比率ランキングにおいて、当社は地銀99行中8位で、流動性預金の比率は高い。そういった意味では、金利が上がった時に収益効果が出やすい銀行といえる。従って地道ではあるが粘着性の高い流動性預金吸収に注力し、高金利付与による獲得は行わない考えだ。ただ、お客さまに対する融資シェアと預金シェアを比べた場合、融資シェアの方が大きいため、課題としては預金シェアの拡大に務めなければならない。そのために、こういった課題に対する成果を業績評価に組み込んだ」
―事業者の事業再構築に向けた支援の取り組みを教えてください。
「本部において、コロナ禍に起因する支援については落ち着いているものの、今度は原材料の高騰や人手不足による業績悪化も想定されるため、重点管理先を180社に増やした。これに伴って営業店の支援体制の整備も進めている。加えて、兵庫県の『中小企業経営改善・成長力強化支援事業』による伴走型支援事業などにも取り組んでおり、こういった多様な支援を行うには、本部の支援体制だけではカバーしきれないと考えている。そのため23年4月、事業性融資を取り扱う全ての店舗を対象に、融資オフィサーが関与する支援体制の整備を完了。案件組成力の向上や管理体制を強化した」