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兵庫・神戸産業界
神戸市の中心部である三宮エリア(中央区)で、大規模な再開発事業が動き出した。神戸市役所の新庁舎や高速バスターミナルを備えた再開発ビル、JR西日本の新駅ビルといった超高層ビルが相次いで建設される。神戸市では1995年の阪神・淡路大震災の影響で、長らく再開発が停滞。関西の中でも大阪や京都と比べて中心部の整備が大きく遅れていた。震災から30年近くを経て、ようやく新しい都市の姿を現し始めた。国際競争・都市間競争において選ばれるための魅力や価値の創造を急ぐ。
企業・地域の成長発展サポート ―金融機関トップに聞く―
兵庫・神戸ににぎわいが戻る一方、円安や人手不足など地域の事業者を悩ませる課題も依然として残る。金融機関にも連携強化などこれまでとは異なった支援の取り組みが求められる。地域金融機関としての取り組みを奥山浩己日本政策金融公庫神戸支店支店長と武市寿一みなと銀行社長に聞いた。
政策金融を的確に実施/日本政策金融公庫 神戸支店支店長 奥山 浩己 氏
―社会経済活動が再開されています。地域企業の景況感は。
「当公庫が行っている兵庫県中小企業動向調査では、規模別・業種別で若干まだら模様だと見ている。『令和6年能登半島地震』の影響など自然災害や国際関係の急速な変化、物価高や人材不足の課題も重なり、地域を支える中小企業・小規模事業者、農林漁業者などは依然として厳しい事業環境にある。未来を担う事業者がその事業を継続し、成長・発展の歩みを着実に進めることが大切。その取り組みに寄り添うため、引き続きセーフティーネットとしての機能を果たしていく」
「現在、当公庫では非常時に強い体質づくりのため、ひと月に最低1回、できれば2回の在宅勤務を奨励。有事対応業務に慣れておくことに加え、ワークライフバランスの向上を図っている」
―新たに「使命」を明文化しました。
「当公庫は創設から15年、お客さまや地域を取り巻く環境が大きく変化する中、その時々の課題への対応に取り組んできた。民間金融機関の補完を旨としながら政策金融を的確に実施し、ステークホルダーから信頼される存在を目指してきた。こうした中〝使命〟として明文化したのが『政策金融の担い手として、安心と挑戦を支え、共に未来を創る。』である」
「安心を支えるというのはセーフティーネットとしての機能、挑戦を支えるというのは成長・発展の後押しである。こういった役割をしっかり行い業務に取り組んでいく」
―そして〝共に未来を創る〟とは心強いテーマです。
「地域の各関係機関と共にお客さまを支えることで地域の維持・発展に貢献し、日本の未来を共に創るという想いを込めている。新事業支援については、神戸支店では7月にANCHOR KOBEで『フードテック』をテーマとした第4回目のスタートアップピッチイベントを開催予定。神戸市や神戸商工会議所、金融機関や大学と連携して支援する」
「海外支援事業については、海外展開に取り組む事業者に向け、クロスボーダーローンやスタンドバイ・クレジット制度、トライアル輸出支援事業などを積極的に活用。加えて、兵庫県内に本店を有する9つの地域金融機関にも参加いただいている『海外ビジネス支援パッケージ(地域版)』を活用しながら、中小企業基盤整備機構や日本貿易保険など地域の支援機関とも連携し、きめ細かく切れ目のない支援を行っていく。その他、事業承継支援についても、神戸商工会議所や兵庫県生活衛生同業組合連絡協議会などとの連携強化を図る方針だ。地方公共団体や各種支援機関、民間金融機関と顔の見える関係を強め、地域活性化を点ではなく面として支援していく」
システム統合 利便性向上/みなと銀行社長 武市 寿一 氏
―今年4月、みなと銀行を含む4銀行が、りそなホールディングスの下に並ぶシンプルな体制になりました。シナジーの狙いは。
「ひと言で表現すると、視界が広くなった。当行は兵庫県に特化した銀行であり、目指す〝真の県民銀行〟の姿としては目下、埼玉りそな銀行をモデルとしている。兵庫県と埼玉県は経済マーケットが同規模であり、2行の取り組みにも似通ったものがある。この4月から社外取締役を相互に派遣し、情報交換を強化している」
「2018年の経営統合以降、グループシナジーは徐々に高まっているが、23年度時点で12億円に止まっている。今回のガバナンス体制変更を機に、埼玉りそな銀行のビジネスモデルを吸収することで、シナジー収益の積み上げを加速させる。28年度までにシナジー収益を23年度比でプラス30億円としたい」
―25年1月にはシステム統合も行います。特に注力することは。
「『プレミアビジネス』『セールス&トレーディング』『決済ビジネス』の三つを重点ポイントに掲げている。富裕層(プレミア)ビジネスについて言えば、当行は投資信託残高ランキングにおいては第二地銀で断然トップ。地銀、第二地銀を含めた全99行でも11位であり、個人への販売力に強みを有するが、残念ながら商品販売型営業になっている」
「その点、埼玉りそな銀行は貸借対照表(B/S)全体に着目した総資産管理型営業ができており、こういった取り組みをしっかりキャッチアップ。富裕層を担当するプレミアコンサルタントを現在の5人から30人へ増員し、商品販売型営業から総資産管理型営業へシフトチェンジすることで富裕層のニーズに幅広く応える体制を構築する。そのために現在、出向者の受け入れや研修派遣など、りそな銀行や埼玉りそな銀行との情報連携を強化している」
「『セールス&トレーディング(法人外為売買収益・デリバティブ収益)』についても、人員・体制の刷新などを含めたグループ一体運営へ移行することで、〝提案力の強化〟と〝スピーディーな対応〟を実現。システム統合後には、お客さまの利便性が大幅に向上する。その他、7月より『ターゲットフォワード(TARF)』の取り扱いも開始予定で、この分野も伸ばせると考えている」
「『決済ビジネス』についてもシステム統合により〝りそなグループアプリ〟や〝グループアプリforビジネス(社長アプリ)〟など利用できる予定商品が大幅に増える。そのほか、りそなホールディングスが資本業務提携しているデジタルガレージ社の商材も加わるため、決済分野での利便性が大きく向上し、利用者増加が見込める」