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兵庫・神戸産業界
神戸市の中心部である三宮エリア(中央区)で、大規模な再開発事業が動き出した。神戸市役所の新庁舎や高速バスターミナルを備えた再開発ビル、JR西日本の新駅ビルといった超高層ビルが相次いで建設される。神戸市では1995年の阪神・淡路大震災の影響で、長らく再開発が停滞。関西の中でも大阪や京都と比べて中心部の整備が大きく遅れていた。震災から30年近くを経て、ようやく新しい都市の姿を現し始めた。国際競争・都市間競争において選ばれるための魅力や価値の創造を急ぐ。
震災30年目前に、大規模再開発加速
三宮エリア 利便性向上
三宮地区の再開発構想そのものは、阪神・淡路大震災前までさかのぼる。しかし震災で立ち消えとなり、まちづくりの最優先課題は再開発から復興へと移行することになった。これには理由がある。神戸市中南部の長田区が大きな被害を受けるなど、まずは安心安全な生活を送れるように市域を整えなければならなかった。そのため神戸の未来を作る取り組みが遅れてしまったという。結局、神戸市が三宮再整備基本構想を発表したのは2015年。震災から20年が経過していた。
その再開発計画が23年に入り、目に見える形で動き出した。JR三ノ宮駅東側の神戸市中央区役所などが建っていた神戸三宮雲井通5丁目地区を、中・長距離バスのターミナル拠点にする再開発ビルが昨秋着工。さらにJR西日本の駅ビルがこの3月に起工式を行ったばかりだ。
震災で上層階がつぶれたため下層階のみ使用し続けていた神戸市役所本庁舎2号館も、20年にようやく解体工事に着手。25年には新庁舎を着工する計画。これらが30年までに相次いで完成し、三宮の街並みが大きく変わりそうだ。
国際競争力高める機能も
雲井通5丁目の再開発ビルは1階部分にバスの乗降場を整備する。三宮駅周辺に散在するバス停を集約することで乗客の利便性を向上する狙いがある。そのほか低層階に商業フロアと文化ホール、中層階に図書館やオフィス、高層階にホテルを誘致する計画だ。このほど神戸市が概要を発表した図書館は、「美しい知と情報のゲートウェイ」をコンセプトとする。地域の図書館機能という役割を果たすだけでなく、三宮という都市部の立地から「働く世代」をターゲットに絞った上で約11万冊を所蔵する方針。文化ホールとつながった構造のため、ホール来場者が舞台や音楽について見識を深められるような工夫も行っていく。さらに10階屋上には屋上庭園を整備するなど、国際競争力を高める都市機能を導入する。
医療産業都市とも連携
一方、神戸市役所本庁舎2号館の新庁舎は28年度の完成を予定する。市役所の機能のほか、オフィスやラグジュアリーホテルなどが入居する複合型施設にする。市役所とホテルやオフィスが入居するのは、全国的に珍しい形態となりそうだ。駅から神戸港に向かうメーンストリートの中間地点に位置するだけに、集客機能を持たせる。市内最大規模となる約2万2300平方メートルのオフィスも有する。2号館の跡地の一部には、市庁舎全体の消費エネルギーを管理する施設もできる。各庁舎と隣接する中央区役所を相互に容易に移動できる空間としての役割も果たす。
JR西も三宮のオフィス需要に期待している。新駅ビルには商業施設やホテルとともに、オフィス空間を約7000平方メートル確保する。三宮エリアおよび同社グループの開発件名におけるオフィスと比較しても決して規模の大きなものではないが、市場調査により三ノ宮は十分なマーケットがあると判断した。JR西が掲げる「ワークプレイスネットワーク」の中核の一つに位置付け、「新しい価値の提供を目指していきたいと考えている」(JR西)という。近隣の都市圏との相乗効果を発揮することで、日本最大級のメディカルバイオクラスターの神戸医療産業都市などと連携しながら関西全体の活性化に貢献する方針だ。
元町周辺の街づくり検討
一方、神戸市の中心部では三宮のほか、兵庫県庁が立地する元町エリアでも再整備が検討されている。23年5月に県と神戸市、JR西で構成される「元町周辺まちづくり研究会」が発足し、議論が始まった。元町の再整備の主要テーマは、県庁周辺の県有地の土地活用と元町の回遊性向上が挙げられている。
老朽化で耐震強度が不足する県庁舎の1、2号館を建て替えて再整備する計画が議論されていたが現在、白紙に戻されている。同庁舎は26年度に解体作業が始まり、その跡地は暫定的に市民緑地として整備される計画。また元町の回遊性向上については、JR元町駅の西口周辺のバリアフリー化が検討されている。元町駅西口の北側は現在長い階段となっており、エスカレーターなどは設置していない。南側には中華街など観光地もあることから、元町周辺を南北に移動できる動線の改善が求められている。今後、県は神戸市やJR西日本と連携し西口周辺の整備を進めていく。