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水素インフラ技術
2024年10月、水素社会推進法が施行された。これに伴い国はエネルギーとしての水素の普及に向けた支援を強化している。同法成立の背景には50年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を目指し、水素およびアンモニア・合成メタンなどの水素化合物の供給拡大による水素社会の実現を急ぐ国の方針がある。そのため水素の製造・運搬・貯蔵・利用の一連のサプライチェーン(供給網)構築も課題となっている。
「低炭素水素等」を定義
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水素を充填、利用場所まで運搬し電力供給を行う三菱化工機の「水素吸蔵合金配送システム(三菱化工機提供)
使用しても二酸化炭素(CO2)を排出しない水素は環境負荷の低いエネルギーだが、その製造の際に化石燃料が使われる場合がある。そこで今回の水素社会推進法では「低炭素水素等」を定義。水素を製造する際に排出されるCO2の量が一定以下、または「水素等」に含まれる合成燃料などの利用が日本のCO2削減に寄与するものであることが定められた。
水素は国内の再生可能エネルギーを利用して作ることもできるため、エネルギー自給率の向上にもつながると期待されている。国は水素等製造事業者の事業計画を認定して資金補助などを行うほか、既存の燃料に比べ割高な水素価格に対する値差支援を行う。
インフラ整備進む
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タツノはFCVに水素を充填するための設備を開発(タツノ提供)
気体である水素は常温常圧下では体積が大きく燃えやすいため、そのままでは輸送が非常に困難だ。通常は液化したりアンモニアなどの水素化合物(水素キャリア)にしたりして運搬することが多い。液化やアンモニア製造の設備や貯蔵タンク・輸送パイプラインなどのインフラの整備に関しても、同法による資金援助が行われる。また高圧ガス保安法や港湾法などの特例措置が適用されることで、輸送設備の設置・運営が円滑になる。
水素利用促進のためには水素ステーションの整備は欠かせない。この整備が進めば、燃料電池車(FCV)が利用しやすくなるため普及が進むことが期待できる。現在、全国の水素ステーションの数は25年4月24日時点で154カ所(次世代自動車振興センター調べ)。
同法による支援が進めば、各地で水素の利用のハードルが下がるだろう。また、国内の再生エネ由来の水素の価格は、ガソリンなどと違い国際情勢の影響を受けにくいため、エネルギー価格の上昇に強いモビリティー社会の実現にもつながると期待される。
国は25年度予算で水素等拠点整備支援事業に57億円、GXサプライチェーン構築支援事業に610億円を計上。今後も水素社会の実現に向け、水素関連のインフラの重要性は高まると見込まれる。