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ホーニング加工機と関連機器・技術
製造業では高精度・高品質化が進み、製品を構成する部品一つひとつに高い品質が求められている。ホーニング加工はこうした要求に応える技術のひとつ。部品内径の精度を高め、摺動(しゅうどう)性を高めるなどの効果をもつ。近年では社会課題となっている人材不足に対応するため、新たな機能の追加や工程集約などが進んでいる。
精度、量産性に優れた内面加工
ホーニング加工は加工対象物(ワーク)の内径を精密研磨する加工方法。機械部品などの内径を滑らかに仕上げる場合に用いられる。棒状の砥石(といし)をホーンと呼ばれる円柱状の工具に取り付け、砥石を加工物の内径に押し付けて回転、一定の面接触状態を保ちながら往復することで研磨する。加圧、回転、往復の3運動を組み合わせることで効率的な研磨ができるのが特徴だ。鋼材やチタン、ステンレス、セラミックなど幅広い素材にも対応する。シンプルな加工方法ながら、高い内面精度が得られるとさまざまな機械部品に用いられてきた。
またホーニング加工では、加工面に細かい網目状の模様(クロスハッチ)が発生する。クロスハッチが潤滑油を保持するため、金属同士の摩擦を抑制し、摺動を滑らかにする効果が得られる。特にエンジンシリンダーの内面仕上げに欠かせない技術として知られている。
電動化で需要に変化
一方で電気自動車(EV)化の流れにより新たな需要も生まれている。EVはエンジン音がしないため、車体のわずかながたつきも雑音として聞こえやすく静粛性がより求められる。車体全体の静音化を実現するためには、あらゆる要素部品の精度を高めることが必要となる。特にギアボックスの部品などで導入が進む。同様の内面加工法である内面研削と比較して、ホーニング加工は円筒状のワーク加工時に得られる真円度や加工精度が高い。
また加工時に熱が発生しにくいため、ワークの物理的な変質が少なく、不良品が発生しにくいこともメリットのひとつだ。変質の主な原因は機械による加圧と、加工時に発生する熱が原因。ホーニング加工は、一般的な研削に比べ低速度、低圧力で加工し、砥石とワークの接触面積も広い。そのため砥石をワークに押し付ける力が分散し、加圧による変質はほとんどない。さらに切削油で冷却しながら加工するので切削熱の発生も少なく、熱による加工表面の劣化も起こりにくい。品質安定性が高く、量産にメリットがある。精度・量産性の両面から、モノづくりにとって重要な仕上げ加工として注目されている。
一方でホーニング加工は仕上がりが前加工の精度に大きく左右されるというデメリットもある。前加工段階で凹凸があるなど、加工精度に問題がある場合の修正は困難だ。製品によっては内面研削との使い分けも必要とされる。
工程集約し効率化
メーカー各社は、ユーザーのニーズに応じてさまざまなホーニング加工機や関連機器を開発してきた。たとえば、製品の見た目を重視しクロスハッチのない鏡面加工仕上げが可能なホーニング加工機や、クラウン形状、逆クラウン形状など特殊な内径研磨を得意とする加工機などが開発されている。
また人材不足など社会課題の解決を目指す加工機の開発も進む。ワークの穴の内径計測機能をもった加工機を開発した企業もある。ツール内部にエアマイクロメーターを組み込むことにより、自動で高精度に内径を測定する。
従来はワークを機械から取り外し、手作業で内径を計測するのが一般的だった。ワークを取り付けたままで作業中に計測できる。さらに指定した内径まで削ると止まるように設定も可能にし、効率的に一定の品質での製造ができる設計とした。
また、計測機能を別軸としてではなく加工軸のツール内部に導入することで、1軸分のスペースで対応可能。これにより、顧客の要望に合わせた多軸化への対応が容易となる。
10月22-25日まで、名古屋市国際展示場(ポートメッセなごや、名古屋市港区)で開催された工作機械見本市「メカトロテックジャパン2025」でもさまざまなホーニング加工機が展示された。
1本で荒加工と仕上げ加工に対応できるツールを採用したホーニング盤は、工程集約を訴求した。荒加工用と仕上げ加工用の設備を2台並べるよりも省スペースで導入コストも低く、搬送の移動時間が短縮できるため、生産性向上につながるという。また、オプションに簡易内面研削機能を備えたホーニング加工機も展示された。内径加工、ホーニング加工、ハンドラップの3工程を集約できる。
