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阪神・淡路大震災から30年
災害への備え 防災・減災を考える
人命・暮らし・経済守る取り組みが求められる
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災。その後も日本列島は新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震、そして2024年元日に発生した能登半島地震など、震度7を超える地震に襲われている。昨年8月には宮崎県日南市でM7・1の地震を観測し、気象庁が「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を初めて発表した。注意情報は1週間後に解除されたが、政府の地震調査委員会は25年1月15日、南海トラフ地震が起こる確率を今後30年以内に「70-80%」から「80%程度」に引き上げた。また首都直下地震も30年以内に発生する確率が70%とされている。人命、暮らし、経済を守るため、防災・減災の取り組みを着実に進めることが求められている。
南海トラフに備える
気象庁は2025年1月13日の日向灘を震源とする地震においても「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」を発表し、評価検討会を開いた。発生可能性が平常時より相対的に高まったとは考えられないとして、約2時間後に「調査終了」とされたが、引き続き地震への備えを確実に実施しておくよう呼びかけた。
内閣府は南海トラフ地震における経済の直接的な被害額を約220兆円と推計する。これは東日本大震災の被害額16・9兆円をはるかに上回る。一方で経済的な被害は「被災する量そのものを減ずる」「被災の影響を極力小さくする」「できるだけ早い復旧・復興を図る」ことで減らせるとし、事業継続計画(BCP)の策定・充実など、企業や地域、個人などがそれぞれの役割で取り組むべき対策を示している。
早期復旧のために BCP策定を
地震のみならず、豪雨災害やコロナ禍のような感染症の蔓延、サイバーテロ、サプラチェーンの寸断など昨今の経営上のリスクは多様化している。これらの事象に脅かされたとき、事業を中断させない、中断しても可能な限り短期間で復旧させるための方針や体制、手順などをまとめたものがBCPだ。
さらにBCPの策定を含め、計画遂行のための予算確保や取り組みを浸透させる活動・訓練、さらにその点検、継続的な改善を行う取り組みを事業継続マネジメント(BCM)と呼ぶ。内閣府の「事業継続ガイドライン」では計画策定後も事業継続能力を向上するため、BCMの導入も強く推奨されている。
「令和6年版 防災白書」によると2023年度時点でBCPを「策定済み」の大企業が76・4%。「策定中」が9・2%だった。一方、中堅企業では「策定済み」が45・5%。「策定中」の12・1%を合わせても半数超にとどまっている。
BCPは自治体、医療機関など企業以外においても重要だ。南海トラフ地震の発生に切迫性が増す中、社会を支えるさまざまな機関で計画策定が急がれるとともに、その実効性の検証、継続的な改善の取り組みが欠かせなくなっている。
耐震化の現状
阪神・淡路大震災では建物の倒壊が大きな人的被害をもたらした。これを教訓に耐震化が進んだが、2024年1月の能登半島地震では古い木造住宅の倒壊が相次いだ。
国土交通省が発表した2024年4月時点における住宅の耐震化率(新耐震達成率)の全国平均は約87%。国は30年に「おおむね解消」の目標を掲げているが、木造住宅のみの耐震化率は追いついていないのが実情だ。
都道府県別の耐震化率を見ると、埼玉県の93・3%など10都道県が90%を超えている。台風対策でコンクリート住宅が多い沖縄県や耐雪仕様の北海道が90%を超えており、土地柄も見受けられる。その他の府県も多くが80%をクリアし、90%に迫る自治体も増えてきた。08年時点の調査では80%台が8都道府県しかなく、70%台が34府県、60%台が5県。全国平均は79%だったことから着実に進んでいることが分かる。
一方でこの数値には隠れた課題がある。石川県では金沢市の耐震化率が20年度末時点で88・9%なのに対し、地震被害の大きかった輪島市は22年度末時点で46・1%だった。同じ県内でも大きな地域差があり、こうした状況はほかの都道府県にもある。古い住宅が多く高齢化が進む地域では、意識や費用面で耐震化のハードルが高いとみられる。
国は南海トラフ地震の想定される建築物の全壊棟数を約250万棟からおよそ5割減少させる減災目標を掲げる。国の耐震化目標である30年の「おおむね解消」や、自治体が独自に定めた目標に達しているところがまだない中、こうした都道府県内の地域差を解消していく取り組みが期待される。