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グレーチング
グレーチングは、道路の側溝や集水ますなどにかぶせる格子状のふた。歩道や公園、工場などさまざまな場所に設置され、人や車両の落下を防ぎ、通行を可能にする。注目する機会は少ないが、安全な暮らしを支える重要な製品だ。近年では歩きやすい街づくりを支える製品として、安全性と景観を兼ね備えた目の細かいものや、敷石に溶け込むデザインのものが主流となりつつある。また新型モビリティーの走行を考慮した安全対策や、人材不足に対応するため、設置が簡単で長寿命な製品の開発も進む。グレーチングメーカー各社は、変化する需要に対応しながら人々の暮らしを足元から支えている。
安全な暮らしを支える
歩きやすさ高めた製品に需要 すべり止め性を向上
グレーチングは道路や橋梁(きょうりょう)に設置する溝ふたで、排水性を保ちつつ歩行者や車両の安全を守る役割を担っている。最も一般的なのは鋼製で網目状の構造をしたものだが、設置される環境により網目の幅や素材、色などさまざまな種類が存在する。
従来は「並目」と呼ばれる幅3センチメートル程度の網目状のものが一般的だったが、近年は通行人の多い市街地を中心に、網目の幅が狭い「細目」のグレーチングの設置が主流になっている。ハイヒールや杖、ベビーカーや車いすの車輪が落下する危険を防ぎ、多様な歩行者が安全に生活できるようグレーチングは日々進化を続けている。
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表面に独自の凹凸模様をつけすべり抵抗を向上した(提供:ダイクレ)
グレーチングの安全対策として、表面に凹凸を付けたすべり止めを標準仕様とするメーカーもある。すべり抵抗値(BPN)40を鋼製のグレーチングとして初めて実現した製品では、バーに独自の凹凸模様を施すことで摩擦を増やし、すべり止め機能を向上させた。3次元(3D)解析によるシミュレーションを用いて、生産性と実用性を両立した。
このメーカーではすべり止め付きグレーチングを標準仕様とするだけでなく、生産性を確保したことで価格も従来製品と変わらず提供している。BPN40はアスファルトやコンクリートにおいて、歩行者が安全かつ円滑に利用できる基準とされる。
また、全国で都市部の再開発が活発化し、環境デザインを重視した歩行者が歩きやすい街づくりが意識されるようになっている。こうしたニーズにより設置が進むのが、スリット状のグレーチングだ。従来のグレーチングよりも景観に溶け込みやすく、洗練された空間づくりに役立つとして人気を集めている。一方、網目のグレーチングより水が通るすき間が狭く、排水性に劣るという課題もある。断面がT字状になる素材を使い排水性を確保するなど、構造に工夫をこらすメーカーも多い。
自転車道の普及に対応
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一般的な製品(提供:ダイクレ) -
タイヤをはまりにくくした製品(提供:ダイクレ)
また、近年では歩行者と自動車以外にも考慮すべき要素が増加している。特に設置が進む自転車道では、路面に設置するグレーチングもタイヤがはまりにくく、ハンドルを取られにくいなど運転者にとって安心して利用できるものが求められる。2024年に国土交通省が出したガイドラインでも、グレーチングの格子や形状への言及がなされている。さらに、新たなモビリティーとして普及している電動キックボードも自転車道を利用するため、安全に走行できるよう考慮に入れる必要がある。
こうした時代の変化に応えるため、メーカーが取り組んでいるのが従来よりも格子を細かくしたグレーチングの開発だ。これまでのグレーチングは網目が長方形で、自転車の進行方向によってはタイヤが網目にはまりやすいのが課題だった。そこで網目の形を正方形に変更し、従来よりも目を細かくすることでどの方向から自転車が走行した場合でもタイヤがはまりにくい製品も登場している。目を細かくすることで表面積が増え、自転車よりタイヤの径が小さい電動キックボードでも安全に走りやすい設計とした。
社会やモビリティーの変化に伴い、道路を走行する車両も変化を続けている。人々が安心して移動できる道路づくりには、グレーチングメーカーの工夫が不可欠な要素となっている。
自治体名記載で盗難を抑制
鋼材価格の高まりを受け、グレーチングの盗難が多発する。道路のグレーチングは国や地方自治体などが税金を用いて設置しているため、盗難防止対策を求める声も多い。
こうした状況を受け、メーカーではグレーチングをボルトや専用の金具、鎖などで受枠に固定して取り外しにくくする製品や、グレーチング同士を金具で連結し、持ち上げにくくする製品などさまざまな防止策を開発している。既設のグレーチングにも取り付けられる仕様の製品だけでなく、設置時に防犯対策を施すものもある。例えば、バネの力を利用した金具を用いて固定するタイプでは、特殊な工具でしかグレーチングの着脱ができないため、盗難は困難だという。
一方で、もし盗難されても盗品と分かるよう、グレーチングに自治体名や地名を刻印したいという需要もある。グレーチングそのものに自治体のロゴマークなどを入れた特注の製品や、金具を用いて既設や汎用のグレーチングに後から自治体名をつけられる製品などを開発し、提供している。
メーカーによると、自治体名を記載することで転売しにくくなるため、盗難そのものを抑制する効果も期待できるという。
人手不足に貢献 取り付けの負担を軽減
人手不足は建設業界でも深刻だ。工期の短縮が求められる中、作業者が設置しやすい製品の開発が重要になっている。
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一般的な細目グレーチングより軽量化した(提供:ダイクレ)
特に、近年歩道を中心に設置が増える細目のグレーチングは、バーの数が多いため重量が重く、設置作業に負担がかかるのが課題だった。そこで、細目を維持してタイヤなどがはまりにくい特徴を維持したまま、重量を軽くする製品の開発が進められている。例えば、バーと棒状の鋼材を交互に組み合わせることで、軽量化を実現した製品もある。施工時の作業者への負担を減らせるだけでなく、使用する材料も従来より削減することができる。
また、グレーチングを長寿命化させ取り換えの頻度を低減することも人手不足に対応するひとつの方法だ。材料を高耐久なものに変えるだけでなく、表面処理を施すことで腐食を防ぐ方法もある。溶融アルミニウムメッキは、一般的に防食に用いる溶融亜鉛メッキの約6倍の耐食性をもつ。こうした技術をグレーチングに取り入れることで、海岸など過酷な環境下でも寿命を延ばすことが可能だという。
メーカー各社は、独自技術とアイデアを生かし、安全な道づくりに貢献している。
