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ガスタービン・ガスエンジン
水素はカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ、CN)の実現に向けた燃料として期待されている。生活インフラを支える発電用ガスタービン、ガスエンジンでも同様だ。三菱重工業や川崎重工業はそれぞれの事業の経験を生かし、将来的な水素の本格運用を見据えた技術開発、実証で実績を積み重ねている。
水素30%混焼 成功
ガスタービン
三菱重工の火力発電用大型ガスタービンは世界首位の座を固めつつある。そのマザー工場である高砂製作所(兵庫県高砂市)はガスタービンの長期発電実証をする世界唯一の工場だ。
同製作所で注目されているのが「高砂水素パーク」だ。水素製造から発電まで技術実証する。ガスタービンの水素混焼試験も同製作所で実施されている。2023年には水素30%混焼に成功するなど、実用化に向けた技術開発を積み重ねている。さらなる水素比率の引き上げに向けた水素貯蔵設備の増設、実証試験に向けて取り組みが進む。
水素混焼・専焼で重要なのが燃焼器。水素の特性として逆火発生リスクや窒素酸化物(NOx)を低減する「水素専焼用マルチクラスタ燃焼器」の開発を進めている。中小型ガスタービン向けの燃焼器の実圧試験では、実機定格負荷相当の燃焼温度に到達し、実機検証に向け開発を進めている。
発電プラント 運用開始
ガスエンジン
ガスエンジンでも水素活用の動きが進む。川重は10月から神戸工場(神戸市中央区)で体積比30%水素混焼のガスエンジン発電プラント実証設備の運用を開始した。同設備で発電した電気は同工場で使用している。
高圧水素ガストレーラーによる水素供給設備と都市ガスへの水素混合ユニットを設置し、水素を5ー30%の任意の割合で混合可能にした。水素混焼に対応した改修を見据え、既存のガス発電事業向けエンジンの改造を極力少なくした。
水素を体積比30%混焼することで、都市ガス専焼に比べて二酸化炭素(CO2)を大幅に削減可能で、環境負荷低減にも貢献。川重は25年に発電設備の水素混焼モデルの市場投入と水素混焼への既設エンジン改造工事の展開を予定している。
CNに向けた水素・アンモニアの本格運用にはインフラと実用時の価格面が整備されることが前提となるが、各社は技術面で実証実績を着実に進めており、本格運用開始時に成果として花開くことが期待される。