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「フクイノベーション」福井のグッドカンパニー2025
福井のグッドカンパニー②
松浦機械製作所 社長 松浦 勝俊 氏/新体制、地に足着けて着実に
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松浦機械製作所 社長 松浦 勝俊 氏
ー2025年は創業90周年の節目の年です。
「90周年に合わせて、武生事業所(福井県越前市)に新生産棟を整備した。従来、本社(福井市)と武生に分散していたマシニングセンターの組み立てを、武生事業所に集約した。生産能力は従来より約2割増える見通しで、新体制がうまく回るようにこの1年は地に足をつけて着実に進める」
ー25年の展望は。
「悪くなる要素がない。米国では第2次トランプ政権の経済政策が追い風となり、防衛や宇宙、医療機器分野で設備投資が見込まれる。欧州は地域や産業によってまだら模様だが底堅い。日本にはまだそこまでの手応えはないが、24年よりは良くなると信じている。当社としては、モノづくりの効率化に向けて、開発設計から製造、アフターサービスまでを統合管理するPLM(技術情報管理システム)の更新を進める」
ー国内製造業の生産設備の“ビンテージ化”による、競争力低下が不安視されます。
「ビンテージ化の明確な定義はないが、中国などの新興国では、稼働から10年近くたつ機械はビンテージと呼ぶ感覚がある。一方、日本では稼働から15年以上たつ機械も現役ということが珍しくない。日本人の職人気質や、設備の償却年数の長さなどが起因しているのだと思う。これが将来、ボディーブローのように日本の競争力に効いてくる可能性がある。工作機械のメーンユーザーは日本の産業を下支えする中小企業。国が中小振興のため、設備更新に対する支援策などを具現化すれば、機械メーカーとしてありがたい」
セーレン 社長 山田 英幸 氏/インドなど成長市場に投資
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セーレン 社長 山田 英幸 氏
ー自動車用シート材など車用内装材が成長のけん引役です。2025年の展望は。
「内装材が好調で25年3月期は4期連続の最高業績更新を見込んでいる。地域的には東南アジアが好調。中国も日系自動車メーカーが苦戦しているが、現地メーカーからの採用が進み、想定より上振れしている。注力する合皮の次世代シート材製品『クオーレ』も好評。耐久性が高く本革の約半分の軽さが特徴で車体重量低減に貢献するため、自動車の燃費向上という観点から多様な自動車に通用する製品だ。特に高価格帯の車両で採用を見込んでいる」
ー他事業も伸ばします。
「自動車の基幹部品や電化製品などへの採用が見込まれる炭素繊維シート製品に注力している。強みは炭素繊維の課題である保管の温度管理が手軽で、硬化工程を短縮できる点。量産化に向けた評価を着実に獲得している。超小型衛星の製造事業も国内外から引き合いが増えている。24年度は年間で約6基製造したが、25年度以降は年に10基、20基と伸びていく。30年度には主要部品の組み立てなども含めて200基程度を製造できる体制を構築したい。将来、開発や開発初期の量産を手がける拠点を整備する構想もある。国内宇宙産業の中心地である関東エリアなどが候補地だ」
ー国際情勢が不安定です。
「中国の経済状況や米国の関税動向などが懸念される。ただ、当社は従前から生産能力をグローバルで分散し、リスクヘッジしてきた。地産地消の考えの元、インドやインドネシアなど成長市場への投資を今後も進めていく」
イワシタ 社長 岩下 大介 氏/情報発信・デジタル営業強化
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イワシタ 社長 岩下 大介 氏
ー顧客ニーズに応じたカスタマイズ、オーダーメードの工作機械が強みです。
「従来の鉄やアルミニウム、その他の金属に加えて、ガラス、セラミックスなどの脆性材料にまで加工分野を広げている。長尺ワーク(加工対象物)の加工に適したマシニングセンターや特殊用途のオーダーメード工作機械を手がけるなど、ニッチな分野が当社の強み。ただ、ニッチ分野はボリュームが少なく、弱みにもなる。このため、対応できる加工分野の裾野を広げる。一例が、日本国際工作機械見本市(JIMTOF2024)で披露した、脆性材部品加工に特化した超音波研削盤だ。当社の提供できるソリューションの例としてPRした」
ー2025年の展望は。
「工作機械業界は24年より好調な先行きが予想される。ただ、それも経済活性化に力を入れる米国第2次トランプ政権の政策次第で、欧州の動向など含めて注視すべきだ。また、半導体市況の回復の遅れや自動車業界の成長への足踏み感などもある。個人的には期待し過ぎず、営業活動をこれまで以上に強化していく」
ー具体的な戦略は。
「会員制交流サイト(SNS)や技術系ウェブサイトの情報発信の内容を厚くし、デジタル営業を強化する。営業は足で回って稼ぐのも大切だが、いかに情報を発信し、顧客に見て貰うかも重要だ。事実として顧客からの問い合わせを分析すると『インターネットの情報を見て』というのが多い。現在の仕事の半分近くは、こういった問い合わせがきっかけになっている。当社のことを知ってもらうという意味で、情報発信能力を強化する」
ナック・ケイ・エス 社長 海道 和男 氏/ニッチ市場で日本一目指す
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ナック・ケイ・エス 社長 海道 和男 氏
ー国内シェア約4割で首位のカーブミラー(道路反射鏡)をはじめ、培った成形技術や加工技術などを強みに多彩な事業を展開しています。
「カーブミラー関連事業は売上高の約3割を占め、鏡面素材のアクリル樹脂製鏡面(国内シェア約7割)も手がけている。さらに幼稚園向けなどの繊維強化プラスチック(FRP)プールや化学薬品用などのFRPタンク、ホテル向けなどの浴槽、水族館の水槽やディスプレーなどに使う大小さまざまな大きさのアクリルパイプと、幅広い事業を展開する。大手企業とは違う切り口で、プラスチックのトータルメーカーとしてニッチ市場で日本一の目標を掲げている」
ー今年の重点施策は。
「意匠性やデザインが求められる幼児用プールは当社の強みが生かせ、中小企業ならではのスピード感で事業拡大を狙う。リゾートなどで需要が増えるプールや浴槽の案件対応も進行中。成長分野の陸上養殖向け水槽でも実績を重ねており、産学連携で循環システム含めた開発に取り組んでいる。半導体製造装置向け部品の樹脂素材は厳しいが、FRPタンクは国内での半導体関連設備の投資に合わせて需要が伸びており期待したい」
ー製造工程の機械化を進めています。
「これまで職人技で作ってきたが、2019年からの設備投資で生産性と生産効率を向上し、若い人が働きやすい環境を整えたことで、定着率が高まった。新卒採用は厳しいが、中途採用を増やして、人づくりを進めている。九州のグループ会社で外国人材の活用も始めており、ゆくゆくは福井でも考えていきたい」