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鍛造技術
鍛造技術は余分に材料を使わず、少ない工程で強靭な部品を作り出す。複雑形状の部品の大量生産にも貢献してきた。鍛造品の最大の需要先である自動車で電気自動車(EV)へのシフトが進む中、携わるメーカーではEV対応と併せて軽量化、高精度化などを推進。航空機分野など、採用領域の拡大に向けて、加工技術の進化に挑んでいる。
加工技術の進化に挑む
昨年の鍛圧機械受注 3年ぶり減少
鍛造は金属をハンマーやプレス機で目的の加工に成形する塑性加工のひとつ。機械部品の製造工程に欠かせない役割を担う。
関わる市場環境はコロナ禍の経済活動の再開で拡大した需要は停滞に変わってきた。
日本鍛圧機械工業会(日鍛工)がまとめた2023年(暦年)の鍛圧機械の受注実績は前年比1・7%減の3667億円で、3年ぶりに前年を下回った。後半から世界経済の低迷の影響から海外での設備投資の下振れが影響した。
輸出は同5・7%減の1173億円、国内向けは同0・1%の1597億円だった。
機種別ではプレス系機械が同0・1%減の1539億円。板金系機械が同5・5%減の1231億円。プレス系の内訳は前年比で、サーボ・プレス機械4・4%増、フォーミング3・9%増、油圧プレス32・5%減など。
単月ベースでも1月の受注額は前年同月比4・0%減で、4カ月連続の前年割れに。プレス系機械の減少が影響した。24年の受注見通しについて日鍛工は、3670億円と微増を予想している。
高精度化進める
鍛造には型打鍛造と自由鍛造がある。型打鍛造は目的とする製品の金型を作り、これをもとに加圧、成形する。寸法や品質面のバラツキが少なく、大量生産にメリットがある。
自由鍛造は金型ではなく、金敷と呼ばれる加熱した金属を載せる台とハンマーを使い、さまざまな方向から加圧、変形させて成形する。大きなものをはじめ、任意のサイズに対応でき、少量多品種の加工に優位性がある。
鍛造はこれに加工温度帯によって、熱間鍛造、冷間鍛造、温間鍛造に区分される。熱間鍛造は高温で材料を加熱するため、変形抵抗が小さくなり高張力材料でも変形しやすい。自由に成形できる利点があり、複雑な大きな部品の成形に適している。建機や船舶の軸受など、大型部品の製造で存在感を発揮している。
冷間鍛造はプレス機を使って常温の金属を金型内で圧力を加え成形する。熱間鍛造に比べて材料の変形抵抗が大きいため、加工機械や工具に制約があり大型形状の加工には適さないが、素材に熱を加える必要がなく寸法精度が高い利点がある。
歩留まりも良く、成形された部品は組織が細分化し、ファイバーフロー(金属組織の流れ)が切断されないため、強度も向上する。 温間鍛造は冷間の利点である加工精度を生かしながら常温より材料を加熱することによって、加工時の難易度も下げられる良さがある。
加工では高精度化や生産性向上への取り組みが進む。冷間鍛造ではサーボプレス機が複雑形状の成形に寄与している。サーボプレス機はスライド位置や加工速度を変化させられる。従来のプレス機では困難だった低速での加工ができ、接触時の衝撃を吸収する。
ただ、冷間鍛造は金型に大きな圧力がかかるため、加工品質や高精度化には金型側との連携が不可欠。コンピューター解析による強度把握と加工プロセスの検討が伴う。これにより、品質面を含め仕上げ加工を省略できるネットシェイブ化の進展に寄与している。
部材中空化など小型・軽量化が課題
EVへの対応では、モーターシャフトの開発など、小型・軽量化が問われるEV対応に部材の中空化をはじめ、新たな加工技術の開発を推進。加工機メーカーの中にはEVニーズを見据えて、アルミニウム材料にも応える鍛造プレスを登場させている。
成長分野に向けた研究開発では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が航空機部品での新たな鍛造プロセスの開発に着手している。ニッケル基合金部材を高温で鍛造するためのプレス金型の開発を目的とする。
航空機エンジンに使われる国産材の競争力強化を目指す研究開発の一環。従来の鍛造プレス機は金型材が高温で酸化しやすく真空引きする必要があった。このため酸化しにくい金型材を作製して鍛造プロセスの効率化を目指している。