-
業種・地域から探す
食品産業の安全と品質管理
「食」の安心・安全の確保や人手不足への対応などを目指す食品産業に向けて、安全・衛生対策の強化や自動化などのニーズに応える製品・技術・サービスの開発が盛んに行われている。コロナ禍を経て衛生管理に対する認識が広がり、人々の要求レベルは一段と高まっている。装置・部品メーカーなど各社は安全性を絶対条件に、食品製造設備の生産性や関連部品の耐久性、メンテナンス性の向上などに力を入れ、食品産業のリスク対応を強力にサポート。課題を解決へと導く提案や取り組みも数々登場している。
自動化・省力化ニーズ対応
食品は人が口に入れるものだけに、その安全性や品質の管理には厳しいものが求められる。設備・機器の管理や衛生対策を怠り、異物混入などのトラブルを引き起こせば、ユーザーや消費者の信頼を失うばかりか、経済的損失によって企業経営そのものを揺るがす事態ともなりかねない。こうした事例は枚挙にいとまがない。
一方で、食品産業では慢性的な人手不足が課題となっており、自動化・省力化設備の導入やロボット化による生産性向上などの取り組みが進行している。トラブルや被害の発生を防止する安全機能を搭載した食品加工機や搬送装置、分析・計測装置などがさまざまに市場に投入されている。また国際規格を達成した安全設計の協働ロボットの開発が進められ、人と接触すると自動停止する機能のあるものや、アームに手を挟まれない仕組みなど高い安全性能を備えたロボットなどが次々に現れている。
“トラブルの芽” 減らす洗浄
ただ、最新の設備や機械装置を導入しても、使えば次第に損耗していく。大きな不具合はなくともスクラッチ痕が少しずつ付くような場合もあり、そこに菌が付着し繁殖する恐れもある。こうした“トラブルの芽”を少しでも減らすため、食品加工機や周辺設備・パーツ類の洗浄は徹底して行われる。耐久性やメンテナンス性が重要視されるのは、食品産業として、リスクをコントロールしていく上で必要だからだ。
あるメーカーでは、市場に普及している同社の現行のシリコーン製樹脂チューブに比べて耐久性を5倍以上に高めたローラーポンプ向け樹脂チューブを発売した。改正食品衛生法に完全適合しているもので、材料配合の工夫などによって強度を確保した。内径や外径が異なる7品種を用意しており、食品や化粧品、医薬品業界に拡販。新たな価値の提供により安心・安全の徹底と生産性向上の双方の実現に貢献していく。
日本の食品産業の品質管理や製造技術は国内外で高い評価を得ている。国内の装置・部品メーカーなど各社は今後も、人手不足の解消や多品種生産の効率化、労働・衛生環境の向上といった課題の解決に向け、新たな製品・技術やソリューションの提案を進めて市場を切り開いていく構えだ。
「食」の安心・安全を確保するには、食品の加工工程だけでなく、原材料の生産から消費までの全段階で厳しい安全・品質管理を行わなければ問題の発生を防ぐことは難しいだろう。整理・整頓など現場の仕事の基本こそ大切で、これが最終的な品質管理につながるとも言われる。安全・衛生に関する問題の重要性を意識づけるための、作業者への教育も重要と言えそうだ。
