ファインバブル

 ファインバブル市場が大きく変わってきている。民生品分野では油性ペイントを用いたシャワーヘッドのコマーシャルで洗浄効果をうたうなど、消費者ニーズを捉えてきた。一方、最近では産業分野でも応用技術を急拡大させている。ファインバブル利用で得られる「節水効果」「洗浄力向上効果」「化学物質削減効果」などが国連の持続可能な開発目標(SDGs)達成やカーボンニュートラル推進といった側面から注目され、利用が急速に進んでいる。その現状を追った。

応用技術ー新たなステージ

 ファインバブル産業会(FBIA)では、産業洗浄分野でのファインバブル技術利用を推進することで、各社のSDGs達成やカーボンニュートラル達成を支えている。FBIA会員企業が有する産業洗浄での応用技術を体系化し、SDGs達成におけるその効果を見える化し、ファインバブル技術導入のメリットを明確化するなど、技術導入を促進している。実際、多くの企業で効果の実績が出始めている。

 産業洗浄では洗浄効率の改善やコストダウンの追求などが優先的に求められてきた。そこに「SDGsやカーボンニュートラルの目標達成」という社会課題が加味されたことで、洗浄に関する機能性と同時に、安全性や環境負荷低減、資源エネルギーの有効利用なども併せて考慮する必要性が高まっている。このニーズにファインバブル技術が合致した格好だ。

 この取り組みの中から、SDGs貢献に効果のある「節水」を中心に、ファインバブル実用化の現状をみてみる。

 インフラ分野では高速道路のパーキングエリア(PA)でのファインバブル水によるトイレ洗浄が注目されている。現在、全国高速道路のPAトイレの約70%で、ファインバブルによる洗浄が行われている。節水効果は導入前と比べて99%の節水率と試算されているほか、尿石の付着やトイレ臭の減少が確認されている。

 ある工場内の定置洗浄(CIP)では、従来の洗浄水をウルトラファインバブル(UFB)化して利用することで、洗浄性能を飛躍的に向上させた。それにより洗浄水(純水)の使用量を50%程度まで削減することに成功している。この結果、純水製造に関連する設備の稼働率が低減し、電力使用量の大幅な削減などにも結びついている。

 ファインバブル技術を応用した砂ろ過装置ではマイクロバブル(MB)による洗浄でろ過性能を向上させ、逆洗浄時に処理水での洗浄を行うことで節水を実現している。さらにろ材(砂)の交換回数を削減している。

 一方で食品製造関連では、卵の殻の洗浄水にファインバブル水を利用して歩留まりを高めている。節水を実践する企業は炭酸ガスをファインバブル利用することでアルカリ廃液や食品加工プロセスなどの現場での水素イオン指数(pH)調整に利用されている。

 FBIAは産業洗浄分野でのファインバブル認証(性能や効果)にも力を入れている。最近はファインバブル技術導入を希望する企業から認証に関する問い合せが急増しており、FBIAの笠井浩専務理事は「産業洗浄分野でのニーズの増大を実感している」と話す。


ごあいさつ/「SDGs貢献進む」ファインバブル産業会 会長 森川 智

 ファインバブル産業会(FBIA)は日本発の革新的技術である「ファインバブル技術」の産業化を支援するため、2012年に発足しました。

 国際標準化機構(ISO)での規格化による産業基盤の確立、認証登録制度の創設とその普及によるファインバブル製品の信頼性確保、広告・表示ガイドラインの制定、用語「ファインバブル」の適切な利用推進など、ファインバブル技術の実用化と産業化、普及の推進に向けて積極的に取り組んでまいりました。

 このような中、近年「ファインバブル技術」の実用化は急加速しており、FBIAが取り組んできた成果が実を結んでおります。

 ISO国際標準化活動では「ファインバブル」「ウルトラファインバブル」の用語規格を制定しました。今や、多くのファインバブル製品でこれらの用語が適切に利用されるようになり、製品技術への高い信頼性につながる場面も出てきています。

 認証制度も定着してきました。シャワーヘッドでは市場の約80%が認証マーク付きです。エアコンでの掃除技術などにも認証マークが使用され、消費者の信頼性確保に役立っています。

 また、ファインバブルによるSDGsへの貢献も進んでいます。ファインバブル技術の効果として注目されているものに「節水効果」があります。ファインバブル製品・サービスの利用で、水の使用量の削減が報告されています。これにより地球温暖化の抑止が図られるなど、SDGs目標達成に大きく貢献しています。

 このように、ファインバブル技術の生活分野での実用化はすでに目を見張るものがあり、最近では産業分野での実用化も急速に進んでいます。ファインバブル技術によるSDGsへの貢献と活用規模の拡大で、世界中の人々のWellーBeing達成が加速することを期待しています。


【洗浄総合展】ファインバブルの魅力発信/11月29―12月1日 東京ビッグサイトで開催

 「2023洗浄総合展」が11月29日から12月1日までの3日間、東京・有明の東京ビッグサイトで開催される。主催は日本洗浄技能開発協会と日本産業洗浄協議会、日刊工業新聞社。
 ファインバブル産業会(FBIA)は会員企業10社とともにブースを出展。日本発の革新的技術・ファインバブルが持つ洗浄力の高さ、環境負荷低減など、導入メリットを来場者に強く訴える。

 会期最終日の12月1日は、13時半から「ファインバブル応用技術―産業用洗浄技術と適用事例―」と題したFBIAセミナーを開催する。基調講演は「ファインバブルの産業普及と分離技術への応用」と題して慶応義塾大学の寺坂宏一理工学部教授が登壇する。14時半からはIDECの荒木和成ファインバブル事業部事業統括マネージャーが「ファインバブルの種類と効果的な洗浄の方法」を、14時45分からはOKエンジニアリングの松永沙智氏が「OKノズルを用いた各種洗浄依頼の動向について」を講演する。15時45分からは「ファインバブル入浴による洗浄効果」と題してハタノ製作所の浅野佳彦氏が登壇する。