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フィルム・シート・紙加工機(2024年6月)
フィルムやシート、紙の加工機は切り分けや貼り合わせ、液体の塗布、乾燥など各工程に応じて、スリッターや塗工機、乾燥機などの各種機械が活躍している。また製造工程の中で蛇行制御装置や検査装置などにより、製品の品質保全をサポートしている。これらの機械を通して加工された製品は、電子機器や食品・医療・印刷などさまざまな分野で活用されている。加工対象物(ワーク)であるフィルムや紙の市場では、環境対応に焦点を当てた製品・技術の開発が進む。
環境対応の製品・技術開発進む
フィルムやシート、紙加工機は、電子機器をはじめ食品や医療、印刷など、幅広い分野で製品の品質に関わる精度や機能性などを支える役割を担っている。
加工現場では、品質の安定化は重要な課題の一つ。フィルムやシートといった素材の製造工程では、ワークの巻き取り時の蛇行などが原因で、シワやたるみが生じ、不良の原因になる場合がある。こうした不良の発生を防ぐため、メーカー各社は蛇行制御装置や張力検出器などを市場に展開し、現場の歩留まり改善に貢献している。
ある制御・検査装置メーカーでは、カメラで取得した印刷絵柄を基準に、シート素材の蛇行制御を行うシステムを販売している。カメラ画像から基準位置を指定して登録すると、登録した絵柄と同じ絵柄を自動で検出。基準位置とのズレを比較し、蛇行を制御する。モニターには基準とした画像と検出した絵柄の拡大画像が表示される。両画像の類似度を割合で確認できる。
同社は張力検出器も提供している。シート素材の巻き取りや巻き戻しの際に、巻径の変化に伴って変動するワークの張力を検出する。こうした制御により、シワやたるみなどを予防。製品品質の安定化を支えている。
一方で、ワークとなる素材市場では、環境に配慮した機能性フィルムの開発が進んでいる。素材メーカーの中には、脱炭素社会に向けた取り組みから、生分解性に対応したフィルムや機能性を付与した紙の開発が活発化している。
こうした背景から、環境対応型製品としてフィルムや紙にコーティングするためのコート剤の需要も高まっている。富士キメラ総研がまとめた『2023年高機能コーティングの現状と将来展望』によると、26年の生分解性コート剤の世界市場は68億円となり、22年比2・1倍になると予測されている。今後も脱プラスチックの潮流を受け、需要増が見込まれる。
また同じく富士キメラ総研の調査では、26年のヒートシール紙の国内市場は、18億円と22年比2倍と予測した。ヒートシール紙は紙基材にヒートシール層を塗工することで、加熱・加圧による接着性を付与した紙で、環境対応を目的にプラスチックから紙への移行が進む食品包装分野などの需要が予想されている。
環境に配慮した製品開発へのニーズが高まるにつれ、加工機の存在感も高まっていくと見られる。