-
業種・地域から探す
繊維スリング
繊維スリングはワイヤロープやチェーンに比べて軽量で柔軟性があり、荷物に傷をつけにくい特長がある。さらに、かさばらず収納・保管がしやすいため作業者の負担軽減に貢献する。玉掛け作業を効率的かつ安全に行うためのツールとして、物流や製造業、土木・建築の現場に普及しており、メーカー各社は作業時の安全性と効率化、コストダウンなどの課題解決のため、多様な製品を展開している。
ニーズに伴い高機能化
-
重量物の引き上げ、移動に欠かせない繊維スリング(ロックスリング ソフターTNを使用した資材の運搬、明大提供)
繊維スリングは荷物をクレーンのフックなどに掛けたり外したりする玉掛け作業に用いられる。一般的にはポリエステルやナイロンなどの合成繊維から作られ、金属製のワイヤロープやチェーンと比べ柔軟性が高く軽量。取り回しが簡単で少人数で扱えるという利点がある。
市場ではニーズの多様化に伴い製品の高機能化が進んできた。特に日本産業規格(JIS)Ⅳ等級適合の製品の現場への普及が進んでいる。従来のⅢ等級製品と同じベルト幅でありながら強度を高め最大使用荷重をアップさせた製品は、耐久性や利便性などが評価されている。例えば、同じ最大使用荷重の場合、ベルト幅の狭いものに取り換えてコストダウンが図れることもある。
また、「スーパー繊維」を使った製品も引き合いがある。アラミド繊維などを用いた高耐荷重タイプは耐熱性、難燃性、衝撃吸収性、耐薬品性に優れ、屋外作業でも高強度を持続する。大型の建築鋼材、船舶などの引き上げ・移動、化学薬品を扱う現場などで活躍しており、ほかにも特殊仕様に対応するなど、メーカー各社はユーザーの要望に応えた製品を展開している。
繊維スリングは玉掛け作業や重量物の荷役・搬送の効率化だけでなく、作業者の負担軽減、安全性確保に重要なツールだ。顧客満足のレベルアップを目指して、メーカー各社の取り組みが続けられている。
安全性と効率化に寄与
玉掛け作業とは、玉掛け用具を用いて行う荷掛けおよび荷外し作業のことを指す。玉掛け作業を行うには技能講習を受け、資格を得る必要がある。無資格者が作業すると法令違反になるほか、荷重超過や器具の誤用、安全点検に怠りなどがあれば重大な事故につながる。玉掛け作業における事故で最も多いのは玉掛け用具などから吊(つ)り荷が外れ落下することで、次に吊り具や吊り荷と床上の物体に挟まれることによる圧迫、吊り具の転倒や用具などの切断などが続く。
これらを踏まえ、スリングメーカー各社は事故の発生率低下に貢献する玉掛け用保護具の開発にも注力してきた。
例えば、作業時に吊り荷の角によるスリングの損傷を防ぐため、角張ったものには必ず当てものを角に当てる必要がある。
あるメーカーでは、特殊合金製マグネット付きのアルミ合金角当てを開発。特殊合金製のため軽量で、砕けて破壊されるようなことがなく、安全に使用できる。また、永久磁石を使用しているので装着が簡単で、玉掛けに関わる作業負担や人員を減らすことにもつながる。
このように、メーカー各社はそれぞれの用途に応じた素材・形の用具をそろえ、作業の安全性および効率化に貢献している。
