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繊維スリング
繊維スリングは荷物に傷を付けにくく、チェーンやワイヤロープに比べて軽く、しなやかで扱いやすく、作業者の負担軽減に貢献する。かさばらず収納・保管がしやすい特徴もあり、玉掛け作業を効率的に、かつ安全に行うための吊(つ)り具として、土木・建築のほか、物流や製造業などの現場に浸透している。メーカーは将来を見据え、環境対応を意識した製品や、高耐荷重対応品の開発などに力を入れており、新たな需要の取り込みを図っている。
玉掛け作業の負担軽減
繊維スリングはクレーンなどで荷物を吊り上げる際に、フックに荷物を掛けたり外したりする玉掛け作業に使われる。両端アイ(目穴)タイプや輪型のエンドレスタイプなど形式の違いがある。いずれも金属製のチェーンやワイヤロープと比べて取り回しが容易で、少人数で扱える利点がある。折り曲げてもクセがつきにくい。ワイヤのささくれによるけがなどのリスクも抑えられる。
市場では日本産業規格(JIS)Ⅳ等級適合の製品の利用が進んでいる。中でも従来のⅢ等級と同じベルト幅で耐荷重性能を高めたⅣ等級の製品は、新製品が次々と市場に投入されている。最大使用荷重が同じならば狭いベルト幅の製品に切り替えることで、コストダウンが図れる。
環境負荷低減に向けた取り組みもある。リサイクルポリエステル糸を使用した環境配慮型繊維スリングのほか、バイオベースの高機能繊維を採用し、従来のポリエステルスリングより約60%軽量で高強度を維持した重量物用ラウンドスリングなどが出ている。
サステナブル材料を用いた、こうした製品は製造工程での二酸化炭素排出削減につながる環境対応製品として拡販が進められている。
環境分野の市場開拓も試みられている。特に、重量物対応のスリングは洋上風力発電の風車ブレードの運搬などに利用されており、この分野への期待は高い。ただ世界的なインフレや建設コスト上昇などの影響で、国内外で事業の再検討が行われるなど先行きは楽観視できない状況にある。
人手不足が深刻化するなかで、重量物の荷役・運搬や玉掛け作業の負担を軽減する繊維スリングは、効率性や安全性確保だけでなく、環境配慮や働き方改革などの面からも今後、存在感が高まっていきそうだ。